アメリカのベストセラー・ランキング

2月17日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. WHERE THE CRAWDADS SING    Stay

Delia Owens デリア・オーエンズ

1950年代、ノースカロライナの田舎町。幼くして家族に捨てられた少女キヤは、町の人々の偏見にさらされながら沼地に隠れ住んでいた。やがて、たくましさと繊細さを併せもつ美しい娘に成長し、ふたりの若者との交流によって心を開いていくが、町で殺人事件が発生し、疑いの目を向けられる。

 

  1. 2. AN ANONYMOUS GIRL    Up

Greer Hendricks and Sarah Pekkanen グリーア・ヘンドリックス、サラ・ペッカネン

シールズという博士が倫理と道徳に関する実験への女性参加者を募集していると聞き、報酬に釣られて応募したジェシカ。最初は質問に回答するだけだったが、実験内容はしだいに過激さを増していく。シールズには何か別の目的があるのではないかとジェシカは疑う。

 

  1. 3. THE RECKONING    Up

John Grisham ジョン・グリシャム

ミシシッピ州カントンの名士ピート・バニングは、第二次大戦のヒーローとして地元住民の尊敬を集めていたが、ある日教会に出向き、友人でもある牧師を射殺してしまう。弁護士は懸命に弁護を試みるが、ピーターは、秘密を抱えたまま墓場へ行くことを望んでいるかのように、動機を一切語ろうとしなかった。その秘密は、彼がヒーローとなった戦争の中に隠されていた。

 

  1. 4. LIAR LIAR    Stay

James Patterson and Candice Fox ジェイムズ・パタースン、キャンディス・フォックス

オーストラリアを舞台にした刑事ハリエット・ブルー・シリーズ第3作。ハリエットのもとに、兄の仇である連続殺人犯リーガン・バンクスから電話がかかってくる。「捕まえられるものなら捕まえてみろ」復讐に燃えるハリエットは単身リーガンを追う。絶対にこの手で殺すという誓いを胸に――

 

  1. 5. CRUCIBLE    Down

James Rollins ジェームズ・ロリンズ

アメリカ国防総省所属の秘密特殊部隊の活躍を描くシグマフォース・シリーズ第14作。隊員のグレイ・ピアースの家が荒らされて妊娠中の恋人が姿を消し、親友で同僚のモンクの妻が意識不明で倒れていた。一方、ポルトガルでは5人の女性科学者が虐殺され、AIを研究する21歳の天才女性科学者が行方不明になる。ふたつの事件を結びつける不可解な手がかりは、中世の魔女狩りに関する論文『魔女への鉄槌』のなかにあった。

 

  1. 6. FIRE AND BLOOD    Up

George R.R. Martin ジョージ・R・R・マーティン

〈氷と炎の歌〉シリーズの外伝で、ターガリエン家の歴史をつづった連作中篇集の第1集。『七王国の玉座』の約300年前、征服王エイゴン1世によるウェスタロス大陸侵攻に始まるターガリエン王朝の興亡を描く。この外伝シリーズは全2巻となる予定。

 

  1. 7.     Up

Madeline Miller マデリン・ミラー

 

ギリシャ神話に登場する太陽神ヘリオスの娘キルケー。恋人を奪った海のニンフ、スキュラを魔法で怪物に変えた彼女はゼウスの怒りを買い、アイアイエー島に追放されるが、そこでオデュッセウスと出会って恋に落ちる。デビュー作『アキレウスの歌』に続き、ギリシャ神話に題材をとった著者の長編第2作。

 

  1. 8. TURNING POINT    Down

Danielle Steel ダニエル・スティール

多数の傷病者をともなう事故災害への対応を学ぶために、全米から外傷医4人が選抜されてパリに派遣される。光の都は新たな知識と可能性を与えてくれる場になるはずだったが、実際に恐ろしい犯罪が起き、4人は力を合わせて困難に立ち向かう。

 

  1. 9. THE ONLY WOMAN IN THE ROOM    Stay

Marie Benedict マリー・ベネディクト

実在した女優であり発明家のヘディ・ラマーの伝記小説。ウィーンで生まれたヘディは1933年に18歳で出演した映画『春の調べ』で注目を集めるが、ユダヤ系だったことから祖国を離れてアメリカに移住、ハリウッドで活躍する。その一方、科学者の顔も持っていた彼女は、ナチス打倒の鍵となる可能性を秘めた魚雷誘導システムの発明に取り組む。

 

  1. 10. DEVOTIONS    New!

Mary Oliver メアリー・オリヴァー

今年亡くなった、ピューリッツァー賞受賞詩人メアリー・オリヴァーによる2017年刊行の自選ベスト詩集。50年以上にわたって書かれた数々の作品のなかから、詩人みずから選んだ200篇あまりの詩が収められている。

 

【まとめ】

今週は、比較的動きの少ないなか、今年1月に83歳で亡くなった詩人メアリー・オリヴァーによる自選詩集が10位にランクインしました。15位までに初登場の作品は、ほかに2作。『侵入社員』(新潮文庫)などの邦訳があるジョゼフ・フィンダー(ジョセフ表記もあり)の新作スリラーが14位に、『オーファンX 反逆の暗殺者』(角川文庫)として第1作が邦訳刊行されているグレッグ・ハーウィッツのオーファンXシリーズ第4作が15位にランクインしています。5位のジェームズ・ロリンズは、先週初登場2位から引き続きランクイン中。シグマフォース・シリーズは、第12作の“THE SEVENTH PLAGUE”に第11.5作である短編“CRASH AND BURN”を加えた『モーセの災い』(竹書房)まで邦訳が刊行されており、続く第13作“THE DEMON CROWN”も、『スミソニアンの王冠』として竹書房より2019年3月20日に刊行予定となっています。

 

  1. 吉井智津(よしい ちづ)

    翻訳者。訳書に、ナディア・ムラド『THE LAST GIRLーイスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語―』(東洋館出版社)、アラベラ・カーター・ジョンソン『小さなモネ―アイリス・グレース―自閉症の少女と子猫の奇跡』(辰巳出版)など。