アメリカのベストセラー・ランキング

6月16日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. WHERE THE CRAWDADS SING    Stay

Delia Owens デリア・オーエンズ

1950年代、ノースカロライナの田舎町。幼くして家族に捨てられた少女キヤは、町の人々の偏見にさらされながら沼地に隠れ住んでいた。やがて、たくましさと繊細さを併せもつ美しい娘に成長し、ふたりの若者との交流によって心を開いていくが、町で殺人事件が発生し、疑いの目を向けられる。

 

  1. 2. QUEEN BEE    New!

Dorothea Benton Frank ドロシア・ベントン・フランク

サウスカロライナ州サリヴァン島に住むホリーは、ハチの飼育をしながら静かに暮らしていた。姉のレスリーは、何かと口うるさい母親から逃れるように結婚し、島を出た。ホリーの愉しみは、妻を亡くしたアーチーとその息子ふたりと過ごすことだった。が、結婚が破たんしたレスリーが島にもどってくると、ホリーの生活はすっかり変わってしまう。

 

  1. 3. THE 18TH ABDUCTION    Down

James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マクシーン・ペトロ

女性殺人捜査クラブ・シリーズ第18作。3人の女性教師が失踪し、ひとりが遺体となって発見されるという事件が起こり、サンフランシスコ市警のリンジー・ボクサーは捜査に乗り出す。一方でリンジーの夫のジョーは、死んだはずの戦争犯罪人をこの街で目撃したと語る東欧出身の女と知り合うが、その女も失踪してしまう。

 

  1. 4. THE GUEST BOOK    Up

Sarah Blake サラ・ブレイク

アメリカの名家三世代の物語。1930年代、オグデンとキティのミルトン夫妻はある悲劇から立ち直るためにメイン州の島を買い、一家は代々そこで夏の休暇を過ごしてきた。時代が変わって経済的にも厳しくなり、孫のイーヴィーは家族の歴史の詰まった島を手放すまいと奮闘するが、特権階級だった一家には黙して語られなかった暗い過去があった。

 

  1. 5. ASK AGAIN, YES    New!

Mary Beth Keane メアリー・ベス・キーン

ニューヨーク市警の新米警察官のフランシスとブライアンは、住まいもとなり同士だ。フランシスの娘のケイトとブライアンの息子のピーターは半年違いで生まれ、ずっと仲のよい友人だった。が、ある出来事をきっかけに信頼関係は揺らぎ、その後ふたりの絆は何度も試されることになる。40年にわたる、ふたつの家族の物語。

 

  1. 6. REDEMPTION    Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

“完全記憶探偵”エイモス・デッカー・シリーズ第5作。妻子の墓参りのためオハイオ州バーリントンを訪れたデッカーは、新人刑事時代に殺人犯として逮捕したホーキンズに声をかけられる。膵臓がんで余命わずかのホーキンズは無実を訴えるが、やがて射殺体で発見される。過去の過ちを償うべく、真相解明に乗りだすデッカーだが……。

 

  1. 7. SUNSET BEACH    Stay

Mary Kay Andrews メアリー・ケイ・アンドルーズ

職を失い運に見放されていた36歳のドルーは、母の葬儀で20年ぶりに会った父親の弁護士事務所で働くことに。一方で、祖父母が所有していたぼろぼろのビーチバンガローを相続し、その屋根裏でとある行方不明者について書かれた古い新聞の切り抜きを発見する。

 

  1. 8. FIRE AND BLOOD    Down

George R.R. Martin ジョージ・R・R・マーティン

〈氷と炎の歌〉シリーズの外伝で、ターガリエン家の歴史をつづった連作中篇集の第1集。『七王国の玉座』の約300年前、征服王エイゴン1世によるウェスタロス大陸侵攻に始まるターガリエン王朝の興亡を描く。この外伝シリーズは全2巻となる予定。

 

  1. 9. THE SILENT PATIENT    Up

Alex Michaelides アレックス・マイケリデス

有名画家のアリシア・ベレンソンTHE SILENT PATIENT完璧な人生を送っているようにみえた。夫のガブリエルは人気のファッション・カメラマンで、住まいはロンドンの一等地に建つ壮大な家だ。しかしある夜、仕事から帰ってきたガブリエルの顔に向け、アリシアは5発の銃弾を撃ちこむ。それ以来、彼女はいっさい、口をつぐむのだった。

 

  1. 10. BLESSING IN DISGUISE    Down

Danielle Steel ダニエル・スティール

思いがけない運命のめぐり合わせから父親のちがう3人の娘を苦労しながら育てあげ、アートコンサルタントとしてキャリアを築いたイザベル。娘たちは個性豊かに成長してそれぞれの人生を歩み、60代になったイザベルはみずからの人生を振り返る。

 

【まとめ】

1位のデリア・オーエンズは、本コーナーがお休みだった先週6月9日付のリストでも1位をキープしていました。今週ランクインした新作は2作です。2位に初登場したドロシア・ベントン・フランクは、ベストセラー・リストの常連。邦訳は、デビュー作『愛しき海辺の家』(林啓恵訳)が集英社文庫から出ています。5位に初登場したメアリー・ベス・キ―ンは2009年にデビューし、本作が3作目の著作です。圏外から復活した9位の “THE SILENT PATIENT” は、坂本あおい訳で2019年中に早川書房から刊行予定です。なお、今週は13位ですが、先週付のリストではトマス・ハリスが3位に初登場していました。じつに13年ぶりの新作です。麻薬カルテルの隠し資産を狙うシリアル・キラーが、麻薬王の元私邸の清掃管理人のカリ・モーラに目をつける。しかし彼女には恐ろしい秘密が……というストーリーです。邦訳は『カリ・モーラ』(高見浩訳)というタイトルで、新潮文庫から7月に発売されるようです。

  1. 吉野山早苗(よしのやま さなえ)

    翻訳者です。訳書に、〈英国少女探偵の事件簿〉シリーズなど。

    5月に『ピクニック・アット・ハンギングロック』、6月に『ダ・フォース』の読書会(いずれも、翻訳ミステリー大賞シンジケート主催)に参加しました。前者は、はじめて映画を観たときから大好きな作品、後者は“腐萌え”で読むという、まったく未知の領域でした。どちらの読書会もたいへん愉しく、好きな作品を思い切り語れるのも、知らない世界を知れるのも読書会のいいところだと、おおいに実感しました。