1位ジョン・ハート『川は静かに流れ』(東野さやか訳/ハヤカワ文庫)

2位スティーグ・ラーソン『ミレニアム』(ヘレンハルメ美穂・岩澤雅利訳/早川書房)

3位トム・ロブ・スミス『グラーグ57』(田口俊樹訳/新潮文庫)

4位R・J・エロリー『静かなる天使の叫び』(佐々田雅子訳/集英社文庫)

5位マイケル・コナリー『リンカーン弁護士』(古沢嘉通訳/講談社文庫)

6位ビル・フロイド『ニーナの記憶』(北野寿美枝訳/ハヤカワ文庫)

7位ベンジャミン・ブラック『ダブリンで死んだ娘』(松本剛史訳/ランダムハウス講談社)

8位カミラ・レックバリ『氷姫』(原邦史朗訳/集英社文庫)

9位スティーヴン・プレスフィールド『砂漠の狐を狩れ』(村上和久訳/新潮文庫)

10位ディック・フランシス『審判』(北野寿美枝訳/早川書房)

 2009年の翻訳ミステリー・ベスト1は、誰がどう見ても、スティーグ・ラーソンのミレニアム3部作で決まりだろう。第1部『ドラゴン・タトゥーの女』(2008年12月刊)、第2部『火と戯れる女』(2009年4月刊)、第3部『眠れる女と狂卓の騎士』(2009年7月刊)と、3部作すべてが「2008年12月〜2009年11月」という今回の期間内に刊行されているから、その1部〜3部を別の本として扱えば票も割れてしまうけれど(ここは3部作として扱うべきだ)、そうでないかぎり、ベスト1は固い。競馬なら「頭鉄板」というところだ。3連単の1着固定だ。

 本来なら、みんなが褒める本というのはうさんくさい。誰か批判する人がいたほうが健全というものだ。だから批判したいとも思うのだが、無理なんですねそれが。造形がうまくて、構成がうまくて、ケレンもよくて、文句のつけようがないのだ。素晴らしいのは、えっと驚く展開が頻出することで、だから物語の先を予測できない。こういう作家はもう二度と現れないだろう。

(つづく)