『レポメン』/The Repossession Mambo

エリック・ガルシア(Eric Garcia)/土屋晃訳・訳

新潮文庫/定価820円(税込)/発売中/

“バイオ・レポマン”——それは、人工臓器の取り立て屋。金さえ払えば誰でも不死を購える近未来社会で、債務不履行に陥ったクライアントから問答無用で臓器を摘出・回収する。当人が死のうと知ったこっちゃない。何しろ、この取り立ては合法なのだから。

 かつては腕利きのレポマンだった主人公も、自らのローン返済に行き詰まり、今は追われる身。廃墟と化したホテルに身を潜め、おんぼろタイプライターで来し方を綴っている。

 ところが、このホテルにはもうひとり、同じ理由で潜伏している女がいた。孤立無援だったふたりはやがて胸襟を開き、手に手を取って“最強の取り立て屋”を待ち受ける……。

『さらば、愛しき鉤爪』に始まる恐竜探偵シリーズで世界の度肝を抜き、『マッチスティック・メン』でリドリー・スコットにメガホンを取らせた異才ガルシアの最新作。実に構想12年、黒いユーモアたっぷりに、究極の格差社会が生む悪夢を活写する!

 なお、本作はジュード・ロウ主演で映画化が実現、来春の全米公開が決まっており、日本でも東宝東和が配給予定。こちらもお楽しみに。

『キリング・サークル』/The Killing Circle

アンドリュー・パイパー(Andrew Pyper)/佐藤耕士・訳

 妻を喪い最愛の息子を支えにしてきたパトリックは、心の底にいつも悲しみを抱いていた。そこで若いころからの夢だった作家を目指すことを決意し、ある創作サークルに参加する。

 メンバーが自分の書いた作品を発表するこのサークルで、パトリックは“サンドマン”の物語に魅了される。夢から現れた男、“恐ろしいことをする恐ろしい男”が少女を次々に惨殺する物語。

 折りしもパトリックの近所では、残忍な連続殺人事件が発生していた。やがてパトリックは現実に起こる事件と真に迫った物語の殺人鬼“サンドマン”を重ねるようになり、彼の精神は徐々に蝕まれていく……。

 そして四年後、思いがけない方法で念願の作家となったパトリックだったが、当時の創作サークルのメンバーに次々と不思議な事件が発生する。さらに魔手は最愛の息子にまで伸びてきて恐れていた事態が起こってしまった。息子が誘拐されたのだ——。

 パトリックは少ない手がかりを頼りに、正気と狂気の迷宮に迷いこみながらも、必死に息子を探しに行く。しかし、そこで彼を待ち受けていたのは……。

 二重三重に張り巡らされた精緻な罠、意外性の連続、ラストの驚愕の真相。本格派のサイコ・ミステリ上陸!