アメリカのベストセラー・ランキング

10月27日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE 19TH CHRISTMAS    New!

James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マクシーン・ペトロ

女性殺人捜査クラブ・シリーズ第19作。サンフランシスコ市警のリンジー・ボクサーは、“ローマン”と呼ばれる人物がクリスマスに大事件を起こす計画を立てているという情報を手に入れる。リンジーは計画を阻止しようとするが、何者かがさまざま手を使って捜査を攪乱する。

 

  1. 2. WHERE THE CRAWDADS SING    Up

Delia Owens デリア・オーエンズ

1950年代、ノースカロライナの田舎町。幼くして家族に捨てられた少女カイヤは、町の人々の偏見にさらされながら沼地に隠れ住んでいた。やがて、たくましさと繊細さを併せもつ美しい娘に成長し、ふたりの若者との交流によって心を開いていくが、町で殺人事件が発生し、疑いの目を向けられる。

 

  1. 3. WHAT HAPPENS IN PARADISE    New!

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダーブランド

2018年10月に刊行された“Winter in Paradise”の続編。アイリーンは夫をヘリコプターの事故で亡くしたあと、夫がカリブ海のセントジョン島で二重生活を送っていたことを知った。今作では、夫の知られざる一面と死にいたる経緯がより明らかになり、アイリーンと30代の息子たちが新たな人生に踏み出そうとする。

 

  1. 4. NINTH HOUSE    New!

Leigh Bardugo リー・バーデュゴ

アレックスは高校を中退し、ドラッグの売人をしているボーイフレンドたちと過ごしていたが、殺人事件に巻きこまれて瀕死の重傷を負う。病院のベッドで、アレックスは奇妙な申し出を受けた。イェール大学に入れてやる、その代わり、ゴーストを見ることができる持ち前の特別な能力を生かせと言われたのだ。そうしてアレックスはイェール大学の1年生になった。YA小説で知られる著者がはじめて大人向けに書いたファンタジー作品。

 

  1. 5. THE INSTITUTE    Down

Stephen King スティーヴン・キング

侵入者に両親を殺され、真夜中に自宅から連れ去られた12歳の少年ルーク。目覚めると、きのうまで暮らした自分の部屋とそっくりだが窓のない部屋にいた。そこはある邪悪な目的をもった施設で、ルークのほかにも子どもたちが何人も集められていた。そしてその子たちに共通していたのは、全員がテレパシーやテレキネシスといった特殊能力をもっていることだった。

 

  1. 6. THE WATER DANCER    Down

Ta-Nehisi Coates  タナハシ・コーツ

南部の黒人奴隷ハイラム・ウォーカーは子供のころ母親と引き離され、その記憶を封印して生きてきた。ある日、川で溺れそうになったとき、水を介して瞬間移動する自分の不思議な力に気づく。死の淵から生還したハイラムは、奴隷解放運動に参加し、その霊力で家族や仲間を救おうとするが、力を操るには母親との思い出をたどる必要があった。全米図書賞受賞作『世界と僕のあいだに』で人種差別問題を投げかけたあと、著者コーツがはじめて書いた小説。

 

  1. 7. THE DUTCH HOUSE    Down

Ann Patchett アン・パチェット

瀟洒な屋敷〈ダッチハウス〉で何不自由なく暮らす二人の子供、姉ミーブと弟ダニー。あるとき継母がやってきて二人は屋敷から追われてしまう。それから数十年、つらい生活のなかで姉弟は分かちがたい絆で結ばれる一方、二度ともどれない家へと何度となく引き寄せられていく。家族の離散と過去への執着の物語。

 

  1. 8. THE TESTAMENTS    Down

Margaret Atwood マーガレット・アトウッド

環境破壊などで極端な少子化が進んだ近未来、子を産むためだけに支配層に仕える“侍女”たちの世界を描いたベストセラー・ディストピア小説『侍女の物語』(ドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』原作)の続編。前作からさらに15年後の世界を、独裁国家ギレアデの内側と外側にいる3人の女性の視点から描く。2019年度ブッカー賞受賞作。

 

  1. 9. CHILD’S PLAY    New!

Danielle Steel ダニエル・スティール

19年前、ケイトは夫を事故で失い、子育てしながらロースクールにかよった。それから3人の子供を育てあげ、50代になったいまはニューヨークの法律事務所でシニアパートナーとして活躍している。家庭にも仕事にも不満はない。ところが、未婚なのに妊娠していることを末の娘から告げられ、ほかのふたりもそれぞれ問題をかかえていることを知る。

 

  1. 10. THE GIVER OF STARS    New!

Jojo Moyes ジョジョ・モイーズ

1930年代、アメリカ人と結婚したアリスは、英国での窮屈な人生から抜け出せるものと考えていたが、ケンタッキー州の小さな町へ移っても、結局は息の詰まる毎日がつづいた。しかしアリスは山奥まで馬で本を届ける巡回図書館員として働きはじめ、同僚の女性4人と友情をはぐくむようになる。実話にもとづく物語。

 

【まとめ】

ジェイムズ・パタースン&マクシーン・ペトロの作品が1位に輝いたほか、3、4、9、10位と、新作が5つランクインしました。4位のリー・バーデュゴはYA小説で知られるベストセラー作家ですが、本作は大人向けのファンタジーです。著者の作品のなかでは、魔法師グリーシャの騎士団三部作が邦訳されており、このシリーズがドラマ化される予定だと報じられています。10位のジョジョ・モイーズについては、映画〈世界一キライなあなたに〉の原作『ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日』が2015年に、『ワン・プラス・ワン』が2018年に邦訳されました。この“THE GIVER OF STARS”は、大恐慌時代のアメリカでWPA(雇用促進局)によって立ちあげられた実際のプロジェクトを下敷きに書かれた作品で、本が手にはいりにくいアパラチア山脈の集落に、おもに女性が馬で本を運んだ実話がもとになっています。困難な時代における女性の活躍と、本の魅力を伝える一冊として注目を集めているようです。

 

  1. 国弘喜美代(くにひろ きみよ)

    南東京読書会の世話人のひとり。訳書にローラ・シムズ『あなたを見てます大好きです』、エドワード・セント・オービンのパトリック・メルローズ・シリーズ(手嶋由美子さんとの共訳)など。