『殺意の架け橋 アジア本格リーグ5』

S・マラ・Gd(著)/柏村彰夫(訳)/島田荘司(選)

ISBN:978-4-06-215943-2 刊行日2010/3/10

定価2,310円(税込)

「離婚経験者、三十二歳。収入は最低月三百万、子供を望まない人生のパートナーを希望」

友人たちの勧めで、新聞の結婚相手募集欄『心の架け橋』に投書したティアの前に、三週間後、条件通りの応募者パウルが現れる。二人は順調に交際を進めるが、一方でティアは、宝飾品仲介業の仕事でトラブルを抱えていた。品物を預けたまま連絡のつかない顧客と支払いを求める委託主の間で板挟みになっていたのだ。事態の収拾に奔走するティア。そして支払期限の日、悲劇は起こった……。

二転三転する殺人事件の謎に挑むのはコサシ警察大尉とゴザリの名コンビ。インドネシアの人気警察小説シリーズ初登場。

「アジア本格リーグ」第5巻は、日本とも交流の深い東南アジアの大国インドネシアから、1985年刊の第一作以来、30巻をかぞえる人気警察小説シリーズを紹介。作者S・マラ・Gdは経歴不詳の女性作家で、クリスティーの翻訳なども手がけ、ゴザリ&コサシ・シリーズは同国ミステリ界最大のシリーズとして知られています。

恋愛小説も得意にしているというS・マラ・Gdは、本書でも、子供ができないために心ならずも夫と離婚、一人で生きていくことを選びながら、友人の結婚話を聞いてあらためて孤独を感じ、再婚へと心が動く女性の心理を巧みに描いています。また、事件の捜査と並行して描かれる、主人公のゴザリとコサシ警察大尉の娘デッシーの、年齢の離れたカップルの恋の行方も読者には気になるところ。捜査陣の軽妙なやり取りやロマンスをまじえつつ、よどみなく進むストーリーテリングは、エンターテインメント作家としての確かな腕を感じさせます。

ちなみに訳者・柏村氏の解説によると、インドネシアで推理小説ブームが起こったのは1970年代とのことですが、その背景にあったのが73年の「オイルショック」。日本では紙不足により出版界に大打撃をあたえたこの騒動が、産油国インドネシアにとってはまさに天の恵み、出版界は活況を呈し、娯楽作品が大量に出版されるようになったそうです。

「アジア本格リーグ」は、今年度、本格ミステリ大賞(評論・研究部門)にノミネートされました。