「なんだか怪しいセールス・トーク」

 皆さんこんにちは。いつもは「冒険小説にはラムネがよく似合う」で冒険小説についてのコラムを執筆しております、東京創元社編集部のSと申します。毎回変なことばかり書いてしまい、ブログに掲載されるたび「うぉぉ……」と恥ずかしさのあまり悶絶しております。とはいえこれからも懲りずにキテレツな文章を書いていきたいと思いますので、ぜひとも笑いながらお読みくださいませ。

 さて、今回編集者コラムを依頼されたわけですが、実は格好のネタがあるのですんなり書けそうです。いやむしろ、絶好の機会をいただいたので、ここぞとばかりに声を上げて叫びたいのです! 我が社が総力を上げて取り組んでいる、「東京創元社文庫解説総目録(分売不可)」について!

 なんじゃそりゃ、という方もいらっしゃるかもしれませんのでご説明いたしますと、「東京創元社文庫解説総目録(分売不可)」は、東京創元社で刊行した全ての文庫本を解説した総目録です。書店さんにも置いてある、文庫サイズの目録ってありますよね? あれの超・拡大版です。ほんとに全ての文庫本の著者名、訳者名、ジャンル、内容紹介文が載っています。社会現象をまきおこしたという、今は亡きゲームブック、五冊で終わってしまったイエローブックスなども内容紹介文と併せてすべて掲載しております(余談ですが、私は会社に入るまで「ゲームブック」というものの存在を知らず、社の者に大変驚かれました)。

 さらに、ご注目ください、「分売不可」という文字に! つまりそう、二冊あるのです。普通の目録のような、著者名やタイトル、内容紹介文が載っている「目録編」に加えて、「資料編」もご用意いたしました。この資料編、滅茶苦茶面白いです。内容は座談会、エッセイ、全集・叢書のリスト、単行本のリスト、会社沿革の年表などなどです。この座談会や鼎談が面白いのです。たとえば、江戸川乱歩・花森安治・戸板康二の鼎談による「推理小説について」。福永武彦のエッセイ「小説の愉しみ」。さらには植草甚一ら五十人以上による「海外推理小説アンケート集」、「世界大ロマン全集アンケート集」、厚木淳インタビューなど、マニア垂涎の原稿を再掲載しております。さらに全集・叢書のリストも! 全集に入っていた月報「ありばい」に載っているエッセイや、発売当時の広告文まであります。

 ところでそんな総目録に関して私は何をやっているかといいますと、全体の助手というかアシスタントというか雑用係というか……(小声)。現在は主に索引を担当しています。

 この索引がすごいんですよ! ちょっと一例を紹介いたします。

ホック,エドワード・D Hoch,Edward D.(米 1930-2008)

《サム・ホーソーンの事件簿》

1『サム・ホーソーンの事件簿?』Diagnosis: Impossible(2000)木村二郎/ホック, エドワード・D「サム・ホーソーン医師略歴」/ラックマン, マーヴィン「サム・ホーソーン医師の事件年表」Dr.Sam Hawthorne:A Chronology of His Case/解説:木村仁良「サム・ホーソーン医師の診断書」/2000.5.26/Mホ-4-1

「有蓋橋の謎」“The Problem of the Covered Bridge”(1974)/「水車小屋の謎」“The Problem of the Old Gristmill”(1975)/「ロブスター小屋の謎」“The Problem of the Lobster Shack”(1975)/「呪われた野外音楽堂の謎」“The Problem of the Haunted Bandstand”(1976)/「乗務員車の謎」“The Problem of the Locked Caboose”(1976)/「赤い校舎の謎」“The Problem of the Little Red Schoolhouse”(1976)/「そびえ立つ尖塔の謎」“The Problem of the Christmas Steeple”(1977)/「十六号独房の謎」“The Problem of Cell 16”(1977)/「古い田舎宿の謎」“The Problem of the Country Inn”(1977)/「投票ブースの謎」“The Problem of the Voting Booth”(1977)/「農産物祭りの謎」“The Problem of the Country Fair”(1978)/「古い樫の木の謎」“The Problem of the Old Oak Tree”(1978)/「長い墜落」“The Long Way Down”(1965)

 ……という感じです。これ、全部手で打ち込んだんですよ!!(泣) 何人もの編集者やバイトさんの血と涙が染みこんでいるのです。解説なんてタイトルまで掲載していますからね。一冊一冊本を取り出して、目次を眺め、解説ページを開きパソコンに入力していくのです。でも短編集はまだ楽なんです! アンソロジーになるとさらに大変。エラリー・クイーン編『ミニ・ミステリ傑作選』なんてさらに大変。どれだけすごいかはぜひ実物をご覧いただき、驚いてください! 索引は当初のもくろみよりかなり分量が増えまして。あまりの量に、著者名索引だけで300ページを超えているという……。ちなみに目録編全体は1000ページ以上あります。文庫判なのに!

 そんなわけで刊行が遅れました(堂々と言い訳)。当初は二〇〇九年の文庫創立五十周年に合わせて刊行する予定でした。しかしいろいろと不備や間違いが見つかり……より完璧なものをお届けできるよう、社員全員総力を挙げて挑んでおります! 刊行が遅れたことをお詫びして、目録編の内容紹介は二〇一〇年三月までに刊行した本を掲載しています。五十周年記念と言いつつ五十一年分あるとはこれいかに。

 そろそろなんとか刊行にこぎ着けたい所存です! 頑張りますので、完成の暁にはぜひともお買い求めをお願い申し上げます。単純に読んでいて面白いです。以上、なんだか怪しいセールス・トークと言い訳でした!