『暗闇の岬』/JERICHO POINT

メグ・ガーディナー(Meg Gardiner)/杉田七重・訳

集英社文庫/定価980円(税込)/2010年8月20日発売


好評の“エンタメの王道”サスペンス、

集英社からの第二弾が早くも登場!!

ヒロインは売れないSF作家エヴァン・ディレイニー。舞台はカリフォルニアのサンタバーバラ。メグ・ガーディナー作エドガー賞受賞シリーズの続編が、勢いも乗りに乗って8月20日に発売です。5月に刊行された前作『裏切りの峡谷』では、恋人でイケメン弁護士のジェシーに車椅子の生活を余儀なくさせた轢き逃げ犯を追い詰めるうちに、自分が追い詰められてしまったエヴァン。本作では、浜辺に打ち上げられた女子大生の絞殺死体が「エヴァン・ディレイニー」名義のクレジットカードを所持していたことから、身分詐称犯罪に巻き込まれていきます。そして凌辱、生命の危機にさらされて……。

 ジェシーのダメダメな弟PJ、再起を図る中年ロックスター、プライドを傷つけられた汗っかきシンガーetc。前作に負けずと劣らずの濃〜いキャラクターが織りなす、ジェットコースター・サスペンス。でも、ただスピード感があるだけではありません。障害を負って生きるジェシーの心の闇や、コミットメントを避ける生き方しかできないエヴァンの自己嫌悪など、絵空事とは思えない人間の本質をつく数々の描写もお見事。ジェフリー・ディーヴァーが褒めたたえた、メグ・ガーディナーのキャラクターづくりの才に思わず引きこまれ……。気づいたら、夏の暑さも疲れも吹き飛んで一気読み。お薦めの作品です!

《好評発売中!》

『裏切りの峡谷』/MISSION CANYON

メグ・ガーディナー(Meg Gardiner)/杉田七重・訳

集英社文庫/定価980円(税込)/2010年5月20日発売


『おっぱいとトラクター』/a Short History of Tractors in UKRAINIAN

マリーナ・レヴィツカ(Marina Lewycka)/青木純子・訳

“おっぱい”にメロメロで、50歳年下の美女と再婚したおじいちゃん。

美女VS追い出し作戦を敢行する小姑姉妹の戦いはいったいどうなる?

「朗報だ、ナジェジュダ。結婚するぞ」イギリスに住むウクライナ移民のニコライ(84歳)が次女ナジェジュダ(49歳)に電話で喜びの再婚宣言をするところからストーリーは始まります。妻に先立たれること2年、寂しく一人暮らしをおくるニコライにとって、豊満なおっぱいを誇る若い美女ヴァレンチナ(36歳)は、女神のような存在。まさに目にハートが入った状態の恋するおじいちゃんニコライの勢いはとまりません。ナジェジュダと長ヴェーラ(59歳)の(ヴァレンチナにとっては)小姑姉妹が、お金とパスポート目当てだ、早まるな、とどんなに騒ぎ立てても、聞こうとしない。それどころか、ヴァレンチナにねだられるまま、中古の外車を買い与えるなど、言うなりになってしまう毎日が続きます。実はヴァレンチナは、おじいちゃんの祖国ウクライナからイギリスへやってきました。新しい生活を求めて必死な彼女は、なりふりかまわず欲しいものを手に入れます。そして、おじいちゃんも自分がかつて、ウクライナで辛く厳しい生活を送ってきた経験があるだけに、ヴァレンチナの気持ちがわかる。おっぱいにノックアウトされていただけではなかったのです……。

 老親の再婚、財産問題、子供と親、子供同士の確執など、日本人にとっても他人事ではない家族のトラブルをテーマにして、罵りあい、皮肉合戦、だまし合いなどテンポのよい会話で軽快なコメディの形をとりながら、ウクライナの悲惨な歴史、移民の現実を織り交ぜて奥の深い物語に仕立てています。