みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか、って聞くまでもないですね。暑くて暑くてやってられるかー! って感じですね。ちなみに私の部屋にはクーラーがありません。溶けます。こんなに汗をかいて、食欲もおちているのに、すっかりさっぱり痩せないのはなぜなんでしょう……。世界の七不思議ですね!(すみません、暑いのです。)まぁ食欲がなくなってもラムネ消費量は変わりませんからね。ただそれだけの話ですね、うん。

 さて気を取り直して(?)今回もあらすじからいってみたいと思います。今回はギャビン・ライアル著『もっとも危険なゲーム』です。

 森は黒く夜の中に沈んでいた。ビル・ケアリは撃たれた脇腹を押さえながら敵の姿を捜した。敵は闇の中から彼を狙っているのだ、高性能ライフルを手にした狙撃のプロが! フィンランドで水陸両用機を駆る一匹狼のパイロット、ケアリは金のためなら少々の汚れ仕事もいとわない。ソ連国境近くの立ち入り禁止区域での鉱物資源調査もそのひとつだ。だが、まさか生命を狙われる羽目になろうとは思いもしなかった。誰かが彼の過去を知っている、秘密機関員であった過去を! 空陸に繰りひろげられる命がけの冒険を描いた、ギャビン・ライアルの代表作!(本のあらすじより)

 とあるひとから、「ライアル格好いいよライアル」と聞いていたので、楽しみにしていたのですが、うーん、正直、この作品は私には合わなかったです。まず、何をやっているのかがイマイチよくわからない……。今までの冒険小説は、なんだかんだと主人公に目的がありました。が、この作品ではそれがわからないのです。主人公のケアリさんはただのパイロットで、特命を受けて作戦を遂行したりするわけではありません。飛行機事故が起きたり、助手が死んでしまったり、いろいろな事件は起こります。つまり、巻き込まれ型の主人公だといえるのでしょう。それゆえ著者が何を描こうとしているのかが読めないまま話が進んでいきます。不穏な空気だけは感じ取れるのですが、よくわからないなーというのが、読み始めたときの感想でした。

 そもそもタイトルの示す、「もっとも危険なゲーム」って何じゃい? とずっと思っていました。作品の中にゲームらしきものは見当たらず……話の展開もゲームっぽくはないし……。ところが、そうやってぼんやりしていたら、クライマックスでいきなり頭をハンマーで殴られました。なるほどー! ゲームってこういう意味だったのね! と。この、タイトルの意味がわかったときの驚きというか、納得のいく感じはとても面白かったです。思わず「おおー!」と口に出していました。家で読んでいて正解でした。

 あーでも、やっぱり心の底から「ライアル格好いいよライアル」とは思えなかったのが、ちょっと残念です。どんなに多くのひとが絶賛していても、自分の感性に合わない場合って確実にあるんですよね……。たぶんこれは、ケアリさんに魅力を感じなかったのが原因かなぁと思います。彼の格好よさがよくわからないのです。一匹狼で、パイロットなのはよし。萌え要素。しかし助手には冷たいし、いい年して夢を追いかけているし、なんか妙に頑固だし、正直あまり「格好いい」とは思わなかったのです。が、本編を読み終わってから解説を読んだところ、私の感想と正反対のことが書いてあって、「!?」となりました。amazonさんの読者レビューでも、私がまったく思いつきもしなかった点が「格好いい」と書いてある……! 例えば、ピンチのときにヒロインに助けられている点とか。え、そこはちょっと情けない男といえるんじゃなかろうか……。あと日々の仕事も立ち入り禁止区域に入ったりして、結局は悪いことをしているわけですしね。それに目的や野望があればまた話は違うんですが、ケアリさんはただ単にお金のためだしなぁ。そこを悪党で格好いいと思えるかどうかも評価の分かれ目だと思いますね。うーむ。

 そういえば、私に「ライアルめちゃくちゃ格好いいよー」とオススメしてくれたのは、みんな男性でした。……ふむ、このあたりに好みの違いがあるのでしょうか。それとも、なんだかんだいって私にはヒーローに助けられたい願望(?)があるのかしら……? はぁ、こんなところで自分の深層心理に気づかされてしまうなんて……ライアル、恐ろしい子……!

 あと、クライマックスの銃撃戦にも惹かれなかったというか、やっぱり好みが分かれると思います。プロフェッショナル同士の闘いが描かれているので、とてもワクワクします。ただ、闘い方がイマイチだなぁと感じました。ものすごく迫力があるので、ガン・アクションが好きな方にはたまらない描写なんだろうな……という感じがしました。でも、私としてはただの銃撃戦ではなくて、大がかりな作戦を成功させるとか、騙し合いをするとか、もっとひねりのある方が好きなんですよね。ただ撃ち合うだけじゃ物足りないのよ! もっとこう……!(言葉にならない)わがままですみません。でも、前回のジャッカルさんのような、複雑かつめんどくさい方が面白いと思います。

 まあぶっちゃけますとね、こんっっっっな暑い時期に熱い男の闘いなんて暑苦しいんですよ!(ぶっちゃけました。)それもこれもすべてクーラーがないのがいけない!! 今いったい室温何度なの!? ギブミー冷気! ギブミー冬! ふう……、しろくまの気持ちがよくわかるぜ……。まぁそんなわけで、今回の作品はあまり肌に合わなかったなぁ、というのが全体を通しての感想です。ただこれは、好みに左右されるものだと思うので難しいところです。お前はわかってない! ここがこう格好いいんだよ! というご意見がある方は、ぜひぜひご指導いただけますと幸いです。

【北上次郎のひとこと】

 現代の女子にライアルがウケないというのはショックです。このあたりに冒険小説冬の時代の原因がありそうだ。この作品の発表年は1961年。そういうスパイ小説の時代に書かれた作品であることを考えるとまた違った感慨を持つとは思うのだが、そんなことは現代の読者には関係がねえか。わかりました、それでは次回のテキストでうならせてみせよう。