アンダー・ザ・ドーム(上下)/Under the Dome (2009)

 スティーヴン・キング/白石朗訳

 ISBN 9784163804705(上)9784163804804(下)/発売中

 四六判並製/定価各2900円

 さあ 読者諸賢よ、徹夜の準備を。

 容赦なく《恐怖の帝王》がぶちかます

 減速なしの1400ページ。

 巨匠キングの新たなる代表作、誕生。

 人口2000人の小さな町チェスターズミル。

 ある晴れた日、町は透明の障壁に囲まれた。その上方は高空に、下方は地中深くまで達する。《ドーム》と呼ばれるようになったそれは、わずかな空気と水、そして電磁波を通すのみで、破壊不能、脱出不能の壁となって町民たちを幽閉した。

 原因不明の災厄に町がパニックに陥るなか、ひとりの男が動き出す。その名はビッグ・ジム・レニー。町政を握るビッグ・ジムはただちに警察力を掌握、町を恐怖政治によって手中にせんとする。外界の法も倫理も介入することのできないドームのなかに、不穏な圧力が高まりはじめる。

 そして一方、町の子どもたちが不吉な悪夢に襲われはじめる——迫りくる業火のハロウィンの夢。いったい何が起きようとしているのか?

 ——アクセル踏みっぱなしの長篇を書く。

 それが本書執筆に際してスティーヴン・キングが決めたことでした。

『リーシーの物語』『悪霊の島』と、細緻なたくらみをはらんだ物語を円熟の筆で書いてきたキングですが、本書は、還暦を超えた巨匠がビタ一文も枯れていない《恐怖の帝王》でありつづけていることを示すゲンコツのような作品に仕上がりました。

 その長さ、400字詰め原稿用紙にして3400枚超。しかしダレ場は一切ありません。物語はゴタク抜きで本文2ページ目にして本題に突入。以降、危機と恐怖と疾走感はページを追うごとに高まる一方。まるで下り坂だけのジェットコースターのようだ、と、ゲラを読みながら思っていました。

 連想したのは、例えば『呪われた町』であり『ファイアスターター』。ここには豪快に豪腕を振るっていたあのキングの雰囲気があります。じっさい、本作の構想は1976年、『呪われた町』『シャイニング』のあいだの時期に着想されたのだとか。いったんは執筆を断念した壮大な構想を、30年後、1年4ヶ月を費やして書き上げたのが本書でした。初期を思わせるインテンシティが息づいているのは、おそらくそのためでしょう。

 キング・ファンはもちろん、かつてキングを愛読していた方々にも、まだキングを読んだことがない方々にも自信をもっておすすめできます。

(文藝春秋翻訳出版部 永嶋俊一郎)  

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