地方在住のみなさん、東京のトンプスン祭りとかキング酒場とかミステリ関連のイベント盛りだくさんがうらやましくないですか? 毎回上京するわけにもいかず、平日だとお勤めや学校があったりして、参加はますますむずかしいもの。

 われらが地元、福岡でもそこは同じでした。なにしろ遠いし。だから、福岡でも読書会をやってみないかとのシンジケートからの提案に、地元で翻訳ミステリの話ができるなんて楽しそうじゃない? その話のった! と、二つ返事で世話人を引き受けた駒月雅子さん&三角の翻訳者コンビ。けれど地方都市で果たして定員の20名集まるだろうか——そんな不安も。今年1月に開催した第1回はシンジケートのサイトでの告知、twitterや知り合い等への呼びかけで、参加者は8名。偶然にも、そしてすばらしいことに、好みの本のタイプが適度にばらけているメンバーが集まり、読書会ではさまざまな意見が飛びだして予想を上まわる楽しいものだったので、第2回はさらに多くの人に知ってもらいたいという想いが強まったのでした。

 じゃあ、どうしたらもっと広く告知できる? それに貸し会議室の件という頭の痛い問題もある。1月の読書会は東京・大阪・福岡と一律参加費1,000円でいきましたが、福岡は会議室の料金をまかなえず、シンジケートに助けてもらったのです。第2回は中心部の天神地区から離れたリーズナブルな場所に移すか、せっかくの良い緊張感が減りますが最初から飲み会にしてお店でおこなったほうがいいのかとか、そろそろ会場の予約が必要な悩ましい4月の初旬。読書会の番外編で、第1回の参加者を中心にミステリと美酒の会をひらいたところ、世話人たちの知らなかった好条件の貸し会議室の情報を聞きつけ、速攻でそちらに申し込んで会議室の問題はクリアに。しかも歴史ある洋館というインパクトのある会場を押さえることができたのです。ネット上では洋館読書会への関心の声も聞かれて、わたくしたち、つい頬がゆるんでしまいましたのよ。

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 魅力ある会場になって、多くの人を集めたいと一段と気合いが入ります。前回とは違う方法を考えねば。まず、申し込み済みのかたが率先して福岡の本好きのみなさんを検索して働きかけてくれたことで、新規のお申し込みが。グッジョブ! それから、少しでも学生が参加しやすいように学生割引を設定。おひとり利用がありました。しかもなかなかの遠方から。涙が出るほど嬉しいことです。また、シンジケートの読書会は翻訳ミステリの最新情報を探しているネット・ユーザーには知られていても、本の情報源がネット第一ではない層や、もっと幅広い「本読み」の層には浸透していないのかもしれない、そのあたりにアピールできるよう、オーソドックスに書店や図書館にフライヤーを撒こうという話になりました。たとえおひとりでもいいから目に留めてもらえればと。しかし、はて、そんなものどうやって作ればいいの? 時間がたっぷりあれば関係者のお知恵拝借もできたでしょうが、開催日まであまり余裕がありませんでしたので、世話人たちで書店に並んでいるものを観察、店頭の数々のフライヤーのなかから手にとってもらうには、いつも翻訳の仕事で使っている推敲プリント用の白い紙に文字だけをちょろっと印刷するわけにはいかないようだとの結論に達し、気軽に頼めるIllustrator使いにデータ作成を依頼。できればオフセット印刷にしたいところですが、経費節減のために自宅でプリントして手作り感満載のフライヤーを準備しました。これが4月末、読書会のほぼ1カ月前の話。書店や図書館との交渉ではくじけそうな反応もありましたが、ほとんどは快くOKをいただけました。世話人たち以外の参加者からも嬉しいお手伝いの申し入れがあり、フライヤーを送付したりデータを送って各自でプリントアウトしてもらったりして、さらに多くの場所に配布することができたのです(紀伊國屋書店福岡本店、ジュンク堂福岡店、リブロ福岡西新店、ブックスキューブリックけやき通り店、焼き菓子cafe cqt、西南学院大学、福岡市総合図書館、福岡市西図書館、さいとぴあ西部地域交流センターのみなさま、誠にありがとうございました)。

【写真は左からリブロ福岡西新店、福岡市総合図書館、ジュンク堂福岡店。撮影は左と中央が雑食さん(@zasshoku)、右がユウさん(@ldgBooks) 】

 やはり当日は洋館に合わせてコスプレすべきでせうかなどと、ほのぼのしたやりとりを続けながらどのくらいあたらしいかたが増えるかドキドキして経過を見守っていたところ、5月に入るとメールボックスにあらたな参加表明が順調に舞い込むように。読書会用の連絡アドレスは世話人ふたりで管理し、あたらしいメールに気づいたほうが返事をするおおざっぱなやりかたで進めました。他都市はどうされているの? 配布から3週間ほどすると、フライヤーを手にされた街情報のポータルサイト「天神サイト」(http://tenjinsite.jp/)のライター氏より読書会情報を掲載したいとの連絡をいただき、そちらのサイトを見ての読書会へのお問い合わせもありました。フライヤー経由の参加者は最終的に4名でした。1月の時点では、やはり20名集めるのはむずかしいのか……と思えていた、その目標を開催のほぼ1週間前に達成することができ、福岡読書会は満員御礼に。

    や っ た ば い !

  Hey, hey, sisters & brothers!! はいもう、関係者一同で大喜びです。ちなみに定員20名は、2時間の枠だと意見交換するにはこれが限界という経験則からの設定だそうです。なんと満席で泣く泣くお断りしなければならないかたも出る予想外の事態に(次回早めのお申し込みをお待ちしております)。

 ここまで読んでおわかりのとおり、よりよい条件の会場が見つかって地方でも20名が集まったのは、参加者のみなさんのご協力があったからこそ。フライヤー配布のお手伝いやお知り合いへの声かけはもちろん、新規お申し込みなどへの喜びの反応に世話人たちは励まされました。ひょっとしたら日本のどこかに、自分の地元でも読書会があればと希望されているけれど、そんな協力は見込めないと思っている人もいるかも。でも、福岡の参加者も今年の1月まではほとんどが見知らぬ者同士。きっかけは、越前敏弥さんが地方での読書会開催の可能性にふれたtwitterでの一言に、福岡からぽつぽつと反応があったことだったので、まずは声をあげてみるとなにかが始まるかもしれません。

 福岡ではただいま、あれこれと課外活動を計画中です。もちろん読書会も続けていく予定で、たくさんの人に参加の機会があるよう、曜日や時間帯をかえての設定も考えています。ところで、読書会は読み込んで凄い分析を披露しなくちゃいけない怖いところでは、という心配はご無用です。最近あたらしいのを読んでいないから、翻訳ミステリはふだんあまり読まないから——そんなあなたにこそ参加して面白さを体験してほしい。大丈夫、みんな読み切れないほどお薦めしてくるから!

三角和代◆(みすみ かずよ)ミステリと音楽を中心に手がける翻訳者。10時と3時のおやつを中心に生きている。訳書にジャック・カーリイ『毒蛇の園』、ジョン・ディクスン・カー『帽子収集狂事件』、ヨハン・テオリン『黄昏に眠る秋』他。

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