翻訳者各位

 日ごろより翻訳ミステリー大賞、および当サイトへのご支援とご協力、まことにありがとうございます。事務局一同、あらためまして御礼申しあげます。

 みなさまのご支援とご協力のもと、これまで翻訳ミステリー大賞は第一回は『犬の力』(ドン・ウィンズロウ、東江一紀訳/角川文庫)、第二回は『古書の来歴』(ジェラルディン・ブルックス、森嶋マリ訳/武田ランダムハウスジャパン)と受賞作を送りだしてきました。日々外国語で書かれたすぐれた作品を日本の読者に届けるための第一線に立っている翻訳者ひとりひとりが、現場でつちかわれた鑑識眼をもって、胸を張って人にすすめられる作品にスポットライトをあてたという点で一定の成果があったものと自負しております。

 しかしながらわたしたちはこれに満ちたりることなく、翻訳ミステリー大賞をいま以上によい賞にし、読者のみなさまにとって頼れる指針とするべく模索してきました。大賞立ちあげからいままで、翻訳者のみなさまや出版社、一般読者の方など各方面から寄せられた貴重なご意見の数々にも教えられるところが大きかったことも事実です。そうしたご意見をふまえ、これまでの大賞運営について根本的に見なおしした結果、第三回翻訳ミステリー大賞から以下の点において、選考方法を改訂することにいたしました。

(1)一次投票の作品数を5作必須とする。

(2)予選委員会を設置する。

 一次投票作品の幅を広げたのは、広く翻訳者のみなさまのお力をお借りすることで、近年ますます豊饒の度を増しつつある翻訳フィクションの世界のすみずみまで視野を広げたうえで、真に大賞にふさわしいすぐれた作品を選びたいとの意向によるものです。

 予選委員制度の設置は、「翻訳者が選ぶ賞」としての独自性と公平性を維持し、翻訳ミステリー大賞の知名度をあげ、賞としての信頼性をいま以上に確立、それによって翻訳業界の活性化に寄与したいとの前向きな意向によるものです。

 予選委員は5名とし、うち1名を前年度大賞受賞作の翻訳者とします。制度導入の初年度の予選委員は、田口俊樹、白石朗(以上二名は本大賞発起人)、鈴木恵、上條ひろみ(以上二名は本大賞シンジケート事務局)にくわえ、第二回大賞受賞作『古書の来歴』の翻訳者である森嶋マリさんです。

 予選委員会は一次投票の集計結果を尊重、充分参考にさせていただき、事務局の非翻訳者メンバーの立会理事同席のもとで、最終候補作5作を決定します。ここからみなさんの投票で大賞が決定される点は従来と変わりありません。

 第三回大賞選考の投票など具体的な日程につきましては、そのつどこちらのサイトにて告知します。選考方法を改訂したとはいえ、翻訳者のみなさまのお力添えなくしては翻訳ミステリー大賞は成りたちません。なにとぞわれわれの意あるところをお汲みいただき、今後ともご理解とご協力を伏してお願いするしだいです。

 また、選考方法にかぎらず、翻訳ミステリー大賞についてのみなさまのご意見も随時お寄せいただければ幸いです。

 末筆になりますが、今年は例年以上に暑い夏を迎えています。みなさまのなお一層のご自愛をお祈りいたします。

——翻訳ミステリー大賞運営事務局