先日当サイトに【予告】「読書の秋の名探偵」(仮称)開催準備中!を掲載しましたが、夏休みは格好の読書の季節。本好きの親御さんならわが子の読書が気になって、お節介と思われようとも1冊でも多くの本との出会いを願うものです。

 今回は中学生の(異性の)お子さんをもつ読書のプロおふたりに、「もしお子さんが自分と同性だったら」という条件で、中学生諸君への夏のお薦め本をうかがいました。

 まずは、中学生男子の母でもある書評家・吉田伸子さん。午後は中学生女子の父でもある文藝春秋・翻訳書担当編集者のN氏です。どのようなセレクションが飛びだすでしょうか。お楽しみに。  (編集部)

「女の子だったら絶対しないよねぇ」

 先日、小僧のクラスのママ二人とランチをしながら、いつものように、いかに中学生男子がお馬鹿であるかについて熱く語り合っていた時に何度か出て来た台詞である。とにかく、いちいちいちいち中学生男子は、

「いつまでたっても子どもで」

「それでいて言うことだけはいっちょまえで」

「やることなすこと、どこか抜けていて」

「心の動きがバレバレで」

「ものすごく単純」

 なのである。あれ? もしかして、中学生男子限定というより、男子限定?

 え〜と、話題が違う方へ暴走しそうなので、軌道修正。もし、我が子が同性だとしたら読ませたい翻訳ミステリ、というのがお題である。我が子が中学生男子ではなく中学生女子だったら、何を読ませたいか

 もし、私の子どもが14歳の娘だったら、スー・グラフトンキンジー・ミルホーン・シリーズを読ませたい。キンジーのあのタフネス、あのユーモア、あの可愛らしさ、いじらしさ! サラ・パレツキーのヴィク(ウォーショースキー)もいいけれど、私はキンジー派なのだ。

 フェイ・ケラーマン『水の戒律』(創元推理文庫)に始まるピーター・デッカー&リナ・ラザラスシリーズも読ませてみたい。とりわけ、私自身、何度読んでも泣けてしまう『贖いの日』は特に。

 リンダ・ラプラント『凍てついた夜』(ハヤカワ・ミステリ文庫)は、元ロス市警の警部だったロレインの物語だ。アルコール依存によって、仕事も家族も失った彼女の壮絶な堕ちっぷりと、そのどん底の暮らしから、もう一度人生を取り戻して行くまで。彼女の絶望、彼女の無気力、けれどそこから再び立ち上がる勇気と気高さに震えて欲しい。

 娘へのお勧めということで、女性作家で、尚かつ女性が主人公(ケラーマンのシリーズのデッカーは男性だけれど)の作品を挙げてみた。彼女たちのカッコ良さに惚れ惚れしてくれたら嬉しいなぁ。でもって、お勧めの翻訳ミステリ、もっとない? と聞かれたら、翻訳ミステリシンジケートのURLを教えてあげよう。未読本の海で迷ったり溺れたり、それが読書の楽しみだよ、と言葉を添えて。

(吉田 伸子)