なにか得体のしれないものが天神のマンホールや那珂川のよどみや親不孝通りの角からふいっと現れそうな曇天の1月13日(金)、いつもの洋館にて福岡読書会が開催されました。課題本はジャック・カーリイ『デス・コレクターズ』。内容も表紙も当日にぴったりの雰囲気。でもこれ、自分の訳書なんですよね。妙に緊張しますね。しかし、終わってみれば訳者もとても楽しい読書会でした。

 しかも今回はゲストがおふたり。翻訳家の白石朗さん、課題書の担当編集者の文藝春秋・永嶋俊一郎さん。ご多忙なのに遠くからいらしてくださったゲストをお迎えして、参加者がどれだけ舞いあがったか、みなさん想像できることでしょう。永嶋さんはちょうど作家デイヴィッド・ピースさんの北九州来訪の時期が重なっての来福実現ということで、ピースさんにも感謝。

 当日についてはすでに、参加者がブログにおもしろレポートをアップしてくださっているので、ここでは準備の反省を中心にいきます。

   *つんどくさんレポ(http://d.hatena.ne.jp/NOBNOB/20120114

   *雑食さんレポ(http://zasshoku.ie-t.net/diary/?date=20120115

 今回はちょっと動きだしが遅くなってしまったこともあり、フライヤーはナシでいってみようか、と準備を始めたのが11月末。幸いにも順調に申し込みが集まって、すぐに定員に達しそうな兆しが。

 以前、定員いっぱいのときに全員で意見交換をしたところ、20名でも多いかも——?むかいの人が遠い?、?声が聞こえづらい?(天井が高いせいもあると思います。会議室次第かも)、?ちょっと時間が足りなかったかな?という反省点がありました。それで、今回は世話人とゲストを合わせて20数名になりましたので、2チームに分けて進めることに。せっかく集まるのに全員の話をじかに聞けない、という点は残念だけど。初参加のかたも数名いらっしゃいましたし、そのあたりを補うため、そして本会での時間を有効に使うために、任意、そして差し支えのない範囲で自己紹介文を事前に送ってもらいました。人数が多いと自己紹介で結構な時間をとられてしまうので。

****自己紹介****

1.お名前(フルネームでも姓だけでも。当日、姓のみの名札をこちらで用意します)

2.普段されていること(空欄でも全然構いません。覚えやすいように、2次会で話のとっかかりになるように、それだけですので)

3.好きな作家・本・ジャンルなど

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こんな感じで。

 こちらは全員分をプリントして、当日、配布。いま見直しても、ばらっばらでおもしろいです。

 会議室には普通の長テーブルと椅子がありますが、もうひとりの世話人、駒月雅子さんの提案で、メモは取りづらくなるかもだけど話しやすい雰囲気になるように、椅子だけを楕円×2にセットすることにしました。かしこまらなくて、いい感じ。さくさく話せます。

   *この形でいくならば、名札は全員胸に貼るようラベルがいい(机置き用に作っていたので)

   *時々、隣のチームの声で話が聞きづらいことも。もう少し離してレイアウトしてもよかった

 チームは男女比、新規とリピーターの数を考えて、事前に分けました。あっそうだ、学生さんが4名参加なんて嬉しかったなあ。これまでは世話人たちでなんとなく進行のようなことをしていたのですが、今回ゲストと世話人は途中でチームを移動するつもりだったこともあり、リピーターのつんどくさんと雑食さんにチーム内の進行役を当日押しつけお願いしました。

*****進行表*****

午後7時 全体で名前のみ、自己紹介。

チームにて 感想を順番に。

進行役さんには、それぞれのチームででた意見をホワイトボードに簡単に書いてもらいますので、メモを取っておいて頂けますか。

それぞれ意見を言われた後に、どんどんリプライしてもらっていって構いません。

午後8時 全体

だいたい1時間ちょっと?(様子を見て、もっと早くホワイトボード転記に移ってもいいですね)で意見交換を一度終わってもらい、ホワイトボード転記。

ホワイトボード転記中、ゲストにお話を伺います。

それぞれのチームででていなかった意見を目にして、また言いたくなったことがある人にはどんどん発言してもらいます。

午後8時半 本会まとめ。

ゲストのイベント。

午後8時50分までには全体終了。

テーブルを元にもどし、9時までに退出。

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 こんな感じで進めるつもりだったのですが、それぞれのチームの進行具合もあって予定どおりにはいかず、今度からアラームをセットしておこうと反省。

 ゲストと世話人の席替えは結局できず、ゲストのイベントは2次会へ持ち越し、進行役から8時50分ですよ! と教えてもらい、急に立ちあがってお開き宣言というざっくり感。9時に建物を出てしまわないとならない会場なんですね。最後が慌ただしくなってしまい申し訳なかったですが、2チームに分けたわりには時間が余る、間ができる、ということもなくて、よかったんじゃないかしら。

 こんな感じで4回目になっても相変わらずグダグダですが、いろいろと助けられて続けています。

 9割がそのまま2次会も参加し、あちらこちらで思い思いに盛りあがった様子。コージー好きによるお茶会企画がいずれ実現するかもですよ? いつも思うんですが、読書会の打ち上げってお店の人はどんな集団かと訝しんでいるでしょうね。職場の酒盛りでも合コンでもなさそうだしと。そして盛りあがりといえばこれでしょう、ゲストのイベント、白石さん放出のお宝のジャンケンによる争奪戦。そしてサイン会と撮影会へ突入。黄色い声が聞こえた気がする。さらに中洲の夜は続き——。

 訳者として少し。お世話係でおもてなしする側なのにしっかりと読書会を楽しめたわたしは果報者です。感想を読者のかたから直接伺う機会なんてそうそうないですもん。自分では考えつかなかった切り取りかた、着眼点、ああ、こんなふうに読んでもらえたらカーリイさんも喜ぶだろうなと思うご意見。メートル法VSヤード法のご指摘があったり(わたしはそれがアメリカぽいかな、と思うので基本的にヤードやフィートやポンドをそのまま残す派です)、登場人物の語呂合わせの原文について質問があったり、どのキャラクターが人気かわかったり。感想のなかに、?エピソードが詰まっている??いろんなタイプの話が楽しめてお得?というものがあったのですが、このあたりは永嶋さんがカーリイの作風についてお話しされたことにつながりそうです。さまざまな要素を、ほかの作家であればどこか削ったり比率を変えたりところを、カーリイは全部同じような配分で入れているといった内容だったと思います。そこが『デス・コレクターズ』の味なんですね。訳者も作者に訊いてみたいことが見つかる刺激的な読書会、大勢のご参加に感謝です。

 次の福岡読書会は春、じゅうぶん暖かくなった頃の開催を予定しています。みなさまのご参加をお待ちしておりますので。

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三角和代(みすみ かずよ)ミステリと音楽を中心に手がける翻訳者。10時と3時のおやつを中心に生きている。訳書にジャック・カーリイ『ブラッド・ブラザー』、ジョン・ディクスン・カー『帽子収集狂事件』、ヨハン・テオリン『冬の灯台が語るとき』(近刊)他。

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