第28回 ニューヨークを舞台に警察一家の活躍を描いた『ブルーブラッド〜NYPD家族の絆〜』

 新年そうそう、きりきり舞いしている堺です。つか、あっというまに1月も終わっちゃったし! バレンタインデーも過ぎちゃったし!! つか、言ってるうちにホワイトデーがすぐそこまで!!! いったいどーしたらいーんだぁぁああ?!

 き、気を取り直して、今回ご紹介するのは、本格派警察ドラマ『ブルーブラッド〜NYPD家族の絆〜』です。

 この作品は、ニューヨーク市警に代々勤めてきた警官一家(もちろんアイルランド系)であるレーガン家の人々を主人公にした、警察ミステリ+大家族ドラマとなっています。

 おじいさんが元市警本部長、お父さんが現役の市警本部長、長男が刑事、長女が検事補、三男が警察に入りたての制服警官、そして次男は刑事として働いていた時に殉職という、まさにニューヨークの司法を支えるレーガン一家の日常と、彼らが遭遇する犯罪とを交互に描いているところが、他の警察ものと一番違うところ。

 毎回、家族全員でそろって夕食をするシーンが必ず入ってるんですよね。皆、ばらばらに暮らしてるのに、晩ご飯を一緒に食べに実家に戻ってくるという、古風なところがあるという設定になっていて、この場面で必ず兄弟げんかやら親子げんかやらが起こるのがおかしいんですよね。

 なんせ、長男と長女にはそれぞれ子供がいるから、三世代どころか四世代がずらりと一つの大きなテーブルを囲んで、ああでもないこうでもないと言い合うわけで、当然ながら今のアメリカにこんな家族がそうそういるわけもなく(しかもアイルランド系なんでカソリックだし)、ある種の理想像が描かれているんでしょう。

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 その大家族の中心であるお父さん、ニューヨークの市警本部長を演じているのが、『私立探偵マグナム』『警察署長 ジェッシイ・ストーン』でおなじみのトム・セレック。かつてのアクションスターも、すっかり貫禄がついております。

 暴走しがちの熱血刑事でもある長男には、マーク・ウォールバーグの兄で若い頃はニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックのメンバーでもあったドニー・ウォールバーグ。なんか今やもう、ただの目つきの悪い中年のおっさんになっちゃってるんですが、そこがリアリティを醸し出してたりして(笑)。

 そして、警官一家でただ一人、検事の道を歩んだ長女にブリジット・モイナハン。なんで、あの父親と兄貴にこんな美人の妹が、とは思いますが、そこはまあご愛敬。

 ニューヨークの警察ものというと、かの傑作『刑事マディガン』がちょうど市警本部長と現場の刑事達が、立場の違いから対立しつつ事件を追うという話でした(原作じゃ本部長が主役なのに、映画では平刑事のほうを主役にして、タイトルまで変えちゃった、というのはわりと有名な話)が、本シリーズでは、家族のそれぞれが、違う立場(本部長、刑事、検事補、制服警官)から仕事に取り組み、時に対立しつつも、協力し合う姿が描かれています。

 この、いろんなレベルから警察活動を垣間見ることができるというところも、本作のおもしろさの一つでしょう。

 さて、ニューヨークを舞台にした警察小説というと、それこそ星の数ほどあります(マクベインの《87分署》シリーズの舞台、アイソラだって、実はニューヨークがモデルですしね)が、現場の刑事ではなく本部長や分署長といった高官が主人公の作品となると、ぐっと数は少なくなります。

 そんな中でも印象的なのは、ニューヨーク市警16分署の署長を主役に据えたトマス・チャステインの《カウフマン警視》シリーズと、市警刑事部長エドワード・X・ディレイニー(後に引退)を主人公にすえたローレンス・サンダースの《大罪》シリーズでしょうか。

 カウフマンのほうはユダヤ人の裕福な資産家で元は検事だったのがあえて警官になった変わり種、ディレイニーのほうは「鉄の睾丸」の異名を持つ頑固一徹な硬骨漢という、二人のキャラも魅力的でした。

 個人的なイチオシは、《カウフマン警視》シリーズは『16分署乗取り』、《大罪》シリーズは『魔性の殺人 第一の大罪』でしょうか。

 とかいろいろ書いてきましたが、実は、ニューヨーク市警本部というと、『警部マクロード』の「市警本部三部作」(「市警本部最悪の日」、「市警本部大混乱」、「市警本部大攻防戦」)を真っ先に思い出しちゃうんですけどね。あれは(いい意味で)ひどかった(笑)。

〔挿絵:水玉螢之丞〕  

『ブルーブラッド』カナダ版予告編

『ブルーブラッド』ユニバーサルチャンネルの公式ホームページ

http://www.universalchannel.jp/series/bluebloods

堺三保(さかい みつやす)

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1963年大阪生まれ。関西大学工学部卒(工学修士)。南カリフォルニア大学映画芸術学部卒(M.F.A.)。主に英米のSF/ミステリ/コミックについて原稿を書いたり、翻訳をしたり。もしくは、テレビアニメのシナリオを書いたり、SF設定を担当したり。さらには、たまに小説も書いたり。最近はアマチュア・フィルムメイカーでもあり(プロの映画監督兼プロデューサーを目指して未だ修行中)。最近の仕事はテレビアニメ『エウレカセブンAO』のSF設定。最新刊は『WE3』(小学館集英社プロダクション)。

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