第34回 番外篇その2:コミコンに行ってきた!

 どもども。ロサンゼルス生活が全然軌道に乗らず、けっこう大変な感じの堺です。

 なんかアメリカも大変な感じだったりしますよねー。『ダークナイトライジング』の上映初日に映画館で銃撃事件が起こったりして。円高ドル安もあいかわらずだし。

 暗い話題はさておき、7月は映画評論家で特殊翻訳家の柳下毅一郎さんと一緒に、サンディエゴで毎年開かれているコミックコン・インターナショナルというおたくイベントに行ってきました。

 通称サンディエゴ・コミコンと呼ばれているこのイベントは、全米でもトップクラスのおたく系ポップカルチャーイベントです。

 元々はその名の通り、アメリカン・コミックスの出版社や書店が集まる「マンガ大会」だったのですが、アメコミを元にしたおもちゃやゲーム、テレビドラマや映画などを作る会社、さらには日本のアニメやマンガのアメリカ版を作る会社などもやってくるようになり、今ではアメコミとは関係のないものも含めて、SF、ホラー、ミステリ等のジャンル・フィクションすべてを扱う、一大ポップカルチャーイベントに成長しているのです。

20120713045234.jpg

 特に近年は、秋からのテレビ新番組や、翌年の目玉となる大作映画のPRに、監督や出演者たちが大挙して訪れ、大会期間中だけサンディエゴにハリウッドが引っ越してきたようなお祭り騒ぎになっています。

 毎年7月中旬の週の、木曜から日曜までの4日間開催されるのですが、今年は一日の入場者が約13万人、4日間ののべで50万人以上の人々が会場を訪れたそうです。日本のおたくイベントの雄であるコミケが3日間でのべ約45万人といいますから、だいたい似たような規模だと思えばいいかもしれません。

 なんせ、この会場となるサンディエゴのコンベンションセンターがこれまた広大で、3階建ての建物の1階がエキジビションホール(いわゆる展示会場)、2階以上が会議室群となっているのですが、この1階ホールの床面積がなんと約4万9千平方メートル。有明ビッグサイトで言うと、東館のブロックを6つ縦に並べたのと同じくらい。東京ドームよりも若干広いという、とんでもない場所なのです。

20120715034834.jpg 20120716022720.jpg

 上にも書いた通り、そんなコミコンも今ではポップカルチャー総合イベント化が進んでおり、今年もずいぶんと多くのミステリ系ドラマの宣伝が展開されていました。

 中でも、『ホームランド』、『ブレイキング・バッド』、『デクスター』、『ボーンズ』、『キャッスル』などは、主演スターたちもやってきて大変な活気を見せていました。

 また『シャーロック』『クリミナル・マインド』などは、テレビ局が大々的に宣伝を展開、特に『クリミナル・マインド』の番宣イベントにはファンが長蛇の列を作っていて驚かされました。

20120715103618.jpg

 サンディエゴ・コミコンはもはやアメコミファンだけのものではなく、アメコミやゲームに興味はなくても、テレビドラマや映画が好きなら、充分楽しめるイベントになっていたという気がします。

 お客さんも、いかにもおたくな感じの若者や、コスプレ姿のマニアたちから、あきらかにテレビドラママニアのおばさんたち、子ども連れの家族等々、いわゆる「おたく系イベント」とは思えないいろんな層の人々が一堂に会して、陽気にはしゃいでいて、会場内だけでなく、町全体がお祭りを楽しんでいる雰囲気が伝わってきて、とても心地よかったです。

 なんせアメリカの、それもちょっと中心から離れた地方都市でのイベントなので、行くだけでも初めての人には大変な場所ですが、アメリカ文化に興味のある人にはぜひ一度遊びに行って欲しいなあと思えるイベントなのでした。

 さて、そんなコミコンでは、秋からの新番組も当然のごとくたくさん紹介されていて、特にケヴィン・ベーコン主演のサイコスリラー『ザ・フォロウイング』、アメコミ原作(グリーンアロー)の現代のロビンフッドもの『アロー』、そして、『シャーロック』のアメリカ版である『エレメンタリー』が、大キャンペーンを展開していました。

20120904080519.jpg

 ここ数年、イギリスで人気の出たドラマのアメリカ版製作が流行りつつあるのですが(ホラーものの『ビーイング・ヒューマン』とか歴史ドラマの『ダウントン・アビー』とか警察ものの『第一容疑者』とか)、まさか『シャーロック』をアメリカナイズしようとは。

 すでに皆さんご承知ではあると思いますが、『シャーロック』は19世紀末を舞台にした《シャーロック・ホームズ》シリーズを現代に移し替え、キャラクターを新たに再解釈した、いわゆる「リブート」ものの一種です。

 それをさらに、舞台をロンドンからニューヨークに移し替え、キャラの再々解釈をおこなおうというんですから、いやまあ、ほんとにうまくいくんだかどうなんだか。

 でもって、今回の再々解釈の目玉は、ホームズをよりエキセントリックにし(腕にバーンと入れ墨が入ってたり)、ワトソンをなんと女性にしてみた(しかも演じてるのは『チャーリーズ・エンジェル』映画版などでお馴染みのルーシー・リュウ)ことのようです。あ、あと、予告によれば警察側の中心キャラはレストレードじゃなくてグレグスンみたい。

 うーん、どうなんでしょうね、これって? ま、まあ、お手並み拝見といくしかないわけですが、なんとなく1シーズン目で打ち切り食らいそうな気も。ともあれ、秋からの放送が楽しみです。

 お話は日本のことに変わるのですが、テレビ版の『シャーロック』と、映画版『シャーロック・ホームズ シャドウゲーム』のヒットのおかげなのか、ここのところ、ホームズ関連の書籍がどんどん出ていたりします。

 今年に入ってからだけでも、パスティーシュとしては、ローレン・D・エスルマンの『シャーロック・ホームズアメリカの冒険』や、エドワード・D・ホックの『エドワード・D・ホックのシャーロック・ホームズ・ストーリーズ』が、そして関連本として、『図説 シャーロック・ホームズ』や『シャーロック・ホームズの最強クイズ』といった本が出版されています。

 ホームズといや、先日久々にテレビドラマ化された、かの赤川次郎氏の代表作にして長寿シリーズ、《三毛猫ホームズ》の最新刊『三毛猫ホームズの夏』も、出てたりするんですよね。

 出版されているホームズ関連本を全部追いかけるのはかなり大変な感じですが、ホームズ漬けの日々もまた楽しいかもしれませんね。

 あれ? 今回はコミコンの話から始めたのに、最後はずいぶん遠くに来ちゃったぞ(笑)。

〔挿絵:水玉螢之丞〕  

◆『エレメンタリー』予告編

堺三保(さかい みつやす)

20061025061000.jpg

1963年大阪生まれ。関西大学工学部卒(工学修士)。南カリフォルニア大学映画芸術学部卒(M.F.A.)。主に英米のSF/ミステリ/コミックについて原稿を書いたり、翻訳をしたり。もしくは、テレビアニメのシナリオを書いたり、SF設定を担当したり。さらには、たまに小説も書いたり。最近はアマチュア・フィルムメイカーでもあり(プロの映画監督兼プロデューサーを目指して未だ修行中)。最近の仕事はテレビアニメ『エウレカセブンAO』のSF設定。最新刊は『WE3』(小学館集英社プロダクション)。

ブログ http://ameblo.jp/sakaisampo/

フェイスブック http://www.facebook.com/m.sakai1

ツイッター http://twitter.com/Sakai_Sampo

●AmazonJPで堺三保さんの著訳書を検索する●

【毎月更新】堺三保の最新TVドラマ・映画事情【USA】バックナンバー