無罪 INNOCENTInnocent

 スコット・トゥロー Scott Turrow /二宮磬訳

 文藝春秋(単行本)/定価(本体2200円+税)

 ISBN: 9784163816708

 あの名作『推定無罪』から20年。

 あの悲劇の傷跡を清算する裁判がはじまる。

 この感動、この豊穣——

 これぞ大人のためのミステリだ。

『推定無罪』で無実の殺人の疑いで法廷に立たされたラスティ・サビッチ。あれから20年あまりが経ち、いま彼は判事の座にのぼりつめていた。しかしある日、妻バーバラが急死を遂げた。病死との判定が下るも、検事局は遺体の発見から通報まで「空白の一日」が存在することに不審を抱いた。捜査によって浮かびあがったのはラスティに若い愛人がいたこと……。積みあがる状況証拠に、20年前の法廷でラスティ相手に敗北を喫した検事トミー・モルトはラスティの起訴を決意した。そして再びラスティは法廷に立つ。妻殺しの被告人として。

 開幕する白熱の法廷——嘘と真実と駆け引きが交錯する。果たしてラスティは妻を殺したのか? 最後に明かされる真相は、驚愕とともに人間の愛と悲しみとを読む者にもたらすだろう。

『推定無罪』——1989年に我が国で刊行され、当時の読書界に大きな話題を引き起こした名作です。のちにハリソン・フォード主演で映画化もされ、最終的に累計80万部のベストセラーとなりました。読み応えのある人間ドラマと、意外性たっぷりの結末を擁した『推定無罪』は、「成熟した大人のためのミステリ」として、海外ミステリの芳醇さを日本の読者に存分に味わわせたのでした。

 それから20余年。ここに続編『無罪 INNOCENT』が登場します。濃密な筆致も、サスペンスフルな物語も、悲しみに満ちた意外な結末も、『推定無罪』に勝るとも劣りません。

 驚くべきは、著者トゥローが本書で『推定無罪』のネタバレを一切していないこと。『推定無罪』を読んでいなくても、本書を楽しむのに差し支えはないですし、本書のあとで『推定無罪』を楽しむことができるようになっています。

 「ミステリ」を、「犯罪を主題とし、謎の解明を軸とした小説」として捉えるならば、本書は間違いなくその最上級品。海外ミステリならではの豊穣を、多くのかたに楽しんでいただければと祈っています。

 20年前、『推定無罪』に震えた読者のみなさんはもちろんのこと、『推定無罪』を知らない方々にも、大人が味わうにふさわしい複雑で苦味の利いた逸品を、じっくりと噛み締めていただきたいと思っています。

 なお、『推定無罪』も9月上旬に新装版で刊行されています。

(文藝春秋翻訳出版部N)