『偽りのアンティークベア事件』/The Crafty Teddy

ジョン・J・ラム(John J. Lamb)/阿尾正子・訳

創元推理文庫/定価1155円(税込)/1月11日/ISBN:978-4-488-26406-2

ことのはじまりは、我が家に入った泥棒。そいつはわたしたち夫婦の貴重なアンティーク・ベアを盗んでいったのだ。犯人も盗まれたベアも見つからないまま数週間がたったある日、田舎町レメルケンプ・ミルに日本のヤクザが現れた。しかも、あまり人気があるとはいえない歴史博物館に入っていく。あとをつけたわたしの前に館長の無残な姿が……。おやじギャグとテディベアをこよなく愛する元腕利き刑事&愛妻の、おしどり探偵シリーズ。解説=大矢博子

『雪の女』/Luminainen

レーナ・レヘトライネン(Leena Lehtolainen)/古市真由美・訳

エスポー警察の巡査部長マリア・カッリオは、有名なセラピストが開いた女性限定のセラピーセンター、ロースベリ館での講演を依頼された。そして数週間後、そのセラピストが行方不明になり、雪深い森で死体で発見された。彼女はなぜ厳寒の中、そんなところまで歩いていったのか? 当時館に滞在していたのは、なにやら訳ありな女性ばかり……。北欧フィンランドを舞台に、小柄な女性警官マリアが事件を追う。〈推理の糸口賞〉受賞作。訳者あとがき=古市真由美

『護りと裏切り』上下/Defend and Betray

アン・ペリー(Anne Perry)/吉澤康子・訳

創元推理文庫/定価各1008円(税込)/1月29日/ISBN:(上)978-4-488-29503-5(下)978-4-488-29504-2

看護婦のヘスターは、友人のイーディスの兄であるカーライアン将軍が置物の甲冑(かっちゅう)の鉾槍(ほこやり)に胸を突かれて死亡したと知らされる。当初は事故だと思っていたが、妻のアレクサンドラが夫殺しで逮捕される。義姉の犯行を信じられないイーディスに相談されたヘスターは、弁護士のラスボーン、元警官のモンクとともに真相を探るが……。ヴィクトリア朝ロンドンを見事に活写した傑作ミステリ。解説=松浦正人

『小鬼の市』/The Goblin Market

ヘレン・マクロイ(Helen McCloy)/駒月雅子・訳

創元推理文庫/定価1008円(税込)/1月29日/ISBN:978-4-488-16808-7

カリブ海の島国サンタ・テレサに流れついた不敵な男性フィリップ・スタークは、アメリカの通信社の支局長ハロランの死に乗じて、まんまとその後釜にすわった。着任早々、本社の命を受けてハロランの死をめぐる不審な状況を調べ始めたスタークは、死者が残した手がかりを追いかけるうち、さらなる死体と遭遇することになる──『ひとりで歩く女』のウリサール署長とウィリング博士、マクロイが創造した二大探偵が共演する異色の快作。解説=福井健太

『孤児の物語I 夜の庭園にて』/The Orphan’s Tales: In the Night Garden

キャサリン・M・ヴァレンテ(Catherynne M. Valente)/井辻朱美・訳

海外文学セレクション(単行本)/定価5775円(税込)/1月29日/ISBN:978-4-488-01652-4

【2008年ミソピーイク賞受賞作】

昔ひとりの女童がいて、その容貌は糸杉の木と羽毛を照らす新月のようであった。……魔物と呼ばれ、おそれられ、スルタンの宮殿を取り巻く庭園で野生の鳥のように暮らしていたひとりの女童。そこに訪ねてきたのはひとりの童子。スルタンの息子のひとりだった。女童はその瞼に精霊が記した物語を童子に語って聞かせる。つぎつぎと紡ぎ出され織り上げられてゆく、物語の綴れ織り。物語の迷宮で現代のシェラザードが語る稀代の奇書。訳者あとがき=井辻朱美