7月13日(土)の第3回西東京読書会。

 会場は今回で二度目となる三鷹の風待文庫。

 課題本は『夜に生きる』

 翻訳を手がけられた加賀山卓朗さんをゲストにお招きし、参加者総勢14名での開催となりました。

 参加者14名とは少ないんじゃない? そんな声も聞こえてきそうです。たしかに! ゲスト(1名)と店主(1名)と幹事(3名)を含めてなので、純粋な参加者は9名。大都会東京の会にしては寂しいというご指摘もごもっとも。だって、東東京は20名、千葉、大阪、福岡しかり、北の地札幌が15名、ひとり幹事で頑張ってる埼玉だって12名、名古屋はなんと45名! いやはや、すごい。とうてい張りあえるもんじゃありません。

 でも、14名にはそれなりの理由があるんです。会場の古書店・風待文庫はこぢんまりしたお店。だから、14名でほぼ満杯。はっきり言って、狭いです。でも、この狭さが大切。参加者同士の距離が否が応にも近いから、よそよそしくしてる暇も、照れてる暇もない。あっというまに打ち解けることまちがいなし、なのです。

 さらに、今回の参加者の男女比はほぼ半々というめずらしくも喜ばしい構成。(ちなみに、過去二回の読書会の男女比は1:9でした。)課題本がギャングもののせいだからなのか、はたまた、加賀山氏には熱烈な男性ファンがたくさんいるのか……。原因究明は果たせませんでしたが、小さな古書店に大柄の男性が大勢来たらどうなることかという幹事の不安をよそに、無事に全員席につき、開会と同時に話は一気に盛りあがりました。

 次々に発せられる感想をメモするのも間に合わなかったほどですが、とりあえず筆が追いついたものをご紹介すると——

・「殺し合いの場面はどぎついが、最後のまとめ方がうまいので、読後感にどぎつさが残ることはない」とおっしゃる方がいるかと思えば、「いやぁ、激しい刑務所シーンが良かった! 寝るのも忘れて読んだ。もっともっと激しいシーンがほしかった」と言う方も。

・「登場する女性は添え物。わりとあっさりしていて、女性を描き切れていないのでは?」という意見もあれば、「いや、ギャングものにしては女性を描いている。肝心なところはきちんと押さえている」という意見も。

・“修理しても遅れる懐中時計が意味すること”についての鋭い解釈には一同納得! (ネタバレになってしまうので、すばらしい解釈をこの場で発表できないのが悔しい……)

・「父と息子の関係がテーマなのはいかにもアメリカ的」

・「主人公のキャラクターがつかみにくいのでは?」という意見が出ると、間髪を入れず、シリーズ第一作『運命の日』を読んだ参加者から詳しい解説が。「『夜に生きる』単体でも充分に読み応えがあるが、『運命の日』を読むと、主人公の家族関係がわかってますます面白い」とのこと。(これはもう読むしかない!)

・「最終章に登場する人物は誰なのか?」、「もしや、老いた主人公が孫を連れているシーンとか?」、「この最終章が三部作の三作目に大いに関係があるのでは?」

(この疑問は残されたまま。あぁ、三作目が待ち遠しい!)

 後半は、お待ちかね、ゲスト翻訳家の加賀山さんのお話。

・「作者はバランスを取りながらも、そこに情念を突っこむのがうまい」

・(「ルヘインの作品で一押しは?」という質問に)「『ミスティック・リバー』をぜひ読んでみてください」

・(「翻訳で苦労したところは?」という質問に)「ルヘインはふいに詩人っぽくなるところがむずかしい」(たしかに、各章の終わりは余韻が残る詩的な感じ)

 さらに「この部分はどういう意味なんですか?」と訳者泣かせの鋭いツッコミも入り、2時間の読書会はあっというまに幕を閉じたのでした。

 こんな調子で、西東京読書会はこれからも少数精鋭で続けていきます。

 次回は11月か12月の予定。

 お時間とご興味のある方、どうぞ三鷹まで足をお運びください。

森嶋マリ(もりしま まり)

東京都出身。主な訳書は『古書の来歴』ジェラルディン・ブルックス、『危険な愛のいざない』アナ・キャンベルなど。趣味はテニス、水泳、海外ドラマ鑑賞。お菓子作りは生活の一部。

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