H25.8.25 第6回福島読書会レポート

—「解錠師」はいかにして解錠されたか?

 ここは、東北本線二本松駅のすぐ目の前にある二本松市民交流センター。

 この町では羊羹は丸く、病院坂では金田一耕助が目撃されるという。

 そんなミステリータウン二本松に、今回の課題図書「解錠師」の訳者でもある“ミステリー翻訳界のカンバーバッチ”越前敏弥さんをお迎えして、第6回福島読書会は開催されました。参加者総勢12名+越前さんが揃ったところでスタートです。

 まずは、世話人のSさんが寝る間も惜しんで作ったと思われる、小ネタ満載の素晴らしい資料の紹介から始まりました。これを読書会のもうひとつの楽しみにしている参加者も多いのではないでしょうか。今回は、スティーヴ・ハミルトンをはじめとする、世の中のあらゆる事象の解錠に挑んでいる意欲作です。

 特筆すべきは表紙。「氷の闇を越えて」旧版のレイアウトを模したとのこと。手が込んでます。

20130908085706_120.jpg 20130908091220_120.jpg 20130908090112_120.jpg 20130908085852_120.jpg

 それから、「実は私は・・・」をテーマに自己紹介。

 「実はのど自慢に出たことがある」人とか「実はこじはるが推しメン」の人とか、「実は住まいは東京で東北には縁もゆかりもないが、なぜか福島読書会がホームで東京がアウェーな気がする」人とか「実は劇団員だったことがある」人とか「積極的にカンバーバッチネタを振っているが実はBBCの『シャーロック』を見たことない」人とか、次々に秘密が明かされていきます。

 引き続いてのテーマは、「解錠師あるある」。 参加者それぞれの感想妄想その他、作品にまつわるもろもろの話を順に語っていきました。

「素足に靴の登場人物が出てきて、もう石田純一としか思えなくなってしまった」

「ポケベルを使ったことがないのでイメージできなかった」

「解錠シーンがとても楽しめた。動画検索までしてしまった」

「主人公のマイクルが美少年というセリフが出てきたときには何か違うのが始まるのか?と思ったが、私の期待する方向へは行かなかった」

 ここでマイクルが美少年という設定について、しばし盛り上がります。

 ちなみに越前さんが訳された際のイメージキャストは、某アイドルグループAのN宮くんだそうです(「相棒」の成宮くんではありません)。

「アメリアとのマンガでのやりとりが面白かった」

「言葉を発せないのに小説の中では饒舌。炎天下のシーンなど、体に感じる温度が如実に伝わる描写」無口なのに、女の子をすぐ口説き落とせるんだよなあという意見もありましたが、それはやっぱり美少年だから、ね。

「自分も部下を持つ身になったので、ゴーストの仕事の教え方が参考になる。こういうオヤジになりたい」という感想もあれば、「ゴーストのような先輩に教えられ、いじめられ・・・」といった人も。

 さて、ミステリーというよりは青春小説として読んだという感想も多くあげられていましたが、この点について、越前さんからは、トラウマを克服する成長小説は今のアメリカの主流になっていて、賞も獲りやすいので、意識して書いているのではというご指摘が。

 「氷の闇を越えて」とも共通するのが、恐怖がトラウマになっているという点。「氷の〜」のアレックスは胸の中の銃弾、マイクルは子どもの頃の体験が物語の原動力となっている。ただ、そういうトラウマを抱えている割にアレックスはしゃべりすぎるというところが欠点だったが、「解錠師」では主人公は語らず、心の中のへらず口になっているのが、バランスのとれているところではないかということでした。

 また、解錠シーンについてもかなり調査されたとのことで、読んでいて解錠シーンがイメージできましたか?とのご質問。

 ここで、世話人のSさん。何やら戸棚から食パンを取り出すと・・・。そう、食パンで錠前の模型をつくり、解錠シーンを実演しようというのです。なんという大胆な試みでしょう。

 わかるようなわからないような(すみません)実演によりパンは解錠され、次には今度こそ本物の金庫登場。Sさんのダイヤルを廻す華麗なる指さばきで見事に金庫を開けると一同より歓声がおこりました。引き続き、“駅前のロック・アーティスト”Aさんが挑戦。こちらも難なく解錠成功。・・・この金庫には決して貴重品は入れてはならないと思いました。

 気がつけば時間はあっという間に過ぎていき、今回の読書会は無事「おひらき」となりました。

 越前さん、参加者のみなさん、楽しい時間をありがとうございました。

翻訳ミステリー福島読書会会員番号1番 MY子

各地読書会カレンダー

これまでの読書会ニュースはこちら