わーい。酒井貞道&若林踏両氏の結成したミステリ推スブラザースの「徹夜本招待席」イベント第1回ゲストに、私、杉江松恋がお招きいただきました。

 内容はアレです。アレについて、存分に語れとのご用命。ふむふむ。

 改めて自分で書くのもなんですが、『マストリード100』は最近では珍しくなった、個人が選ぶ形のブックガイドです。

 この本が出てからいろいろな方に、主にネット上で感想を聞かせていただいたのですが、感覚的にいえばもっとも多かったのが以下の2点でした。

 ・なんであの作家を入れなかったんですか?

 すっごく身も蓋もない言い方をしてしまうと、いちばんの理由は「本が品切れになっていたから」です。次に、「いくつかは残っているんだけど、自分が選びたいと思う本が品切れになっていたから」。たとえばマーガレット・ミラーは全部新刊としては品切れ状態で、泣く泣く100冊のリストに入れることを断念しました。第2部で読めない本の中のお薦めをまとめて書いたのは、マーガレット・ミラーが無かったから、というのが大きいですね。

 ただ、本っていつも無くなるんです。それを嘆いているばかりではなくて、とにかく今あるものから手をつけて、読めるものから読んでいったほうがいい。そうすると、なんとなく嗅覚のようなものが働き始めて、1冊読んだら次はどういうものに手をつけたらいいか、ということがわかるようになってくるんです。

『マストリード100』の第1の任務は、そのお手伝いをすることです。

 みなさんがアンテナを立てるために必要な勘所という知識をお伝えするために書評家はいるわけです。どこに、どの方向に向けてアンテナを立てるのが効率的か、というアドバイスを送ることにはとても意味がある。本書を書く上で気をつけたことは、読み終えると広くアンテナを張り巡らすための予備知識がなんとなく身につく、そんなものとして全体をデザインするという原則でした。全部に目を通すと、そんなに精巧ではないかもしれないけど全世界が見通せるような地図が手に入る、ということを意図して100冊の選書はしてあります。だから「この本を入れたいんだけど、こっちしか残ってないから」という理由で作家そのものを落とした場合は、地図を描くという意図に沿わなかったわけなんですね。ファンの方にはとても申し訳ないことをしてしまっているわけですが。

 そして、次に多かったのが、

 ・なんであの作家のあの作品を入れなかったんですか?

 という質問でした。これは1)のように「本が無かった」ということもあるんですが、それだけではない。たとえばクイーンでは『Yの悲劇』ではなく『ギリシャ棺の秘密』でもなく、まして『災厄の町』でもなく『シャム双生児の秘密』を入れています。それは、初心者にまず手にとってもらいたい一冊としてクイーン作品の中から選んだからなんですね。本文中に詳しく書きましたが『シャム双生児』にはいくつかの特異点がある。その特異点ゆえにクイーンの他の作品からは浮き上がっているのですが、だからこそ初めてクイーンを読む人には手に取りやすい。そういう意図で選書をした作家が何人かいます(ここで白状しておくと、最初に挙げた候補は『○○○』だったのですが、リストを見せた某氏が「えええっ!」という過激な反応を示したために、ちょっと初心者向けに振りすぎたかな、と反省して修正した次第です)。

 もちろん奇を衒っているわけではなく、この作家ならこれ、という作品を選んではいるつもりです。が、絶対に好みは反映されているもので、読まれた方の中にはきっとご不満を抱かれた向きもおありでしょう。その苦情については、ネットなどでおっしゃっていただければ嬉しいです。参考にし、次の機会に備えたいと思います。

 なにしろ100冊も本があり、100組の作家をとりあげているので、到底この限られたスペースでは語りつくせません。個別の疑問については、15日のイベントで質問していただけると、著者としてたいへんありがたく存じます。

 以上のようなことを踏まえて、イベントでは、

1)この本が成立した経緯や意図について、再確認をする。

2)どうやって活用したらいいか、アンテナとしての、また地図としての機能を点検する。

3)それぞれの選書について、パズルのピースとしてどこに当てはめようとしていたのかを問う。

 といった疑問についての質疑応答が行われる、ような気がします。というのも私はゲストで、主催者じゃないから! こんな感じで進んだらいいんじゃないかな。違うかな。うーん、そうかもしれないな、という風に考えていると思し召せ。もしかすると後で大慌ての訂正が入るかもしれませんね。

 できれば、上記以外でお聞きになりたいことがある方は、ツイッター上で #マストリード100 をつけて発言していただけると大変に助かります。

 金曜日ということでご多用ではありましょうが、ぜひお越しくださいまし。特に質問はないけど、杉江とミステリーの話をしたい、という方も大歓迎です。

 あ、お持ちでない方のために、本はいくらか持参していきますので。会場でお買い求めいただくことも可能ですので。

 えーと、こんな感じでよろしかったでしょうか。ミステリ推スブラザースのお二人。

 いいようですね。

 では、当日、新宿ビリビリ酒場でお会いできることを楽しみにしております。ごきげんよろしゅう。

[日時] 2013年11月15日(金) 開場・19:00 開始・19:30 (約2時間を予定)

[会場] Live Wire Biri-Biri酒場 新宿

     東京都新宿区新宿5丁目11-23 八千代ビル2F (Googleマップ

    ・都営新宿線「新宿3丁目」駅 C6〜8出口から徒歩5分

    ・丸ノ内線・副都心線「新宿3丁目」駅 B2出口から徒歩8分

    ・JR線「新宿」駅 東口から徒歩12分

[料金] 1000円 (当日券200円up)

※終演後に出演者を交えてのフリーフード&フリードリンクの懇親会を開催します。参加費は2800円です(当日参加は3000円)。懇親会参加者には、入場時にウェルカムの1ドリンクをプレゼント。参加希望の方はオプションの「懇親会」の項目を「参加する」に変更してお申し込みください。参加費も一緒にお支払いただきます。

※懇親会に参加されない方は、当日別途ドリンクチャージ1000円(2ドリンク)をお買い上げください。

※領収書をご希望の方は、オプションの「領収書」の項目を「発行する」に変更してお申し込みください。当日会場で発行いたします。

 ご予約はこのサイトからお願いします。