20130627043830.jpg 田口俊樹

 長屋のかわら版にはなじまない話題かもしれないけれど、特定秘密保護法。

 これ、ひどすぎません?

 六十すぎた爺さん婆さんはみんな左翼だ、とはあるジャーナリストの名言ながら、こればかりは右も左もないと思う。

 去年の暮れに朝日新聞にこの法律の全文が載ったんで読んでみました。ちっちゃい活字だったけど、とりあえず全紙に収まる分量なのに、読むのに一時間近くかかりました。わかりにくくて。

 で、最後まで読んでもよくわからない。ただひとつわかったのは、「行政機関の長」に考えられないほど絶大な権限が与えられていることです。

 そんな「長」が勝手に決めて、場合によっては永遠に秘密のままにされかねない秘密をたまたま知ったとします。それが秘密であるかどうかもわからずにね。そんなわけのわからない秘密をたまたま別の人に話しただけで、刑事罰に問われるんですよ。さらにはその秘密をたまたま聞いちゃった人も教唆罪を問われかねない。

 そんな罪を裁く裁判、想像できます?

 誰かが投書していたけれど、中世の魔女裁判だって、魔女が火あぶりになるのには少なくとも理由があったわけです。これこれこんな魔法を使って人心を惑わせたからとかね。そういう理由さえ明らかにされない、裁判官にも中身が知らされない裁判なんて、ありえます?

 外交、防衛に秘密はつきものです。だから、その手の秘密を管理するための法律はむしろあるべきだとは私も思います。しかし、この法律はどう考えてもひどすぎる。

 柄にもなく真面目なことを書きました。でも、こればかりはひとことでもいいから言っておきたくて、あえて言わせてもらいました。ご海容のほどを。

(たぐちとしき:ローレンス・ブロックのマット・スカダー・シリーズ、バーニイ・ローデンバー・シリーズを手がける。趣味は競馬とパチンコ)

 20130627043831.jpg  横山啓明

年明け早々、

滝本誠さんに誘われて、新春花形歌舞伎

『通し狂言 壽三升景清(ことほ いでみますかげきよ)』を観てきました。

野郎ふたりで、朝から芝居見物、なかなか乙なものでした。

今年は良いことがありそうです。

滝本さんといえば、エディション・ノワール。

第二弾、第三弾が年内に刊行の予定だそうです。

第三弾の翻訳をやることになりました。

内容は・・・・・・近々、お伝えします。

原書を見せてもらいましたが、これが

えらくカッコイイ!! 乞う、ご期待。

(よこやまひろあき:AB型のふたご座。音楽を聴きながらのジョギングが日課。主な訳書:ペレケーノス『夜は終わらない』、ダニング『愛書家の死』ゾウハー『ベルリン・コンスピラシー』アントニィ『ベヴァリー・クラブ』ラフ『バッド・モンキーズ』など。ツイッターアカウント@maddisco

 20130524023841.jpg 鈴木恵

ジョルジュ・シムノンのメグレ・シリーズ、実は初めて読みました。すみません。最初に手にしたのは『メグレと殺人者たち』。題名もベタだし、軽い小説なのかなと、斜め読みしはじめたんですが(またまたすみません)、気づいたらすっかり引き込まれてました。読んでいて自分の中のギアがガチャッと切り替わったように感じたのは、犯人の姿が具体的になってきたあたり。ほのぼのしたユーモアにだまされてると、どんどんノワール小説風の展開になってくるんですよね。驚きました。つづいて『メグレ夫人の恋人』。こちらは短篇集なんですが、これもまた個人的には、登場人物たちが妙に面白かったです(いやもちろん、推理や謎解きも面白いんですが)。なんなんでしょうかこれ。で、いまは『男の首』を読んでいるところ。いままで古本屋でこのシリーズを見かけても、手に取りもしなかったんですが、心を入れ替えました。ほんとにすみません。

(すずきめぐみ:文芸翻訳者・馬券研究家。最近の主な訳書:バリー『機械男』 サリス『ドライヴ』など。 最近の主な馬券:なし orz。ツイッターアカウント@FukigenM

  20130912093838.jpg  白石朗

 第五回を迎える翻訳ミステリー大賞の一次投票には多くのみなさまのご協力をいただきありがとうございました。また、最終候補作の変更ではご迷惑をおかけしたにもかかわらずご理解をいただけたことにも、予選委員のひとりとしてお礼を申しあげます。

 二次投票の締切は4月17日(木)です(要項はこちら)。前回までと同様、ひとりでも多くのフィクション翻訳者諸兄姉のご協力をお願いいたします。

 すでにあちこちで話題になっていますが、ティムール・ヴェルメシュ『帰ってきたヒトラー』(森内薫訳、河出書房新社)を一気通読。タイムスリップで現代によみがえってきたアドルフ・ヒトラーの、はじめからちょっとズレてる周波数の一人称で語られる物語に抱腹絶倒しているうちに、うなじから背すじにいやな汗と悪寒が走りました。

(しらいしろう:1959年の亥年生まれ。最新訳書はキング『11/22/63』、アウル『聖なる洞窟の地』、グリシャム『自白』、ブラッティ『ディミター』、デミル『獅子の血戦』など。近刊はジョー・ヒル『NOS4A2』(仮題)。ツイッターアカウント@R_SRIS

  20131127082907.jpg 越前敏弥

 自己宣伝になりますが、先日、田内志文さんをお迎えして開催した翻訳百景ミニイベントでは、『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』『ウォールフラワー』『神様のホテル』の3作合わせて約30冊がその場で売れました(田内さんのサイン入り)。こんなのは初めての経験でしたが、訳者が周到に準備してがんばればそれだけ売れるという実例を目のあたりにし、今後の活動の貴重なヒントを頂戴したと思っています。

 今年もマイブームの読書会めぐりをやります。第1弾は2月7日の横浜スピンオフ読書会。もう16回目なんですね。

 で、横浜の人たちから、あと2名参加できるのでよかったらどうぞ、という案内をいただいたので、紹介します。

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横浜スピンオフ読書会#16『Xの悲劇』

日時/

2月7日(金)

19:30〜3時間を予定

課題書/エラリー・クイーン「Xの悲劇」角川文庫版

http://amzn.to/1b8b44U

※課題書は越前敏弥さん訳の角川文庫版に指定させていただきます。

会場/横浜駅近郊のお店

※食事をしながら課題書について語り合います。

詳細はお申し込みをいただいた方に別途ご連絡します。

募集/2名

※定員になり次第、受付を締め切らせていただきます。

※参加を希望される方は2月4日(火)までに

ykhma.rg.spinoff○gmail.com

(「○」を「@」に変えてください)

までメールをお送りください。

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さらに、3月の遠征が決まりつつあるところ(近々当サイトでもお知らせします)。読書会にかこつけて、全国のラーメ…だけでなく名所めぐりも楽しみにしています。

(えちぜんとしや:1961年生。おもな訳書に『解錠師』『夜の真義を』『Yの悲劇』『ダ・ヴィンチ・コード』など。趣味は映画館めぐり、ラーメン屋めぐり、マッサージ屋めぐり、スカートめくり。ツイッターアカウント@t_echizen。公式ブログ「翻訳百景」 )

  20130222205223.jpg 加賀山卓朗

 今年もみんなが恋チュンで愉しく踊っていられるような一年になることを願ってやみません。名曲ですね。

 年末年始には、まえまえから読みたかった阿部和重『シンセミア』を一気読みして、期待をはるかに上まわる傑作(山形のフォークナー?)だったことに満足。激しくデフォルメされた田舎の人々の迫力がすごい。ちょうど帰省中だった自分の田舎のイメージと重なる部分もあったりして(変態少女趣味の巡査はいないと思うけど、あの濃密すぎる人間関係とか)、すばらしい読書体験でした。

(かがやまたくろう:ロバート・B・パーカー、デニス・ルヘイン、ジェイムズ・カルロス・ブレイク、ジョン・ル・カレなどを翻訳。運動は山歩きとテニス)

20131128014219.jpg 上條ひろみ

 もう一月も終わりですが、二〇一四年の初長屋です。今年もよろしくお願いします。

 翻訳ミステリー大賞の一次投票がすんで、今は二次投票に向けて候補作を読んでいる最中という翻訳者も多いと思いますが、今日はわたしが一次投票でも早川書房の「ミステリが読みたい 2014年版」でも一位に投票したカミラ・レックバリの『踊る骸』について書かせてください。候補作じゃなくて恐縮ですが、すっごくおもしろいんですよ!

 作家のエリカとそのパートナーで刑事のパトリックが主人公のスウェーデン・ミステリ、シリーズ第五弾ですが、レギュラー陣については毎回けっこうこまかく描写されているので、一作目から読んでいなくても大丈夫。かなり分厚いですが、おもしろくて意外にすぐ読めちゃいます。わたしがとくに気に入っているのは、暗くておどろおどろしい事件を扱っているのに、笑えるシーンがすごく多いところ。とくにターヌムスヘーデ警察署の署長メルバリが毎回笑わせてくれます。北欧ものは暗くて……と思っている人にぜひおすすめしたい作品、シリーズです。第六弾の『人魚姫』も出たので、これから読むのが楽しみ。

(かみじょうひろみ:英米文学翻訳者。おもな訳書はジョアン・フルークの〈お菓子探偵ハンナ〉シリーズ、カレン・マキナニーの〈朝食のおいしいB&B〉シリーズなど。趣味は読書とお菓子作りと宝塚観劇)

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