新年度最初のイベントを紹介させていただきます。

 もしご予定がなければ、ぜひ新宿BIRIBIRI酒場にお運びください。

(なお、本イベントは本来3月23日に開催される予定だったものが諸事情により順延いたしました)

「君にも見えるガイブンの星(ガイブン酒場改め)」とは、本来はミステリー・プロパーの読者である杉江が、世界のさまざまな文学を読むことに挑戦してみたいと考えて始めたイベントです。その月以降に出る外国文学を早読みし一足先に内容をご紹介するという趣旨で、河出書房新社、新潮社、白水社、早川書房の各社にご協力いただいて開催をしております。心強いイベント・パートナーは、書評家の倉本さおりさん。2人してうんうん唸りながら山と積まれた本を読んでいます。

 作家特集は、J・D・サリンジャーです。作家としての絶頂期に突然隠遁生活に入ることを発表し、以降は完全な沈黙を守ったため、生存中から伝説の人となった人物ですが、最近になって未発表作品の一部が公刊される予定になっていることが明かされました。村上春樹新訳『フラニーとズーイ』が刊行されたことは、サリンジャー・ファンにとっては非常に興味深い出来事だったことでしょう。近い将来にもしかすると、という期待感を読者に抱かせてくれました。

 今回の作家特集ではその新訳版『フラニーとズーイ』を中心に、サリンジャーについての読解、四方山話をお届けします。旧訳である野崎孝版と村上版の読み比べにも挑戦し、来場いただいた方にもご意見をうかがう予定です。サリンジャーが大好きという人はぜひ、そして、まったくこの作家を読んだことがないという方特に大歓迎。これをきっかけに、その豊穣な世界に飛び込んでみてください。

 なお、サリンジャー特集の他には、ルース・オゼキ『あるときの物語』ブライアン・エヴンソン『遁走状態』という先の国際文芸フェスティバル来日組作家の二作も取り上げる予定です。『あるときの物語』は、漂着した日記が東京のメイド喫茶で働く少女とカナダの島に住む作家を結びつけるという内容。オゼキは2010年に曹洞宗の僧侶になっていますが、本書の根底には道元の「有時」の考えがあります。そして東日本大震災によって変わってしまった世界観が、この作品の土台にはすえられています。エヴンソンの『遁走状態』は、これぞまさに「異色作家短篇集」という逸品。とにかく奇想がたくさん盛り込まれており、その変さが作品ごとに異なっているので、19篇すべてを詳しく紹介してしまいたくなる短篇集です。

 もう一作は少し前の作品ですがアレクサンダル・ヘモン『愛と障害』を取り上げる予定です。ヘモンは以前の回でも少し触れたことがあるのですが、駆け足での紹介になってしまったためデビュー作『ノーホエア・マン』も含めて再度お話をしたいと思っています。ヘモンはボスニア・ヘルツェゴヴィナ出身ですが、留学中に祖国で内戦が始まったため、暴力的に自身の折どころを奪われてしまいました。その浮遊するような「居心地の悪さ」と、心の傷を深いところに秘めた繊細な感性とを連作形式で味わえる作品です。

 今回も盛りだくさんでお届けするガイブンの星、ぜひご期待ください。

[日時] 2014年4月4日(金) 開場・19:00 開始・19:30

[会場] Live Wire Biri-Biri酒場 新宿

     東京都新宿区新宿5丁目11-23 八千代ビル2F (Googleマップ

    ・都営新宿線「新宿3丁目」駅 C6〜8出口から徒歩5分

    ・丸ノ内線・副都心線「新宿3丁目」駅 B2出口から徒歩8分

    ・JR線「新宿」駅 東口から徒歩12分

[料金] 1000円 (当日券200円up)

※領収書をご希望の方は、オプションの「領収書」の項目を「発行する」に変更してお申し込みください。当日会場で発行いたします。

 ご予約はこのサイトからお願いします。

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