第49回 あの男が帰ってくる! 『24 リブ・アナザー・デイ』

 なんか珍しく仕事がたて込んで、ずるずる連載が遅れてしまってすいませんでしたー。気がついたらもう桜も散ってゴールデン・ウィークがすぐそこへ!(執筆時)

 よしなしごとはさておき、帰ってきたといえばこの人。2000年代、一世を風靡したあの熱血エージェント、ジャック・バウアーが帰ってきましたよー!

 なんとこの5月から、『24』の新シリーズ、『24 リブ・アナザー・デイ』が放送されるのです。

 今さら説明するまでもないとは思うのですが、一応おさらいをしておくと、『24』を一言で言っちゃうと、キーファー・サザーランド扮する熱血野郎ジャック・バウアーが、テロリストたちが引き起こす凶悪な事件を、ほぼ徒手空拳で解決するという、猛烈アクションドラマです。

ただ、これが普通のアクションドラマと違うのは、以下のような特徴があるからです。

 複数の出来事がリアルタイムで進行する。つまり、1話の中で作品世界内でもちょうど1時間が経過する。

 1シーズン全24話で、作品内ではちょうど24時間=1日が経過し、一つの事件が解決する。

 最終回以外は毎回クリフハンガー(主人公が危機一髪の状況)で次回に続く。言い換えると、第1話と最終話以外は、いつも起承転結じゃなくて承転結起という構成になってるわけ。

 キーワードは「リアルタイム進行」「クリフハンガー」の二つ。この二つのギミックから生まれる強烈なサスペンスで、視聴者をテレビの前に釘付けにしたわけです。

 もちろん、そこには問題もあって、むりやりなクリフハンガーとどんでん返しの連続は、話の冒頭からよくよく考えてみると、プロットが矛盾したり破綻してるシーズンもいくつもあったりしたわけですが、それでも視聴者は、テレビを見ている1時間のあいだは、夢中になって主人公の奮闘を追いかけていたわけです。

 それを支えていたのは、派手なアクションシーンはもちろんですが、なんといっても主人公、ジャック・バウアーの魅力でしょう。

 初登場時は、CIAのテロ対策ユニット(CTU)ロサンゼルス支局に勤めてはいるものの、奥さんと娘がいる、わりとどこにでもいそうな公務員のおじさんぽかったのが、不幸なことに凶悪な事件に何度も関わるうちに、どんどん捜査活動が過激になっていって、それに合わせて本人の境遇もぐだぐだに。家庭は崩壊するわ、CTUは辞めちゃうわ、最後はとうとうアウトローとなってしまうという、悲劇の主人公なのです。

 なのですが、どれだけ悲惨な状況だろうと「くそっ!」と大声で怒鳴りながら敵の前へと突っ込んでいくジャックの姿は、いっそおかしさまで感じてしまうくらい極端で、拍手喝采を送ってしまわざるをえないのでした。

 今回の『リブ・アナザー・デイ』は夏休み期間に全12話だけ放送する特別編で、リアルタイム進行と1日の出来事というお約束は守るものの、各話の間で数時間ずつ時間を飛ばすことになるんだとか。今回はジャックも不眠不休ではなく、休憩する時間をもらえそうですな。

 物語は、第8シーズンの最終回から4年後のロンドンで始まるんだとか。アメリカからイギリスに舞台を移して、ジャック・バウアーはいかなる活躍をすることになるのか。今から放送が楽しみです。

 もちろん、日本で放送するときは、小山力也さんに今まで通りジャックの声をお願いしたいですよね。「ウソをつくな、本当のことを言え〜!」ってな感じで(笑)。

 さて、テロリストと戦う熱血捜査官が出てくる小説、それも21世紀のものと言えば、なんといってもネルソン・デミルの《ジョン・コーリー》シリーズでしょう。

 主人公のジョン・コーリーは、第1作『プラムアイランド』(1997)ではニューヨーク市警の殺人課刑事だったのですが、第2作の『王者のゲーム』(2000)からは連邦テロリスト対策特別機動隊(ATTF)の捜査官として、凶悪なテロリストたちを相手取って獅子奮迅の大活躍を演じるようになります。ちなみに、5作目の『獅子の血戦』(2010)は、『王者のゲーム』の直接の続編で、『王者のゲーム』で取り逃がした宿敵との決着がつきます。

『24』も《ジョン・コーリー》シリーズも、2001年の9.11同時多発テロの直前にスタートし、途中からその影をどうしてもひきずっているところがあります。じっくりと分析すると、2000年代、いかにしてエンターテインメントが、あの事件をなんとか昇華しようとしていたのかの、サンプルとして読み解くこともできるかもしれません。

ちなみに、ジャック・バウアーと違って、コーリーはとにかくおしゃべり。読者はそこで好き嫌いが分かれるみたいですが、彼の饒舌が合う人にとっては、毎回の長ゼリフが楽しくて仕方なかったりして。

■『24 リブ・アナザー・デイ』予告篇

■『24』全8シーズン「くそっ!」セリフ集(笑)

堺 三保(さかい みつやす)

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1963年大阪生まれ。零細文筆業者。訳書近刊にコミックス『R.I.P.D.』、『2ガンズ』(共に小学館集英社プロダクション)。

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