• 「非英仏語圏ミステリベスト100」結果発表!(その1)は【こちら】

 続いて、31位〜62位の発表です。

【31位(25ポイント/4票)】

  • 『エーミールと探偵たち』エーリヒ・ケストナー(ドイツ)

【32位(24.5ポイント/4〜5票) 3作】

  • 『わたしの名は赤』オルハン・パムク(トルコ)(5票)
  • 『背後の足音』ヘニング・マンケル(スウェーデン)(4票)
  • 『コリーニ事件』フェルディナント・フォン・シーラッハ(ドイツ)(4票)

 『背後の足音』はヴァランダー警部シリーズの第7作。

【35位(24ポイント/4票)】

  • 『時の地図』フェリクス・J・パルマ(スペイン)

 《ヴィクトリア朝三部作》の第1作。第2作『宙(そら)の地図』も邦訳されている。第3作『混沌の地図』(El mapa del caos)はスペイン本国で2014年10月刊行予定。

【36位(23ポイント/4〜5票) 2作】

  • 『夏を殺す少女』アンドレアス・グルーバー(オーストリア)(5票)
  • 『蝶の夢』水天一色[すいてんいっしき](中国)(4票)

 昨今は「ドイツミステリ」が人気だが、ドイツ語でミステリを執筆する作家はオーストリアにもスイスにもいる。オーストリアのドイツ語作品ではこの『夏を殺す少女』が最上位だった。スイスのドイツ語作品で最上位は39位のデュレンマットの短編集『失脚/巫女の死』

 水天一色(すいてんいっしき)の『蝶の夢』は千街晶之氏が「書評七福神」のコーナーで2009年12月度のベストに選んだ作品。

 水天一色の短編の邦訳「おれみたいな奴が」が今月、Kindleで発売になった。中国では北京偵探推理文芸協会という団体(およびその前身)が1998年から3〜4年に1度のペースでいくつかの部門に分けて期間内の最優秀作品に賞を授与している。「おれみたいな奴が」は2011年の第5回北京偵探推理文芸協会賞で最優秀短編賞を受賞した作品である(この回は2007年〜2011年半ばの作品が対象)。

この作品を含む中国の短編ミステリ2編、台湾の短編ミステリ2編、計4編の翻訳短編を収録した『現代華文推理系列 第一集』も同時に発売になっている。

(上記リンクが不調の場合は下のURLをクリックして『現代華文推理系列 第一集』商品ページへ)

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【38位(22.5ポイント/4票)】

  • 『消え失せた密画』エーリヒ・ケストナー(ドイツ)

【39位(22ポイント/4〜5票 2作】

  • 『失脚/巫女の死』(短編集)フリードリヒ・デュレンマット(スイス)(5票)
  • 『唾棄すべき男』シューヴァル&ヴァールー(スウェーデン)(4票)

 『唾棄すべき男』は刑事マルティン・ベック・シリーズの第7作。

【41位(20ポイント/2票)】

  • 『バッハ 死のカンタータ』セバスティアン・クナウアー(ドイツ)

【42位(18.5ポイント/4票)】

  • 『天使のゲーム』カルロス・ルイス・サフォン(スペイン)

 『風の影』(第6位)を第1作とする《忘れられた本の墓場》四部作の第2作。第3作『天国の囚人』は今月邦訳出版される。

【43位(18ポイント/3票)】

  • 『白い国籍のスパイ』ヨハネス・マリオ・ジンメル(オーストリア)

【44位(17ポイント/3票)】

  • 『消えた消防車』シューヴァル&ヴァールー(スウェーデン)

 刑事マルティン・ベック・シリーズの第5作。

【45位(16.5ポイント/3票) 6作】

  • 『契約』ラーシュ・ケプレル(スウェーデン)
  • 『死刑囚』ルースルンド&ヘルストレム(スウェーデン)
  • 『特捜部Q カルテ番号64』ユッシ・エーズラ・オールスン(デンマーク)
  • 『雪の中の三人男』エーリヒ・ケストナー(ドイツ)
  • 『バウドリーノ』ウンベルト・エーコ(イタリア)
  • 『世界を売った男』陳浩基[ちん・こうき / サイモン・チェン](香港)

 『世界を売った男』は台湾の島田荘司推理小説賞の2011年(第2回)の受賞作。

【51位(16ポイント/3〜4票) 3作】

  • 『ヘッドハンターズ』ジョー・ネスボ(ノルウェー)(4票)
  • 『シャーロック・ホームズ リオ連続殺人事件』J・ソアレス(ブラジル)(3票)
  • 『白紙委任状』カルロ・ルカレッリ(イタリア)(3票)

 『白紙委任状』は第二次世界大戦末期から終戦直後にかけての混乱期のイタリアを舞台にした《デルーカの事件簿》三部作の第1作。続く『混濁の夏』『オーケ通り』も邦訳されている。

【54位(15.5ポイント/2票)】

  • 『煌めく氷のなかで』ヴィヴェカ・ステン(スウェーデン)

 『静かな水のなかで』『夏の陽射しのなかで』に続くシリーズ第3作。

【55位(15ポイント/2〜4票) 3作】

  • 『ロセアンナ』シューヴァル&ヴァールー(スウェーデン)(2票)
  • 『五番目の女』ヘニング・マンケル(スウェーデン)(3票)
  • 『神を見た犬』(光文社古典新訳文庫)or『七人の使者/神を見た犬』(岩波文庫)ディーノ・ブッツァーティ(イタリア)(4票)

 『ロセアンナ』(旧題:ロゼアンナ)は刑事マルティン・ベック・シリーズの第1作。2014年9月に原語(スウェーデン語)からの新訳が刊行された。

 『五番目の女』はヴァランダー警部シリーズ第6作。

【58位(14.5ポイント/2票) 2作】

  • 『雪の女』レーナ・レヘトライネン(フィンランド)
  • 『カラマーゾフの兄弟』ドストエフスキー(ロシア)

 『雪の女』は刑事マリア・カッリオ・シリーズの邦訳第1作(シリーズ第4作にあたる)。フィンランド・ミステリ協会が年間最優秀ミステリに授与する推理の糸口賞の1997年の受賞作である。続く『氷の娘』『要塞島の死』も訳されている。

【60位(12.5ポイント/2〜3票) 2作】

  • 『裏切り』カーリン・アルヴテーゲン(スウェーデン)(2票)
  • 『特捜部Q Pからのメッセージ』ユッシ・エーズラ・オールスン(デンマーク)(3票)

 『特捜部Q Pからのメッセージ』は特捜部Qシリーズ第3作。2010年のガラスの鍵賞(北欧最優秀ミステリ賞)受賞作。

【62位(11.5ポイント/2票) 2作】

  • 『湖のほとりで』カリン・フォッスム(ノルウェー)
  • 『パンドラ抹殺文書』マイケル・バー=ゾウハー(イスラエル)

 『湖のほとりで』は1997年のガラスの鍵賞(北欧最優秀ミステリ賞)受賞作。

 51位のJ・ソアレス(ブラジル)『シャーロック・ホームズ リオ連続殺人事件』はポルトガル語圏からの唯一のベスト100ランクイン。ブラジルのミステリ小説の邦訳にはほかにルイス・フェルナンド・ヴェリッシモ『ボルヘスと不死のオランウータン』がある。また、ベスト100には入らなかったがポルトガルの作品ではルイス・ミゲル・ローシャ『P2』、ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』に投票があった。南欧からはイタリアやスペインのミステリがある程度邦訳されているが、ポルトガルのミステリの邦訳はあまり進んでいない。

「非英仏語圏ミステリベスト100」結果発表!(その3)に続く。

松川 良宏(まつかわ よしひろ)

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 アジアミステリ研究家。『ハヤカワ ミステリマガジン』2012年2月号(アジアミステリ特集号)に「東アジア推理小説の日本における受容史」寄稿。「××(国・地域名)に推理小説はない」、という類の迷信を一つずつ消していくのが当面の目標。

 Webサイト: http://www36.atwiki.jp/asianmystery/

 twitterアカウント: http://twitter.com/Colorless_Ideas

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