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トークイベント  7月20日 紀伊國屋書店グランフロント大阪店にて

 場所を梅田グランフロントに移し、書店員Yさんの挨拶でトークイベントが始まりました。着席20名は予約で埋まり、あとは立ち見。読書会のメンバー以外にも多数来場、赤ちゃん連れのお母さんや、男性の姿も。ジーヴス・シリーズの幅広い人気がうかがえます。進行役は読書会の以前からの参加者でジーヴス大好きなIさんにお願いしました。質問は読書会のメーリングリストで募集しました。

・ウッドハウスとの出会いについてお聞かせください。

 いろいろ凹んでいた頃に気分が明るくなる本はないかと夫に聞いたところ、集英社の世界文学全集ユーモア篇に入っている最初の3つの短編と白水社Uブックス『笑いの遊歩道』の「ちょっぴりの芸術」を薦められました。おもしろくて、もっとないのか聞いたら、もうないというので原書を読もうとしたのですが、けっこうむずかしくて……その後アメリカに行くことになり、向こうの本屋にはウッドハウスが並んでいたので読むことになりました。

・その出会いから翻訳するようになったいきさつは?

 帰国してから、国書刊行会から世界探偵小説全集が出され。ウッドハウスへの言及があるのに、ウッドハウスの作品が出ない。そのうち待ちきれずに自分で訳したいと思うようになり、少し訳したものを見せたら、OKが出て『比類なきジーヴス』が出ることになりました。最初は『比類なき』『よしきた』『それゆけ』の3冊だけの予定でしたが、たまたま時期を同じくして他社からもウッドハウスの作品が出ることになり、辛い反面パブリシティにもなり、結局ジーヴス全作品を出すに至ったわけです。

・翻訳で苦労したことなど教えてください。

 まずウッドハウスの文章が変わっているんですね。特に初期の短編集には上流階級の若者特有の言葉遣いとか符牒とかがよく出てきす。さらに情景描写が長くて密で、一文が長い。加えて、時代背景や言葉など、調べ物が多くて大変でした。でもウッドハウスの文章は好きですし、名文だと思います。

・特に日本語にしづらかったところは?

 日本語にするのは苦労しなかったですね。しゃれとか言葉遊びで、はまり訳が見つかると嬉しいですし。

・ジーヴスはバーティのことを「ご主人様」と呼びますが、”Sir”をそう訳されたのはどうしてですか?

 くどくどしく「ご主人様」にしてスタイルが作りたかったのです。あとづけになりますが、「サンキュー、ジーヴス」ではやりたいことがあり、「ご主人様」にしたのは最初と最後だけ。ジーヴスがバーティに辞表を出すので、こうなるのですが、原作には存在するSirを真ん中部分は全部抜いてしまいました。

・登場人物のなかで思いいれのあるキャラクターは?

 バーティが好きですね。バーティの良さを世の中に知らしめたいです。バーティの良さは、性格の良さで、すれていない、ひねていない、人助けをする。さわってもさわれない魂のきれいさ、イーヴリン・ウォーの言うイノセンスの塊、日本語だと無垢になりますね。愛すべきキャラクターです。

・ジーヴスについても教えてください。

 ジーヴスについては語りにくいです。唯一絶対神について語るときのようで。登場すると風が入り、空気が変わる、そういう存在です。彼が来るともう大丈夫だという安心感がある。

・レギュラーの登場人物のなかでも注目すべきキャラクターは?

 みんな好きですが、そう、ガッシーは好きですね。(どんな人ですか?)『よしきた、ジーヴス』に出てくる、リンカーンシャーの田舎でイモリを飼っているバーティの幼なじみです。

・バーティとジーヴスの年齢について教えてください。

 年齢ははっきりしません。英語圏ではドラマの影響で、年齢が上に考えられがちですが、わたしのなかではバーティは永遠の24歳です。オックスフォードを出て、数年遊んでいたという設定。ジーヴスはそれより上でしょうね。漫画の設定は、ふたりともかなり若め。バーティは永遠の24歳、ジーヴスは30歳前後でしょうか。

・3巻までコミックスが出ていますが、漫画化のきっかけは?

 白泉社の担当さんが、勝田文さんに合う原作を探していて、この作品はどうかと。勝田さんもバーティが大好きになってくれました。わたしも漫画にしていただけて光栄です。実は1巻の最後にわたしも出ていて、勝田さんと一緒にイギリスを旅しています。案内役のわたしがウッドハウス協会の会長さんに引き合わせたところ、こんなに質問されたのは初めてだと勝田さんの熱心さに驚いていました。絵にするので、建物ひとつでもきちんと確認し、お札の絵まで調べないとだめなんですね。

・次に訳したい作品は?

 ウッドハウスは長寿で93歳まで生きて、最晩年まで仕事をしていて、しかもクオリティは落ちていません。まだまだ訳したいシリーズがあります。とりあえずは国書刊行会から出ている『よりぬきウッドハウス1,2』を読んでほしいです。

・国書刊行会の伊藤さんが、現在執筆中のジーヴス入門書、ファンのための本が本年度中には出るはずですと宣言(森村さん、頭を抱える)。楽しみですね。

関西ミステリー読書会選定のジーヴス関連書のフェアの本棚もご覧ください。

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サイン会を終えたあと、同じくグランフロントにあるイタリア料理屋さんにて、楽しい二次会へと突入。

(「梅」につづく)

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