秋ですね。スポーツの秋、芸術の秋……いや、やっぱり食欲の秋でしょ(読書の秋はデフォで)、というみなさま、待たせしました! ジョアン・フルークのお菓子探偵ハンナシリーズ第15弾『シナモンロールは追跡する』が10月20日に刊行になりました

 米国ミネソタ州の架空の町レイク・エデンで、クッキーショップを営むハンナ・スウェンセンが素人探偵として殺人事件に挑むこのシリーズ、一作目のChocolate Chip Cookie Murder(2000)の邦訳『チョコチップ・クッキーは見ていた』が2003年に刊行されて以来、幸いにも現在にいたるまでシリーズ全巻が入手可能! これもひとえに読者のみなさまのおかげです。ほんとうにありがとうございます!

 さて、ハンナシリーズには多くのレシピが紹介されています。すべて本文中に登場するお菓子や料理のレシピなのですが、読者から募集していることもあり、シリーズが進むにつれだんだん多くなっているようです。「全部試作してるんですか?」とよくきかれますが、実は全部はしてません。だって今回登場するレシピ、二十種類以上もあるんですよ〜。材料が入手しやすくて、お勧めできそうなものを何種類か作ってみるのが精一杯。で、いつも印刷所に入れる原稿の最終チェックをする時期になると、担当編集者さんにうちに来てもらって、最終的な打ち合わせをするのですが、そのときに編集さんにも試食してもらいます。

 大量のレシピのなかから今回作ったのは「シンコ・デ・ココア・クッキー」というチョコレートとアボカドのクッキーと、「きゅっとすっぱいレモンケーキ」というスクエアケーキ。

 シンコ・デ・ココア・クッキーは、実は先日の翻訳ミステリーお料理の会第三回調理実習で、参加者のみなさまにお土産としてお配りしました。アボカドのおかげでしっとりした食感なのですが、アボカドがはいっていることは言われなければ絶対にわからない! このクッキー、訳者が今まで作ったハンナのレシピのなかでいちばんおいしかったです。マジでお勧めです。ちなみに、主要材料が五種類(チョコレート、小麦粉、バター、アボカド、卵)ということで、五はスペイン語で「cinco」、罪深いほど(sinful)おいしいということで、sinco de cocoa cookie という名前がつきました。でもなんでスペイン語?

 きゅっとすっぱいレモンケーキのほうは、レモンのしぼり汁だけでなく、皮もしぼりかすもフードプロセッサーでガーッと刻んで混ぜてしまうという豪快なケーキ。とてもさわやかな風味のケーキですが、かならず(日本の)国産レモンを使って作りましょう。焼きあがったあとにレモン汁と大量のシナモンシュガーを振りかけるので、甘さを調節できます。「きゅっとすっぱい」の原文はpucker up。唇がきゅっとすぼまるという意味なので、かなりすっぱい感じですね。

 どちらも編集Yさんに大好評でした。クッキーはレシピの半量で作ればちょうど二ダースできるので手ごろな量かと。ケーキはレシピどおりに作ると大きめの角型一個分ですが、切り分けて冷凍しておけるので便利ですよ。

 おっと! ついお菓子のことばかり紹介してしまいましたが、当然ストーリーにも注目です! なんたって前作『デビルズフード・ケーキが真似している』は「ええーっ、ここで終わり!?」というじらし度MAXな終わり方でしたからね〜。いやほんと、お待たせしました。ハンナとボーイフレンドのノーマンの関係はあのあとどうなるのか、ぜひ心ゆくまでつづきをお楽しみいただければと思います。もちろん初めて読む方にもなんとなくわかるようになっていますので安心して読んでくださいね。

 ハンナとノーマンとマイクの三角関係はどうなるのか? 食わせものの新キャラがそこにどう関わってくるのか? みんなちょっと食べすぎじゃないのか? 小さい町なのに殺人事件が起こりすぎじゃないのか? いろいろ気になることはありますが、のんびりお菓子をつまみながら読むのにぴったりの作品なのはたしか。みなさまのおやつのお供(?)にしていただければうれしいです。

■編集者のコメント

毎年春をすぎると「<お菓子探偵シリーズ>の最新刊は何月ですか?」という問い合わせを編集部にたくさんいただきます。この大人気コージー・ミステリーはもはや秋の風物詩! シリーズが15作に到達し、ますますパワーアップしているハンナの活躍を今年もじっくりとお楽しみください。——編集A(ヴィレッジブックス)