アメリカのベストセラー・ランキング

2月15日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE GIRL ON THE TRAIN    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。

2. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Stay

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。

3. PRIVATE VEGAS    New!

James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マキシン・ペトロ

元海兵隊のジャック・モーガンが民間調査会社“プライベート”を率いて難事件に取り組むシリーズの第5作。女性ばかりを狙った誘拐事件が発生するが、警察による捜査は外交特権に阻まれる。自身も命を狙われながら、ジャックは殺人嗜好者を追う。

4. GRAY MOUNTAIN    Up

John Grisham ジョン・グリシャム

リーマン・ショックに揺れるアメリカ。新人弁護士のサマンサは、ウォール・ストリートの大手法律事務所からヴァージニア州の田舎町の法律相談所に移籍させられるが、そこで弁護士として成長しながら、悪辣な巨大石炭産業に立ち向かう。

5. SAINT ODD    Down

Dean Koontz ディーン・クーンツ

死者の霊が見える青年オッド・トーマスの冒険を描くサイキック・スリラー・シリーズ第7作。悪魔崇拝のカルト集団が大量殺人を計画していることを予知夢により察知したオッドは、数年ぶりに故郷の町ピコ・ムンドに戻る。人気シリーズの完結編。

6. THE BOSTON GIRL    Up

Anita Diamant アニータ・ディアマント

1900年、ボストンのユダヤ系一家に生まれたアディは、80代半ばを迎えたある日、孫娘に自分の人生を語りはじめる。家族の絆や仕事、フェミニズム——自立を求め、激動の世紀を生きぬいた女性の姿が情感豊かに描かれる。『赤い天幕』で知られる著者の第5作。

7. FIRST FROST    Down

Sarah Addison Allen サラ・アディソン・アレン

アメリカ南部の田舎町を舞台に、不思議な力を持つクレアと妹シドニーの暮らしを描いたシリーズの第2作。前作から10年後、ふたりは結婚して母親になり、クレアは砂糖漬け菓子の店を繁盛させていた。初霜がおりたころ、姉妹に悩める冬が訪れる。

8. THE ESCAPE    Up

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

米陸軍犯罪捜査官ジョン・プラーのシリーズ第三作。反逆罪で終身刑に服していたジョンの兄が厳重警備の刑務所から脱獄した。調査に乗りだしたジョンは、どうやら事件には裏があるようだと気づく。真実が明るみに出ると困る人間が兄の命を狙っているらしい。

9. BIG LITTLE LIES    Up

Liane Moriarty リアン・モリアーティ

オーストラリアの小さな町で、同じ幼稚園に子どもを通わせるママ友たち。冒頭でそのうちのひとりが死ぬことが明かされる。誰が、そしてなぜ——“THE HUSBAND’S SECRET”でブレイクした著者による新作ドメスティック・サスペンス。

10. STATION ELEVEN    Up

Emily St. John Mandel エミリー・セントジョン・マンデル

新型インフルエンザのパンデミックにより、人口が激減し文明の崩壊した世界。旅回りの一座に属する女優キルステンが数年ぶりにある町を訪れると、そこは不気味な預言者に支配されていた。邦訳『ステーション・イレブン』(小学館文庫)が刊行されたばかりの新感覚ポスト・アポカリプスSFサスペンス。

【まとめ】

動きが少ない週でした。3位にパタースンのジャック・モーガン・シリーズの新作がランクインしています。“自己消滅”する電子本を1000部限定で配信するという斬新な企画でも注目を集めた作品です。ページをめくるたびに前のページが消えていき、さらには読みはじめてから24時間が経つと本全体が消える仕掛けになっていました。密度の濃い読書体験を提供するのが目的だったようですが、当然ながら賛否は分かれています。“STATION ELEVEN”は昨年末に14位に登場してからずっと惜しいところでトップテン入りを逃していましたが、邦訳の出版に合わせるかのように、ここに来て10位にランクインしています。

青木創(あおき はじめ)

フィクション翻訳とノンフィクション翻訳の両方を手がけています。P・メイの『さよなら、ブラックハウス』の続編『忘れゆく男』が3月に刊行予定です。そのほかの訳書に、D・ワッツ『偶然の科学』、A・フランセス『〈正常〉を救え』など。