3年目にはいりました東東京読書会、1月17日(土)に第8回を開催しました。今回は冒頭の自己紹介の時間からすでに課題書についての感想・意見が出る出る。参加者さんが“語る!語る!”の会(回)となりました。

 第8回の課題書は『狼の王子』(クリスチャン・モルク作/堀川志野舞訳/早川書房刊)。ダブリン近くの町でセンセーショナルかつ謎に満ちた監禁殺人事件が起きていたことが明らかになり、その関係者の日記を入手した郵便局員ナイルが事件の真相に迫っていくというストーリーです。

 シャナヒー(ゲール語で“語り部”の意味)としてアイルランド各地を渡り歩く悪魔的な男、ジム、彼に誘惑される小学校教師フィオナ、彼女の双子の妹ロイシンとイーファ、そして叔母のモイラが主な登場人物です。

「ドハマリ!」という方もいたいっぽう、「(まわりに)オススメする気にはならない」という方もいたりと、作品に対する意見は大きく分かれました。ネタバレにならない範囲でみなさんのコメントを一部ご紹介すると——。

「つかみはOK」「導入・構成はうまい」

「フィオナたちの姉妹愛がうらやましい」「自分もこういうきょうだいが欲しかった」

「登場人物のキャラをもっと立ててほしかった」「なんだかアニメに出てくる少女みたい」

「ナイルの成長物語として成功している」

「作中作がおもしろい」「ダークファンタジーという印象」

「ミステリとしてはもっとしかけやひねりが欲しい」

「いっそ警察は介入させないほうがよかったのでは?」

「ジムはそこまで魅力的か???」

 ジムについては、本会で世話人のひとりから“ジム=海老蔵”説、二次会で参加者さんからジョナサン・リース=マイヤーズ説が出て、どちらもそれぞれ支持者を獲得していた模様です(笑)。

 賛否両論出て、とても活発な意見交換の場となった今回。表の感想と裏の感想(!)を用意してきた方もいらして、とにかくみなさん感想・意見のプレゼンがうまいな〜とレポ係は感動しました。感想は最初の自己紹介のときにビシッとまとめて、あとはほかのみなさんの発言に耳を傾ける——とかね、参加のしかたも本当に人それぞれでした。

 課題書は舞台がアイルランドということで、アイルランド好きの方がご参加くださったため、硬軟とりまぜ社会背景に関する話も出ました。ディスカッションが充実した理由のひとつかと思います。こちらも一部をご紹介すると——。

「アイルランドの空気感がよく出ている」

「本作中のアイルランドは(わたしの)知っているアイルランドとちょっと違う」(←ここでも微妙に分かれる意見)

「著者が北欧出身ということで、アイリッシュアメリカンの視点に近いように思う」

「血縁重視のアイルランドでは身内に裏切られるとダメージが大きい」

「キリスト教的価値観に合わないものを妖精などに(投影)して書く伝統がある」

 アンケートを見ると、今回はディスカッションが盛りあがるあまり、いつもより「時間が足りない!」と感じた参加者さんがいらしたようですが、二次会・三次会も含めると充分語って満足してお帰りいただけたのではないかと期待しています。

 読書会は課題書、ゲストの有無、そして当日の参加メンバーによって雰囲気が毎回ちょっとずつ異なりますのでね、東東京読書会はまだ一度もという方も、前に参加したことがあるぜという方も、ぜひいらしてくださいね〜。次回は5月開催の予定です。4月にはこちらのサイトに告知が掲載されるはず。事前にツイッターで開催日や課題書を流す場合もありますのでチェキラ!

島村浩子(しまむら ひろこ)

東京の下町在住。主な訳書はロビン・スローン『ペナンブラ氏の24時間書店』、スーザン・ブロックマン『凍てつく夜のささやき』など。好きなことはミュージカル鑑賞(含む宝塚)。ゆるめのベジタリアン生活実践中。ツイッターアカウント @rhiroko

各地読書会カレンダー

これまでの読書会ニュースはこちら