アメリカのベストセラー・ランキング

3月29日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE GIRL ON THE TRAIN    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。

2. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Stay

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。

3. ENDANGERED    New!

C. J. Box C・J・ボックス

ワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケットを主人公とするシリーズの第15作。ジョーが後見していた18歳の少女が何者かに襲われ、瀕死の重傷を負う。少女と交際していたロデオのチャンピオンが容疑者として浮上するが、強固なアリバイがあった。

4. A SPOOL OF BLUE THREAD    Stay

Ann Tyler アン・タイラー

ボルティモア郊外に建つ古びた平凡な家を軸に、70代のアビーとレッドを中心としたホイットシャンク一家四世代の、愛情だけではない複雑な感情を描いたファミリードラマ。『ブリージング・レッスン』(1988年)でピューリッツァー賞を受賞した人気作家の20作目。

5. THE BURIED GIANT    Down

Kazuo Ishiguro カズオ・イシグロ

アーサー王亡きあと騎士やドラゴンや人食い鬼が棲む世界で、ブリテン人の老夫婦が息子を訪ねて、霧に覆われた地を旅する。失われた記憶、愛、戦争をめぐる物語。ブッカー賞作家イシグロの10年ぶりの長編。

6. LAST ONE HOME    New!

Debbie Macomber デビー・マッコーマー

シーダー・コーヴ・シリーズなどで知られるマッコーマーのスタンドアローンの新作。ひとりが駆け落ちしたために仲たがいしていた三姉妹が、シングルマザーや専業主婦といった境遇のちがいを乗り越え、絆を取りもどしていくさまを描く。

7. THE NIGHTINGALE    Down

Kristin Hannah クリスティン・ハンナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。

8. WORLD GONE BY    New!

Dennis Lehane デニス・ルヘイン

『運命の日』『夜に生きる』につづく、コグリン家シリーズの第3作。世界が戦火に呑みこまれていた1943年、ジョー・コグリンはマフィアの相談役(コンシリエーレ)となり、ふたたび富を手にしていたが、何者かに命を狙われていることを知る。

9. THE ASSASSIN    Down

Clive Cussler and Justin Scott クライブ・カッスラー&ジャスティン・スコット

私立探偵アイザック・ベル・シリーズの第8作。1905年、政府の要請を受けたヴァン・ドーン探偵社がロックフェラー傘下の石油会社を調査していたところ、何者かが凄腕のスナイパーを使って重要な証人を殺害し、精油所を爆破する。

10. PRODIGAL SON    Down

Danielle Steel ダニエル・スティール

良い子と悪い子——幼少から対照的だった双子の兄弟。生家を離れたピーターは投資家として築いた地位を失って帰郷し、町医者を営むマイクルと20年ぶりに再会する。わだかまりが緩んだのも束の間、母の日記が疑念を揺り起こし、双子の善と悪を塗り替えていく。

【まとめ】

ボックスやルへインによる人気シリーズの新作がランクインしましたが、1位と2位は揺るがずに終わっています。2位のドーアはベストセラーリスト入りがこれで通算45週となり、50週も見えてきました。トップテン外では、ツーリスト・シリーズなどのスパイ・スリラーを手がけるオレン・スタインハウアーの新作“ALL THE OLD KNIVES”が15位にランクインしています。

青木創(あおき はじめ)

フィクション翻訳とノンフィクション翻訳の両方を手がけています。P・メイの『さよなら、ブラックハウス』の続編『忘れゆく男』がこの3月に刊行されました。そのほかの訳書に、D・ワッツ『偶然の科学』、A・フランセス『〈正常〉を救え』など。