アメリカのベストセラー・ランキング

4月5日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE GIRL ON THE TRAIN    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。

2. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Stay

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。

3. NYPD RED 3    New!

James Patterson and Marshall Karp ジェイムズ・パタースン、マーシャル・カープ

ニューヨーク市警の特命捜査班“レッド”所属のザック・ジョーダンとカイリー・マクドナルドの男女コンビが活躍するシリーズの第3作。大富豪の家のガレージで運転手の生首が発見され、捜査に乗りだすザックとカイリー。やがて大富豪の十代の息子が行方不明になる。

4. A DANGEROUS PLACE    New!

Jacqueline Winspear ジャクリーン・ウィンスピア

戦間期のイギリスを舞台に女探偵メイジー・ダブズの活躍を描くシリーズの第11作。1937年、インドからイギリスへ戻る途中に英領ジブラルタルで船をおりたメイジーは、スペイン内戦の難民が押し寄せる同地で、ユダヤ人カメラマンの殺人事件に遭遇する。

5. A SPOOL OF BLUE THREAD    Down

Ann Tyler アン・タイラー

ボルティモア郊外に建つ古びた平凡な家を軸に、70代のアビーとレッドを中心としたホイットシャンク一家四世代の、愛情だけではない複雑な感情を描いたファミリードラマ。『ブリージング・レッスン』(1988年)でピューリッツァー賞を受賞した人気作家の20作目。

6. THE BURIED GIANT    Down

Kazuo Ishiguro カズオ・イシグロ

アーサー王亡きあと騎士やドラゴンや人食い鬼が棲む世界で、ブリテン人の老夫婦が息子を訪ねて、霧に覆われた地を旅する。失われた記憶、愛、戦争をめぐる物語。ブッカー賞作家イシグロの10年ぶりの長編。邦訳が『忘れられた巨人』として早川書房より4月下旬に刊行予定。

7. ENDANGERED    Down

C. J. Box C・J・ボックス

ワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケットを主人公とするシリーズの第15作。ジョーが後見していた18歳の少女が何者かに襲われ、瀕死の重傷を負う。少女と交際していたロデオのチャンピオンが容疑者として浮上するが、強固なアリバイがあった。

8. THE NIGHTINGALE    Down

Kristin Hannah クリスティン・ハンナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。

9. THE ASSASSIN    Stay

Clive Cussler and Justin Scott クライブ・カッスラー&ジャスティン・スコット

私立探偵アイザック・ベル・シリーズの第8作。1905年、政府の要請を受けたヴァン・ドーン探偵社がロックフェラー傘下の石油会社を調査していたところ、何者かが凄腕のスナイパーを使って重要な証人を殺害し、精油所を爆破する。

10. LAST ONE HOME    Down

Debbie Macomber デビー・マッコーマー

シーダー・コーヴ・シリーズなどで知られるマッコーマーのスタンドアローンの新作。ひとりが駆け落ちしたために仲たがいしていた三姉妹が、シングルマザーや専業主婦といった境遇のちがいを乗り越え、絆を取りもどしていくさまを描く。

【まとめ】

3位と4位に新作が初登場しました。3位は常連ジェイムズ・パタースンの〈NYPDレッド〉シリーズ最新作。パタースンは当連載が開始された昨年7月以降、単著・共著含めて5作で延べ22回もベストテン入りする多作&人気ぶりです。4位のメイジー・ダブズ・シリーズは第1作『夜明けのメイジー』のみ邦訳されています。またベストテン外の16位には、詩人として知られるジル・アレクサンダー・エスバウムの処女小説“HAUSFLAU”が入りました。

満園真木(みつぞの まき)

東京在住の翻訳者。最新訳書『ステーション・イレブン』(エミリー・セントジョン・マンデル著)がアメリカの文学賞ペン/フォークナー賞の最終候補となりました。同じく最終候補となった全米図書賞は惜しくも受賞を逃した本作ですが、今度はどうなることか……4月7日の発表が待たれます。訳書はほかにダン・T・セールベリ『モナ 聖なる感染』、ベリンダ・バウアー『ラバーネッカー』など。