アメリカのベストセラー・ランキング

5月10日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. MEMORY MAN    New!

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

フットボールの試合中に頭部を強打して以来、どれほど些細な事柄もけっして忘れられない超記憶症候群になってしまったデッカー。刑事として人生を送っていたが、何者かに妻子を殺害される悲劇に遭い、みずからの能力を用いて真相を突き止めていく。

2. THE GIRL ON THE TRAIN    Down

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。

3. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Stay

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。

4. THE BONE TREE    New!

Greg Iles グレッグ・アイルズ

“Natchez Burning”につづく、アメリカ南部の人種差別を題材にした3部作の第2部。元検事のペン・ケイジは、アフリカ系アメリカ人の看護師を殺害した容疑をかけられて逃亡した父親を救うべく、クー・クラックス・クランと対決する。

5. GOD HELP THE CHILD    New!

Toni Morrison トニ・モリスン

1993年にアフリカ系アメリカ人初のノーベル文学賞を受賞した著者が、はじめて現代を舞台にして描いた小説。肌の色が薄い母と濃い娘。母は娘を拒み、娘は心に深い傷を負う。娘が美しく成長して経済的に成功してからも、その傷は癒えることなく残りつづける。

6. THE LIAR    Down

Nora Roberts ノーラ・ロバーツ

亡くなった夫は嘘つきだった。多額の借金とともに遺された妻シェルビーは、夫の金庫から複数の名義のIDを発見する。娘を連れてテネシーの田舎町に帰郷するシェルビーだが、なぜか次々に危険に見舞われ……。ロマンスの女王が放つ新作ロマンティック・サスペンス。

7. EVERY FIFTEEN MINUTES    Down

Lisa Scottoline リザ・スコットライン

精神科医エリックは、強迫性障害を抱える少年の担当医となる。やがて少年が執着を示していた少女が殺害され、エリックは姿を消した少年の行方を追うが……。『虚偽証人』などのリーガル・サスペンスで知られるベストセラー作家による心理サスペンス。

8. THE STRANGER    Down

Harlan Coben ハーラン・コーベン

幸せな家庭と仕事にめぐまれ、完璧な人生を歩んでいた主人公。謎の男と出会ったことをきっかけに妻の秘密を知り、そこから何もかもが夢幻だったかのように崩れ去っていく。マイロン・ボライター・シリーズの著者による、スタンドアローンの新作スリラー。

9. THE NIGHTINGALE    Down

Kristin Hannah クリスティン・ハンナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。

10. AT THE WATER’S EDGE    Down

Sara Gruen サラ・グルーエン

『サーカス象に水を』の著者による新作長編。父の不興を買った名家の娘マデリンと夫エリスは、ネス湖の怪獣発見を目指す友人ハンクとともにスコットランド高地へ赴く。戦時の困窮下を美しい小村で暮らすうち、やがてマデリンは外の世界の広さに気づきはじめる。

【まとめ】

13週にわたってトップを守りつづけていたホーキンズがついに2位に転落、バルダッチの新作が首位を奪取しました。主人公が患う超記憶症候群は、世界で数例しか確認されていないながらも実在する症例で、記憶の対象が特定の分野にかぎられるサヴァン症候群と異なり、文字どおり何もかも覚えているのが特徴だそうです。トップテン圏外では、アン・ライスがA・N・ロクロール名義で発表している眠り姫シリーズの新作“Beauty’s Kingdom”が12位にランクインしました。 

青木創(あおき はじめ)

フィクション翻訳とノンフィクション翻訳の両方を手がけています。P・メイの『さよなら、ブラックハウス』の続編『忘れゆく男』が3月に刊行されました。そのほかの訳書に、D・ワッツ『偶然の科学』、A・フランセス『〈正常〉を救え』など。