アメリカのベストセラー・ランキング

7月5日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE GIRL ON THE TRAIN    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。

2. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Up

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。

3. FINDERS KEEPERS    Down

Stephen King スティーヴン・キング

昨年夏に刊行された“Mr. Mercedes”の続編。著名な作家が殺害され、未発表の小説の原稿が盗まれる。が、犯人が別の罪で刑務所に収監されているあいだに、隠してあった原稿を少年が見つける。やがて釈放された犯人は原稿が奪われたことを知り、少年を追う。

4. TOM CLANCY UNDER FIRE    New!

Grant Blackwood グラント・ブラックウッド

2013年に逝去したトム・クランシーのジャック・ライアン・シリーズを共著者が受け継いだ最新作。テヘランで再会した旧友が、ひとつの鍵と謎めいたメッセージを残して姿を消した。友にかけられた疑いを晴らすため、ジャック・ライアン・ジュニアは真実を追って、イラン、コーカサス地方、そしてロシアが狙う紛争地域へ向かう。

5. THE PRESIDENT’S SHADOW    New!

Brad Meltzer ブラッド・メルツァー

秘密結社カルパー・リング・シリーズ第3作。国立公文書館で働くビーチャー・ホワイトは、ジョージ・ワシントンが創設した大統領を守るための秘密結社のメンバーでもある。ホワイトハウスのバラ園で人間の腕が発見され、ビーチャーはそこに隠されたメッセージの意味を探り、やがてそれが大統領ではなく自分自身に宛てられたものだと気づく。

6. THE RUMOR    New!

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダーブランド

ナンタケット島に住む作家のマデレンと庭造りに夢中な親友グレイスは、夫や子供たちと理想的な生活を送っていた。しかし、この夏はふたりの身辺によからぬ噂がたち、幸せな生活に危機が訪れる。噂を打ち消そうにも、現実は噂以上に厳しい状況に。ナンタケット在住の“サマー・ノベルの女王”と呼ばれる人気作家の最新作。

7. RADIANT ANGEL    Down

Nelson DeMille ネルソン・デミル

ジョン・コーリー・シリーズの第7作。イエメン人テロリストとの決着後、連邦テロリスト対策特別機動隊(ATTF)を離れたコーリー。不穏な動きを見せる元諜報員のロシア人を監視していたところ、マンハッタンを破壊しようとする企みが浮かびあがる。

8. COUNTRY    New!

Danielle Steel ダニエル・スティール

スキーリゾートで夫が急死し、それまで夫と子供たちのためにすべてを捧げてきたステファニーは、懸命に自分を取りもどそうとする。そしてラスベガス、グランド・キャニオンへ旅をするうち、カントリー・ミュージックのスーパースターと恋に落ちる。

9. IN THE UNLIKELY EVENT    Down

Judy Blume ジュディ・ブルーム

1950年代はじめ、ニュージャージーの小さな町で、飛行機の墜落事故が立てつづけに三件も起こる。ありえない事件に住民は動揺するが、そこに自分なりの意味を見いだそうとする。ヤングアダルトに人気の作者が、故郷の町で実際に起こった事件を題材にした大人向けの小説。

10. MEMORY MAN    Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

フットボールの試合中に頭部を強打して以来、どれほど些細な事柄もけっして忘れられない超記憶症候群になってしまったデッカー。刑事として人生を送っていたが、何者かに妻子を殺害される悲劇に遭い、みずからの能力を用いて真相を突き止めていく。

【まとめ】

トップ2強は相変わらずで、“The Girl on the Train”はランクイン23週目、“All the Light We Cannot See”は59週目となりました。今週はベストテン内に4作品が新登場。4位のグラント・ブラックウッドは海軍出身のスリラー作家で、トム・クランシー同シリーズの『デッド・オア・アライヴ』や、クライブ・カッスラー『スパルタの黄金を探せ!』などの共著者でもあります。5位のブラッド・メルツァーは、カルパー・リング・シリーズの先行2作 “The Fifth Assassin”“The Inner Circle”は未訳ながら『運命の書』『偽りの書』などが邦訳刊行され、ヒストリーチャンネルに〈ブラッド・メルツァーの暗号解読〉というシリーズ番組を持つなど、多才な作家です。

佐藤桂(さとう けい)

神奈川在住の翻訳者です。『エジプト十字架の秘密』(越前敏弥さんとの共訳)、Amazon Kindle Singles(電子書籍)『スノーデンは正義の味方なのか? 情報戦争を読み解く』など。先日の〈ことばの魔術師 翻訳家・東江一紀の世界〉東京トークイベントは、とても中味の濃い、素敵な会でした。いただいた小冊子をガイドに、この夏は東江先生の本をたくさん読み返そうと思います。