アメリカのベストセラー・ランキング

4月26日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. WHERE THE CRAWDADS SING    Stay

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 2. AMERICAN DIRT    Up

Jeanine Cummins ジャニーン・カミンズ

アカプルコで書店を営むリディアは、麻薬カルテルのボスの怒りを買い、夫や母親をはじめ家族16人を殺される。8歳の息子ルカとともに生き延びるため、彼女はメキシコを縦断してアメリカを目指す。邦訳『夕陽の道を北へゆけ』(宇佐川晶子訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 3. THE BOY FROM THE WOODS    Up

Harlan Coben ハーラン・コーベン

30年前にニュージャージー州の森で野生児として発見され、故郷も親の顔も知らないワイルド。田舎町で探偵業を営む彼のもとに、旧知の敏腕弁護士ヘスターから、行方不明の少女を探してほしいと依頼が入る。両親は娘の悪ふざけだと楽観的だが、捜索開始から4日目、人間の指が送りつけられる。

 

  1. 4. REDHEAD BY THE SIDE OF THE ROAD    New!

Anne Tyler アン・タイラー

ボルティモアでアパートの管理人をしながらコンピュータ修理業を営む43歳のマイカ。地味で決まりきった彼の日常は、恋人が家からの立ち退きに直面し、さらには自分の息子と称する少年が転がりこんできたことで大きく乱されていく。

 

  1. 5. THE SILENT PATIENT    Up

Alex Michaelides アレックス・マイクリーディーズ

有名画家のアリシア・ベレンソンは完璧な人生を送っているようにみえた。夫のゲイブリエルは人気のファッション・カメラマンで、住まいはロンドンの一等地に建つ壮大な家だ。しかしある夜、仕事から帰ってきたゲイブリエルの顔に向け、アリシアは5発の銃弾を撃ちこむ。それ以来、彼女はいっさい、口をつぐむのだった。邦訳『サイコセラピスト』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、坂本あおい訳)が刊行ずみ。

 

  1. 6. VALENTINE    Down

Elizabeth Wetmore エリザベス・ウェットモー

石油ブームに沸く1970年代のテキサス。オデッサという小さな町で、14歳のメキシコ系少女が採掘作業員から凄惨な暴行を受ける事件が起こり、住民たちのあいだに亀裂が生じる。5人の女の目を通して、当時の暴力、貧困、人種差別、性差別が描き出される。

 

  1. 7. THE GLASS HOTEL    Stay

Emily St. John Mandel エミリー・セントジョン・マンデル

ヴァンクーヴァー島の五つ星ホテルで働く女性バーテンダーのヴィンセントは、オーナーのジョナサンに見そめられて結婚する。ところがジョナサンが出資金詐欺で逮捕され、やがてヴィンセントはコックとしてコンテナ船に乗りこむ。兄のポールや夫のジョナサンなど、ヴィンセントに関係ある人物の人生が語られていく。

 

  1. 8. THE BOOK OF LOST FRIENDS    New!

Lisa Wingate リサ・ウィンゲイト

南北戦争後の1875年、元奴隷の少女ハニーは生き別れになった家族を探すため、元奴隷主の娘ラヴィニアとジュノー・ジェーンとともにルイジアナからテキサスへと旅をする。そのおよそ1世紀後の1987年、ルイジアナ州南部の貧しい地区に赴任した新人教師のベニーは、かつてのプランテーション・ハウスに眠っていた1冊の本から、ハニーたち3人の埋もれた歴史を発見する。

 

  1. 9. THE GIVER OF STARS    Stay

Jojo Moyes ジョジョ・モイーズ

1930年代、アメリカ人と結婚したアリスは、英国での窮屈な人生から抜け出せるものと考えていたが、ケンタッキー州の小さな町へ移っても、結局は息の詰まる毎日がつづいた。しかしアリスは山奥まで馬で本を届ける巡回図書館員として働きはじめ、同僚の女性4人と友情をはぐくむようになる。実話にもとづく物語。

 

  1. 10. TEXAS OUTLAW    Down

James Patterson and Andrew Bourelle ジェイムズ・パタースン、アンドリュー・ブレル

テキサスレンジャーを主人公とするローリー・イェイツ・シリーズ第2作。アリアナという刑事の要請により、ローリーはテキサス西部の田舎町に派遣される。アリアナは事故死したとされる地元の議員が実は殺害されたのではないかと疑っており、ローリーは捜査に乗り出す。

 

【まとめ】

4位と8位に新作が初登場しました。4位はピューリッツァー賞受賞作『ブリージング・レッスン』や『ノアの羅針盤』など、ユーモアをまぶしたヒューマン・ストーリーで知られるアン・タイラーの第23作。8位はベストセラーとなった著者の前作“BEFORE WE WERE YOURS”と同様、実話をもとにしたヒストリカル・ノヴェルということです。またベストテン外の11位には、映画化もされた〈ダイバージェント〉シリーズ(邦訳は『ダイバージェント 異端者』『ダイバージェント2 叛乱者』『ダイバージェント3 忠誠者』の三部作が刊行されています)で知られるベロニカ・ロスの“CHOSEN ONES”が、14位にはホラー作家で脚本家でもあるグレイディ・ヘンドリックスの“THE SOUTHERN BOOK CLUB’S GUIDE TO SLAYING VAMPIRES”がランクインしています。

 

 

    1. 満園真木(みつぞの まき)

      東京在住の翻訳者。4月30日に最新訳書『アメリカン・プリズン――潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス』(シェーン・バウアー著、東京創元社)が刊行されます。ルイジアナ州の民営刑務所で刑務官として働いたジャーナリストによる衝撃の潜入ルポです。訳書はほかにアレックス・リーヴ『ハーフムーン街の殺人』(小学館文庫)、ヴィンセント・ディ・マイオ、ロン・フランセル『死体は嘘をつかない 全米トップ検死医が語る死と真実』(東京創元社)、バリー・ライガ〈さよなら、シリアルキラー〉シリーズ(創元推理文庫)など。