アメリカのベストセラー・ランキング

9月13日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. X    New!

Sue Grafton スー・グラフトン

私立探偵キンジー・ミルホーン・シリーズ24作目。“A IS FOR ALIBAI”から“W IS FOR WASTED ”まで続いてきたタイトル(邦訳は『ロマンスのR』まで刊行)が、今回は“X”の1文字に。亡き仕事仲間の古いファイルに紛れた未解決事件の情報——出所後に失踪した息子を捜す依頼人の嘘——近所に越してきた老夫婦の隠し事。絡まる複数の謎をキンジーが追う。

2. GO SET A WATCHMAN    Down

Harper Lee ハーパー・リー

ピュリッツアー賞受賞作で映画にもなった『アラバマ物語』(1960年刊行、原題は“TO KILL A MOCKINGBIRD”)の著者による半世紀ぶりの新作。『アラバマ物語』の語り手の女性、スカウトのその後を描いたもので、1950年代に執筆された草稿が最近見つかり、出版の運びとなった。

3. THE NATURE OF THE BEAST    New!

Louise Penny ルイーズ・ペニー

ガマシュ警部シリーズ11作目(第4作『スリー・パインズ村と警部の苦い夏』まで邦訳あり)。化け物や怪物を見たと騒いではオオカミ少年扱いされていた9歳のローランが失踪し、空想話のひとつが本当だった可能性に村は戦慄する。ケベック州警察を退職し、静かな引退生活をはじめていたガマシュ元警部が深い森で見たものは……。

4. THE GIRL ON THE TRAIN    Down

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。『ガール・オン・ザ・トレイン(仮題)』(池田真紀子訳)講談社文庫より2015年10月15日発売予定。

5. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Down

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。

6. THE TAMING OF THE QUEEN    New!

Philippa Gregory フィリッパ・グレゴリー

『ブーリン家の姉妹』を皮切りとするテューダー朝シリーズの7作目。生涯で6人の妻を娶ったヘンリー8世の最後の妃に迎えられ、摂政として宮廷をとりしきり、王の死後も生き延びた才媛の王后キャサリン・パーの物語。シリーズ中4作品が邦訳刊行済みで、史実上の時系列では『悪しき遺産』(上・下)の次が本作となる。

7. SECONDHAND SOULS    New!

Christopher Moore クリストファー・ムーア

ユーモア小説の鬼才による新作。“A DIRTY JOB”の続編にあたる。前作で死神にされ、体長14インチの人形に押し込められて、乗り換え用のマシな肉体を物色中のチャーリー。サンフランシスコで死人の魂が回収できない異常事態が発生し、おかしな仲間と原因究明に乗りだすが……。邦訳は『悪魔を飼っていた男』と『アルアル島の大事件』の2作が刊行されている。

8. FRICTION    Down

Sandra Brown サンドラ・ブラウン

テキサスレンジャーのクロフォード・ハントは四年前に妻を亡くした。さらに追い打ちをかけるようにデスクワークに左遷され、五歳の娘は妻の両親に引き取られてしまった。娘の親権を勝ち取るために裁判所に赴いた彼のまえに魅力的な女性裁判官と覆面強盗が現われ……? モデル、レポーターなどさまざまな経歴を持つ希代のストーリーテラー、サンドラ・ブラウンの最新ロマンティック・サスペンス。

9. ALERT    Down

James Patterson and Michael Ledwidge ジェイムズ・パタースン、マイクル・レドウィッジ

ニューヨーク市警刑事マイケル・ベネット・シリーズの第8作。不可解なハイテク攻撃や地下鉄駅爆破につづき、市長が狙撃された。かつてないほどの脅威にさらされるニューヨークの街を守るため、ベネットはFBIのエミリー・パーカーとともに捜査に乗りだす。

10. THE NIGHTINGALE    Stay

Kristin Hannah クリスティン・ハンナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。

【まとめ】

1位、3位、6位、7位に新作がランクイン。大きな変動の見られた週でした。1位のキンジー・ミルホーン・シリーズは1作目『アリバイのA』の本国上梓が1982年。33年にわたって書き続けられ、いよいよアルファベット2文字を残すのみとなっています。3位のルイーズ・ペニーはカナダのクリスティーと称される本格ミステリーの書き手。ガマシュ警部シリーズでアガサ賞長編賞を4年連続受賞したほか、多数の賞を獲得しつづけています。ベストテン外では短編集“A MANUAL FOR CLEANING WOMEN”が発売直後の先週18位から上がって15位にランクイン。作者ルチア・ベルリンはアラスカに生まれ、少女時代をチリで過ごした短編作家で、グレース・ペイリーやアリス・マンロー、レイモンド・カーヴァーと引き比べられながら、晩年は長く病床につき、2004年に68歳で亡くなっています。

飯干京子(いいぼし きょうこ)

関西在住。翻訳者/TOEIC講師。訳書にグレッグ・ルッカ『逸脱者』『回帰者』など。大阪翻訳ミステリー読書会の世話人メンバー。10月2日(金)お仕事帰りの時間帯に第16回大阪読書会を開催いたします。季節にちなんで、課題書はロバート・B・パーカーの『初秋』です。どうぞ奮ってご参加ください。