アメリカのベストセラー・ランキング

10月11日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. COME RAIN OR COME SHINE    New!

Jan Karon ジャン・カロン

ノース・カロライナの架空の田舎町ミットフォードを舞台に、住民たちの悲喜こもごもを描いたヒューマンドラマ・シリーズ第11作。主人公の牧師夫妻の養子ドゥーリーが動物病院を開業し、ソウルメイトでもあるレイスと結婚することに。慎ましくもあたたかい、手作りの結婚式を計画する。

2. MAKE ME    Down

Lee Child リー・チャイルド

元アメリカ陸軍憲兵隊捜査官のジャック・リーチャーが活躍するシリーズの第20作。流れ者の暮らしをつづけるリーチャーは、オクラホマの田舎町で元FBI捜査官のミシェルと知り合う。そしてその町で行方不明になったミシェルの友人の捜索を手伝うことになるが、住民は不自然なまでに非協力的だった。

3. THE GIRL IN THE SPIDER’S WEB    Down

David Lagercrantz ダビド・ラーゲルクランツ

故スティーグ・ラーソンによるミレニアム3部作の続編を故人と同じスウェーデンの作家が書き継いだもの。スティーグ・ラーソンは4部目に着手していたが、その草稿は今作に反映されていない。とはいえ、リスベットとミカエルは引きつづき登場し、今回リスベットはNSAのシステム侵入に挑む。

4. GO SET A WATCHMAN    Stay

Harper Lee ハーパー・リー

ピュリッツアー賞受賞作で映画にもなった『アラバマ物語』(1960年刊行、原題は“TO KILL A MOCKINGBIRD”)の著者による半世紀ぶりの新作。『アラバマ物語』の語り手の女性、スカウトのその後を描いたもので、1950年代に執筆された草稿が最近見つかり、出版の運びとなった。

5. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Stay

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。

6. THE GIRL ON THE TRAIN    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。『ガール・オン・ザ・トレイン』(池田真紀子訳、講談社文庫)が10月15日に発売予定。

7. X    Up

Sue Grafton スー・グラフトン

私立探偵キンジー・ミルホーン・シリーズ24作目。“A IS FOR ALIBAI”から“W IS FOR WASTED ”まで続いてきたタイトル(邦訳は『ロマンスのR』まで刊行)が、今回は“X”の1文字に。亡き仕事仲間の古いファイルに紛れた未解決事件の情報——出所後に失踪した息子を捜す依頼人の嘘——近所に越してきた老夫婦の隠し事。絡まる複数の謎をキンジーが追う。

8. FATES AND FURIES    Down

Lauren Groff ローレン・グロフ

大学時代に出会い、卒業後すぐに結婚したロットとマティルドの夫婦。俳優を目指し挫折するも、劇作家として成功したロットは、陰ながら支えつづけてくれたマティルドに感謝しているが……夫と妻、それぞれの視点から語られる23年の結婚生活の真実とは。2015年全米図書賞候補作。

9. PURITY    Up

Jonathan Franzen ジョナサン・フランゼン

ピュリティは父親がだれなのか知らない。母が昔のことを話そうとしないからだ。大学を出たばかりで、多額の学資ローンを抱え、夢もなく、仕事も恋もうまくいかないピュリティは、自分の過去がわかればすべてが好転するのではないかと考える。そんなときに怪しげな社会活動に携わるドイツ人の女が妙な申し出をしてきて——

10. DEVOTED IN DEATH    Down

J. D. Robb J・D・ロブ

マンハッタンの路地で見つかった惨殺死体には、ハートマークの中に“E & D”のイニシャルが刻まれていた。イヴは全米各地で残忍な殺人を繰り返してきたシリアルキラー・カップルを追う。イヴ&ローク・シリーズ第41作。

【まとめ】

今週はあまり大きな動きがありませんでした。そんななかで初登場1位を獲得したジャン・カロンのミットフォード・シリーズは、1994年に第1作が刊行され、これまでに邦訳は出版されていませんが、昨年秋には前作“SOMEWHERE SAFE WITH SOMEBODY GOOD”もトップテン入りを果たしている人気シリーズです。トップテン外では18位に本年のブッカー賞ロングリスト候補作のひとつ、ビル・クレッグの“DID YOU EVER HAVE A FAMILY”が入っています。

佐藤桂(さとう けい)

神奈川在住の翻訳者です。訳書に『中途の家』(越前敏弥さんとの共訳)、Amazon Kindle Singles(電子書籍)『スノーデンは正義の味方なのか? 情報戦争を読み解く』など。