『悲しみのイレーヌ』ピエール・ルメートル 橘明美訳

Travail soigné, Pierre Lemaitre

 大ベストセラーとなった『その女アレックス』。

 あの事件を追った刑事たちが立ち向かう

 史上最悪の犯罪計画とは?

 異様な手口で惨殺された二人の女。パリ警視庁のカミーユ・ヴェルーヴェン警部は部下たちと捜査を開始するが、やがて第2の事件が発生、ふたつの事件をつなぐ恐るべき共通点が浮かび上がる。警察を挑発する殺人鬼。そいつの狙いは何なのか? フランス・ミステリ界の殺人芸術家ピエール・ルメートルのデビュー作。コニャック・ミステリ大賞ほか4つのミステリ賞に輝いた悪意の傑作。

『その女アレックス』『死のドレスを花婿に』で、大胆な驚愕とツイストの技を見せつけたピエール・ルメートル。そのデビュー作がついに登場です。「アレックス事件」を追った小男のカミーユ、気のいい富豪刑事ルイ、ケチで鳴るベテラン刑事アルマンの3人に加え、放蕩者のマレヴァル刑事を加えた4人が、「アレックス事件」をしのぐ凶悪連続殺人に挑みます。

 事件は、過剰な残虐性をみせる連続女性殺し。しかも第1の事件と第2の事件の殺しの手口は、「惨殺」という以外の共通点をみせない。そんな奇妙な連続殺人をつなぐ「リンク」が、最初のフック。そこから物語は、「犯人はなぜこんな殺人をくりかえしているのか?」という謎を生んで、『その女アレックス』に劣らぬ勢いで驀進してゆきます。

 そして399ページ。

 物語も終盤にさしかかったこのページで犯人の真意が明らかになり、『その女アレックス』とも『死のドレスを花婿に』とも違う種類の逆転が、読者を襲うことになります。この悪意にみちた恐るべき「計画」。ミステリというものを考えつくした芸術家ルメートルの一世一代の大技に、驚愕の声をあげてください。

 なお、10月末から11月にかけて、著者ピエール・ルメートル氏が来日します。サイン会のほか、藤田宜永さん(東京)、中村文則さん(名古屋)、法月綸太郎さん(京都)との対談イベントが予定されています。ゴンクール賞を受賞したルメートル氏初の文芸大作『天国でまた会おう』も早川書房さんから刊行の予定です。


『スキン・コレクター』ジェフリー・ディーヴァー 池田真紀子訳

The Skin Collector, Jeffery Deaver

毒の針で刺青を刻むスキン・コレクター

——すぐには殺さない。

名探偵リンカーン・ライム、ニューヨークの地下に潜む殺人鬼を追う。

複雑巧緻に組み上げられた完全犯罪の全貌とは?

すべてを解く鍵は証拠のなかにある!

 ウォッチメイカー、獄死す——その報に愕然とするリンカーン・ライムだったが、好敵手を失ったことを噛み締める時間は与えられなかった。ニューヨークの地下で異様な変死体が発見されたのだ。被害者は毒物により謎の文字のいれずみを彫られて、中毒死していたという。「the second」。それが刻まれていた文字だった。現場からは証拠が丹念に拭い去られていたが、ひとつだけ紙片が残されていた——それは本のページの断片。かつて名探偵ライムが捜査した連続殺人「ボーン・コレクター事件」を描くノンフィクションのページ片だった。犯人は「ボーン・コレクター事件」に学び、殺人をくりかえしているのか? ライムはアメリア・サックスらとともに次の犯行を予測し、犯人の阻止をめざすが……

『ボーン・コレクター』。そして『ウォッチメイカー』。現代最高のミステリ・シリーズを代表する2つの名作です。そして今回の新作『スキン・コレクター』は、この2つの名作の血脈をつぐ野心作に仕上がりました。ニューヨークで謎の手がかりを残しながらリンカーン・ライムに挑戦するように殺人をくりかえす犯人——まさにリンカーン・ライム・シリーズの真骨頂のような作品なのです。

 サスペンスフルなのは当然のこと。ディーヴァーらしく幾重にも擬装された完全犯罪計画も緻密の極み。名探偵ライムのツンデレ加減も冴えわたり、『12番目のカード』から登場の新米刑事“ルーキー”ロナルド・プラスキーのコメディリリーフぶりも板についてきて、シリーズものとしての楽しさも、もちろん満載です。しかも今回は、いつも以上に謎解きミステリとしての充実ぶりが見事なのです! ちょっとした伏線、微細な手がかり——ちょっとした証拠が予想外の真相を導き出すミステリならではの快感が増量されています。おなじみの証拠物件リストを熟読して、スキン・コレクター事件の真相に挑んでみてください。

■リンカーン・ライム・シリーズ特設サイト開設!■

http://hon.bunshun.jp/sp/lincolnrhyme

(文藝春秋翻訳出版部・N)  

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