全国の腐女子の皆様とそうでない皆様、こんにちは! 今回ご紹介する作品は、ジャック・ソレン『ジョニー&ルー 掟破りの男たち』(訳・仁嶋いずる/ハーパーBOOKS)です。本書はカナダ出身の作者によるデビュー作なのですが、日本ではなんと版元さんもできたてほやほや。今年7月にハーレクイン社から社名を変えて、ハーパーコリンズジャパンとしてスタートし、文庫専門のレーベルとしてエンタメ系の作品を毎月刊行するとのことですので、これからが楽しみですね。

 物語は、NYの美術館で起きた猟奇殺人事件で幕を開けます。被害者の遺体に刻まれた蝶のモチーフは、近辺で発生していた連続殺人事件と同様のものでした。FBIと警察が調べにあたると、5年前を最後に活動がとだえた怪盗“君主”が捜査線上に浮かび上がります。

 “君主”の犯罪活動は、盗まれて行方がわからなくなった世界的に価値の高い美術品を、窃盗犯もしくはその黒幕から奪い返し、本来あるべき国や美術館に返却することで手数料を得ることが目的。ある意味で義賊といってもいい“君主”は、世界中の法的機関から指名手配されていましたが、その正体は謎のまま。しかし今回の事件は、“君主”をおびき出すためにしくまれた卑劣な罠だったのです。

 使われていた蝶のモチーフが“君主”のシンボルだったため、あっという間に殺人事件の犯人として追われることになった“君主”。FBIより先に“君主”を見つけたい真犯人は、一般市民を巻き込んださらに大掛かりな事件をおこしますが、世紀の大泥棒“君主”の正体は、なんと——ジョナサン(ジョニー)とルイス(ルー)ー という2人のコンビでした。

 ジョニーは元米国政府のスパイで、引退した今は、妻の忘れ形見の娘と二人暮らし。一方のルーは、かつては凄腕の特殊部隊員でしたが、現在は訳あって刑務所で服役中。と、なかなか美味しい設定のこの2人、出会いは遡ること16年前のコロンビア。軍隊をやめて違法ファイトで食いつないでいたルーの目の前に、誘拐されてきたらしいジョニーが試合相手として現れたのがきっかけで、運命のパートナーになることに。殴り合いから始まった2人の関係は、世の中をよくしていきたいという信念のもとに10年ほど続いたのですが、ある理由で解散せざるをえなくなります。その後音信不通になっていた2人が、この事件で再会することになるのですが……。

 作者のソレンさん、絶対に狙ってますよね!!!

 としか思えないほど、やたら2人がいちゃいちゃ(どっちかというと肉体的よりも精神的に)する場面が続出。5年ぶりの再会シーンでは、玄関先に突然現れたルーに飛びついたジョニーを、しっかり抱きしめ返すルー。

「ご近所がおれたちの結婚祝いを考えはじめる前に中に入れてくれ」

 なんてルーのジョークにジョニーが相好を崩したりとか、一部の読者なら「あーもう遠慮しないでそのままくっついちゃってくださいよ!」などと思うわけですが、“君主”萌えの女性ジャーナリストとか、悪の組織で手助けをしてくれる女性とかも出てくるので、なかなかそう上手くはいかないわけですね。<なにか間違っている

 大都会NYに始まった2人の挑戦は、ジャングルに囲まれた謎の秘密基地でクライマックスを迎えます。“君主”を狙う悪の大富豪の目的は何か? ジャーナリストの秘密は? そして現役を退いていた2人は勘を取り戻して無事に任務を達成できるのか? その答えは本書で!

 最後に、著者本人による妄想(?)キャスティングは——

 ジョニー:スコット・バクラ

 ルー:マーク・ヴァレー

 エミリー:ジェシカ・チャスティン

 悪の富豪:ジェレミー・アイアンズ

 ——だそうです。ちょっと渋いかなあw

 そして男2人といえば! 11月14日公開の『コードネーム U.N.C.L.E.』ですよ!!!


D

 ミステリファンの方々ならご存じのとおり、オリジナルは60年代のTVシリーズ『0011 ナポレオン・ソロ』『シャーロック・ホームズ』のガイ・リッチーが、シックスティーズの雰囲気満載に、かっこよくて、セクシーで、ハラハラしどおしの、スタイリッシュなイケメン萌え萌えスパイアクション映画を作ってくれました!!

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 初めてこのキャスティングが発表された時、イリヤがアーミー・ハマーと聞いて、「えー! イリヤがソロさんよりデカいなんてありえない!!」と呆然としましたが(注:ハマー氏なんと196センチ)、観たらまったく問題なし! というか、デカさを逆手にとったラブリーな演出が随所にちりばめられていて、ハマーファンなら萌え死に必至。ソロさんはというと、シリアスな役が多かったヘンリー・カヴィルが、肩の力を抜いていい感じにプレイボーイを演じており、これまた問答無用に素敵。

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 今回のリメイクでは、ソロさんは元軍人でなおかつ国際的大泥棒だった腕を買われ、CIAにリクルートされたという設定。もちろん女性にモテモテなのはオリジナルどおり。かたやイリヤはというと、なんとKGBのトップエージェント。格闘技はオリンピック級ですが、なにせマジメで短気すぎるのが欠点。オリジナルよりもかなり怒りっぽいイリヤになっていますが、普段着がタートルネックのセーターだなんて、TVシリーズのファンには嬉しい限りです。

 オリジナルと同様、黒髪と金髪のイケメンコンビというだけでもう勝ったも同然ですが(?)、最初に敵同士だった2人が、いやいや手を組んでスパイ任務にあたるなんて、盆と正月どころかハロウィーンとクリスマスまで一気に押し寄せてきたかのようなゴージャス設定!!!

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 さらには当時の流行の最先端を行くハイ・ファッションの数々も見所です。おまけにサブキャラクターもみんな魅力的で、事件の重要な鍵を握るドイツ人女性ギャビー(アリシア・ヴィキャンデル)も可愛いし、華麗なるイタリアン・マダム(エリザベス・デビッキ)の迫力美にもウットリ。中高年萌えの貴女なら、英国海軍から出張してきたウェーバリー(ヒュー・グラント)で癒されてくださいね。

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 今年は『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』『キングスマン』、これから公開の『007 スペクター』と、傑作スパイ映画の当たり年ともいえますが、バディ萌え案件としては『コードネーム U.N.C.L.E.』が文句なしにダントツである!と責任を持ってオススメいたします!!!

 TVシリーズつながりで、ちょっと宣伝。

『映画秘宝EX ドラマ秘宝vol.1 マニアのための特濃ドラマガイド』が11月9日に発売されました。シンジケートでもおなじみの堺三保さんもお書きになっていますが、私も英国ミステリ好きに薦めたいドラマのコラムと、作品紹介を1本書きました。ドラマ好きの皆様、どうぞよろしくお願いします!

タイトル:『コードネーム U.N.C.L.E.』

公開情報:11月14日(土)全国ロードショー

配給情報:配給 ワーナー・ブラザース映画

コピーライト:© 2015 Warner Bros.Ent. All Right Reserved.

監督:ガイ・リッチー

脚本:ガイ・リッチー&ライオネル・ウィグラム

キャスト:ヘンリー・カビル、アーミー・ハマー、アリシア・ヴィキャンデル、エリザベス・デビッキ、ジャレッド・ハリス、ヒュー・グラント

オフィシャルサイトhttp://wwws.warnerbros.co.jp/codename-uncle/

♪akira

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  BBC版シャーロックではレストレードのファン。『柳下毅一郎の皆殺し映画通信』でスットコ映画レビューを書かせてもらってます。トヨザキ社長の書評王ブログ『書評王の島』にて「愛と哀しみのスットコ映画」を超不定期に連載中。

 Twitterアカウントは @suttokobucho

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