アメリカのベストセラー・ランキング

12月13日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. CROSS JUSTICE    New!

James Patterson ジェイムズ・パタースン

男やもめの犯罪心理学者、アレックス・クロス・シリーズ第23作。いとこのステファンが身の毛もよだつような殺人事件の犯人として告訴されたことを受け、クロスは35年ぶりに、ノースカロライナ州スタークスヴィルに帰郷する。そこで彼を待っていたものは、すっかり様変わりしてしまった生まれ故郷と、自分の過去にまつわる真実だった。

2. TRICKY TWENTY-TWO    Down

Janet Evanovich ジャネット・イヴァノヴィッチ

学生部長をボコボコにして姿を消したキャンパスの人気者は、誰もが庇っているのか足取りがまるで掴めない。一方、自宅の裏で殺された男は嫌われ者で、リストに挙がる容疑者の数は増えるばかり。バウンティハンター、ステファニー・プラム・シリーズの第22作。

3. ROGUE LAWYER    Stay

John Grisham ジョン・グリシャム

ミニバーとWi-Fiを備えた革装特別仕様の防弾車に乗り、その運転手兼用心棒兼ゴルフのキャディーでもある腹心の友を相棒に、ひとの嫌がる依頼人ばかりを弁護する異端児セバスチャン・ラッド。孤高の男を主人公に据えた、リーガル・サスペンスの名手による最新作。

4. THE GUILTY    Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

ヒットマン、ウィル・ロビー・シリーズの4作目。任務をしくじった失意のロビーは、郷里で父が殺人罪に問われていることを知る。20年振りの故郷は冷淡で、父自身にも頑なに助けを拒まれながら、ロビーは定まらない標的を探し、やがてみずからの過去と対峙する。

5. THE BAZAAR OF BAD DREAMS    Down

Stephen King スティーヴン・キング

2009年以降に雑誌等で発表された短編のほか、未発表の“Mister Yummy”、“Obits”の2編を含む全20編をおさめたキングの最新短編集。

6. SEE ME    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

すさんだ過去と決別して人生をやり直すため、教師を目指しながらひっそり暮らすコリン。弁護士のマリアと出会い、愛しあうようになるが、マリアにもまた深い心の傷があった……『きみに読む物語』で知られるベストセラー作家によるロマンティック・スリラー。

7. THE MAGIC STRINGS OF FRANKIE PRESTO    Up

Mitch Albom ミッチ・アルボム

戦争孤児としてスペインで育ち、古いギターと大切な6本の弦を手に9歳でアメリカへ渡ったフランキー・プレスト。20世紀の音楽界を舞台に、天才ギタリストの波乱に満ちた不思議な人生を描いた小説。

8. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Up

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。

9. THE CROSSING    Down

Michael Connelly マイクル・コナリー

ロス市警を退職したボッシュは、異母兄弟である弁護士ミッキー・ハラーの頼みで、ハラーの依頼人に容疑がかけられている殺人事件を調査する。やがて前の職場である市警の闇に踏みこむことになり……ハリー・ボッシュ・シリーズ第20作。

10. GO SET A WATCHMAN    Up

Harper Lee ハーパー・リー

ピュリッツアー賞受賞作で映画にもなった『アラバマ物語』(1960年刊行、原題は“TO KILL A MOCKINGBIRD”)の著者による半世紀ぶりの新作。『アラバマ物語』の語り手の女性、スカウトのその後を描いたもので、1950年代に執筆された草稿が最近見つかり、出版の運びとなった。

【まとめ】

ホリデー明けの今週は新作1本が1位にランクインしました。ジェイムズ・パタースンは電子書籍で初めて100万部を売り上げた作家としてギネスに登録されている人気作家で、代表作であるアレックス・クロス・シリーズは本作で23作目。シリーズの邦訳は7作目の『血と薔薇』(2007年刊行)を最後に途絶えています。ほかには、”ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE“と”GO SET A WATCHMAN“がトップテン圏外から再浮上しました。とりわけ”ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE“は通算82週目と息が長く、邦訳が待ち遠しいです。

武藤陽生(むとう ようせい)

先日、拙訳の『スーパーベターになろう!—ゲームの科学で作る「強く勇敢な自分」』が発売されました。とかく悪者にされたり、時間の無駄として一蹴されがちなデジタルゲームですが、これはゲームをプレイすることの恩恵を説いた一冊で、ゲームにかける著者の想いがびしびし伝わってきます。たとえば、テトリスでPTSDを防ぐ方法、VRゲームを火傷治療に役立てる方法、アバターを使って運動へのモチベーションをあげる方法など、ゲーマーから見ても目から鱗が落ちるような情報のオンパレードです。ゲームで人生を台無しにしてしまったと感じている人、ゲームをプレイするたびに、もっと有意義な時間を過ごせたんじゃないか……と思ってしまうような人にはとくにお勧めです。

ぼくは俳優のイーサン・ホークが好きなもので(なかでも「ガタカ」と「ビフォア・サンライズ(恋人までのディスタンス)」は何度も観ています)、先週のこのコーナーで少し話題になった彼の新作小説”RULES FOR A KNIGHT“(今週は15位にランクイン)を読んでみました。戦いに赴く前夜にひとりの騎士が子供たちに宛てた手紙という形式の本で、この手紙は1483年の戦いで命を落としたトーマス・レミュエル・ホーク卿の書いたものだそうです。当時のコーンウォール語(イギリスのコーンウォール地方で使われた方言)で書かれたものをミズーリ大学の博士が逐語訳し、それをさらにイーサン・ホークが再構成したという体裁(どこまでが真実かはいまいちわかりませんが)で、「死」「愛」「謙虚さ」など、全20章に分かれた寓話的教訓は味わい深く、英語も平易でさらりと読めます。ところどころに挿入された、妻ライアン・ホークが修復したという鳥の絵(ホーク家のHawkeは鷹のhawkに由来しているらしく、代々、鳥と縁が深いのだとか)も見どころです。クリスマスのプレゼントとして子供に贈りたくなるような本で、こういう本を翻訳したいなと思いました。