Achtung! ドイツミステリ レポート・イベント情報等!

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 こんにちは oder こんばんは!

 ピエール・ルメートル氏来日の興奮も冷めやらぬ中発生したパリのテロ事件の記憶も生々しい昨今、皆様いかがお過ごしでしょうか? 私は年末にヨーロッパに帰郷するのでいろいろ多少気になるのですが、まあこればかりは気を揉んでも仕方が無いですね。(写真:ⒸMarei Mentlein 猫なんです)

 先般開催されました、翻訳ミステリー大賞シンジケート系のハラルト・ギルバース『ゲルマニア』読書会のレポートを、ドイツ大使館文化サイト『Young Germany』にアップしました。よろしければご覧くださいませ。

【入口では警察サスペンスだったが、出口ではボーイズラブになっていた。何故だ!】

 こういうやりすぎ系記事の掲載を黙認して下さるドイツ大使館の皆様には、常に頭の下がる思いでイッパイです。実は単にバレてないだけだったらどうしよう(笑) しかし、原著者ハラルト・ギルバース氏からあのような威力満点の返答が来るとは……人間、長生きはしてみるものです^^

 さて、読書会については上記記事で書ききれなかった所見もいくつかございますので、この場をお借りして述べてみたいと思います。

(1) 意見集約の手法について

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 名古屋・千葉読書会の連携盛り上がり成功の背景には、それぞれの会場で参加者の感想を書き取る書記さん(ホワイトボード&でっかい模造紙を使用)の超人的な活躍がありました。というか正直あれは大変すぎる。自分の意見を言う前に燃え尽きてしまいかねません……

 書記さんが高負担となる読書会の頻度は少ないかもしれませんが、このような場合どうすればベターなのか。参加者が持参しているITデバイスの種類にもよるでしょうけど、可能な人には自分の意見を端的に(ツイッター規模の140字を基本単位とする等)纏めてもらい、その場で共用ワークエリアに投稿するシステムを用意すれば、リライトも含めて効率性がある程度向上するかもしれないと思います。そういうのが読書会の空気に馴染むかどうか、という問題はありますが^^

(写真:千葉×名古屋『ゲルマニア』読書会の展開を象徴する光景。映像を通じ、名古屋読書会世話人である大矢さんの人間力がビシバシ伝わってくる!^^ⒸMarei Mentlein)

(2) 課題図書の性質について

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『ゲルマニア』読書会の盛会盛況ぶりの大きな要因として、「ツッコミどころがけっこうある」課題本だった、という点があります。なまじフツーに完成度の高い良作よりも、こういう本の方が議論の肴としてむしろ優れているというか。

 とはいえ、決して「欠点の多い凡作」というわけではないあたりが重要です。単なる愚作駄作凡作を軸に良質な議論は出来ませんし、満足感もありません。『ゲルマニア』の場合は「BL」「ミリタリー」的なプラスアルファ観点ということになりますが、要するに趣味文化的なとっかかりポイントが多い作品は読書会のお題に向いているらしい、ということです。これは、異ジャンルのお客さんに声をかけるときにも有効な観点といえるでしょう。

(写真:埼玉読書会では、参加者が、持参したお菓子類の配りっこで盛り上がったのだ! 読書会では半ば恒例行事になっているとのこと^^ ⒸMarei Mentlein)

(3) ドイツミステリ作家「業界」について

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 今回、『ゲルマニア』原作者ハラルト・ギルバース氏が見せた「ジャパニーズ腐女子」文化への前向きな関心、これは彼のみならず、近年のドイツミステリのイケている作家に共通する特徴の表れであるように思います。

 それはすなわち——

〚1〛知的好奇心の広範さ、強さ

〚2〛コミュニケーション能力の高さ

 ——です。

 この点で特に顕著なのはセバスチャン・フィツェックで、作品のあとがきを見れば窺い知れるように、彼は一芸を持った協力者や専門家に「手伝っている」というよりも「参加している」的な実感を与える創作システムを構築しているように思われます。つまり、インターネットの「双方向性」を字義通りに活用しているわけで、これは微妙ながら非常に重要な点です。中央集権ではなくネットワーキング的な集合知性を視野に入れているように見えるからです。ギルバース氏はまだキャリアの浅い作家ですが、彼から来たメール文面にもそういうポテンシャルが色濃く垣間見えます。これが今のドイツミステリ好調を支える「知的底力」なのかもしれません。興味深いことです。

(写真:ハラルト・ギルバース氏本人のフェイスブックでは、自分の作品の日本での反響についても伝えられている。日本での好評ぶりにはかなりご満足な様子! そして、そう、ご覧のとおり、このような場面においても酒寄進一氏によるフォローはぬかりない!^^)

 以上です。

 今回は千葉読書会世話人の高山様、名古屋読書会世話人の大矢様、埼玉読書会世話人の東野様、そしてスタッフ・参加者の皆様にたいへんお世話になりました。改めて御礼申し上げます。

 ところで、ドイツミステリの年末を締めくくるイベントが、東京ドイツ文化センターで開催されます。

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ドイツ・エンターテインメントの夕べ

ブラックなクリスマス・プレゼント

フェルディナント・フォン・シーラッハ『カールの降誕祭』を読む】

  • 日時:2015年12月17日(木) 18:30〜
  • 場所:東京ドイツ文化センター図書館(2階)
  • 入場無料!

 今回も翻訳家である酒寄進一さんに、作品内容及び翻訳について語っていただきます。短編三本からなるあれやこれやを、これまでの短編集『犯罪』『罪悪』や、長編『コリーニ事件』『禁忌』も交えて四方山話をしていただきたいと思います。

 酒寄進一先生とマライ・メントラインさんによるトークをお楽しみください!

 詳細はこちらのリンクをご参照ください。

 東京ドイツ文化センターのサイトには「要参加登録」とあります。人数規模を把握するために参加申請をしていただいたほうが助かるからですが、ぶっちゃけ、アポなし飛び込みで来ても大丈夫だったりします。

 ぜひいらしてください!

 ということで恐縮ですが、どうぞよろしくお願いいたします!

マライ・メントライン(Marei Mentlein)

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 ドイツ最北部、Uボート基地の町キール出身。実家から半日で『ヴァランダー警部』シリーズの舞台、イースタに行けるのに気づいたことをきっかけにミステリ業界に入る。ドイツミステリ案内人として紹介される場合が多いが、自国の身贔屓はしない主義。猫を飼っているので猫ラブ人間と思われがちだが、実はもともと犬ラブ・牛ラブ人間。

 ツイッターアカウントは @marei_de_pon

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