アメリカのベストセラー・ランキング

1月3日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. ROGUE LAWYER    Stay

John Grisham ジョン・グリシャム

ミニバーとWi-Fiを備えた革装特別仕様の防弾車に乗り、その運転手兼用心棒兼ゴルフのキャディーでもある腹心の友を相棒に、ひとの嫌がる依頼人ばかりを弁護する異端児セバスチャン・ラッド。孤高の男を主人公に据えた、リーガル・サスペンスの名手による最新作。

2. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Up

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。

3. SEE ME    Stay

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

すさんだ過去と決別して人生をやり直すため、教師を目指しながらひっそり暮らすコリン。弁護士のマリアと出会い、愛しあうようになるが、マリアにもまた深い心の傷があった……『きみに読む物語』で知られるベストセラー作家によるロマンティック・スリラー。

4. THE BAZAAR OF BAD DREAMS    Stay

Stephen King スティーヴン・キング

2009年以降に雑誌等で発表された短編のほか、未発表の“Mister Yummy”、“Obits”の2編を含む全20編をおさめたキングの最新短編集。

5. CROSS JUSTICE    Down

James Patterson ジェイムズ・パタースン

男やもめの犯罪心理学者、アレックス・クロス・シリーズ第23作。いとこのステファンが身の毛もよだつような殺人事件の犯人として告訴されたことを受け、クロスは35年ぶりに、ノースカロライナ州スタークスヴィルに帰郷する。そこで彼を待っていたものは、すっかり様変わりしてしまった生まれ故郷と、自分の過去にまつわる真実だった。

6. THE GIRL ON THE TRAIN    Up

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。邦訳『ガール・オン・ザ・トレイン』(池田真紀子訳)が講談社文庫より刊行されている。

7. THE MAGIC STRINGS OF FRANKIE PRESTO    Up

Mitch Albom ミッチ・アルボム

戦争孤児としてスペインで育ち、古いギターと大切な6本の弦を手に9歳でアメリカへ渡ったフランキー・プレスト。20世紀の音楽界を舞台に、天才ギタリストの波乱に満ちた不思議な人生を描いた小説。

8. THE GUILTY    Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

ヒットマン、ウィル・ロビー・シリーズの4作目。任務をしくじった失意のロビーは、郷里で父が殺人罪に問われていることを知る。20年振りの故郷は冷淡で、父自身にも頑なに助けを拒まれながら、ロビーは定まらない標的を探し、やがてみずからの過去と対峙する。

9. GO SET A WATCHMAN    Up

Harper Lee ハーパー・リー

ピュリッツアー賞受賞作で映画にもなった『アラバマ物語』(1960年刊行、原題は“TO KILL A MOCKINGBIRD”)の著者による半世紀ぶりの新作。『アラバマ物語』の語り手の女性、スカウトのその後を描いたもので、1950年代に執筆された草稿が最近見つかり、出版の運びとなった。

10. TOM CLANCY: COMMANDER IN CHIEF    Down

Mark Greaney マーク・グリーニー

リトアニアの液化天然ガス基地爆破、ベネズエラ人検察官暗殺、ロシアの軍用列車襲撃。一連の事件の裏に潜むロシア大統領の陰謀を察知した合衆国大統領ライアンは、西欧諸国に協力を求めるが……。“FULL FORCE AND EFFECT”につづき、共著者のグリーニーが単独で執筆した故クランシーのジャック・ライアン・シリーズ最新作。

【まとめ】

トップテン入りした新作はなく、変動の少ない週でした。1位は3週連続でグリシャムでしたが、ドーアがとうとう2位にまで浮上。これで通算85週目のランクインとなり、底力を見せています。ホーキンズやリーも順位をあげ、それぞれ通算49週目と22週目のランクインとなりました。なお、NY Times紙の「今年の10冊」には、本記事でも紹介したLucia Berlinの“A MANUAL FOR CLEANING WOMEN”などが選ばれています。

青木創(あおき はじめ)

フィクション翻訳とノンフィクション翻訳の両方を手がけています。訳書に、D・ワッツ『偶然の科学』、A・フランセス『〈正常〉を救え』など。先週の記事で共訳者の国弘喜美代さんが告知したとおり、12月25日にドン・ウィンズロウの新作『報復』が刊行されました。テクノスリラーですが、『犬の力』と同系統の、怒りと暴力に満ちた作品です。来年もどうぞよろしくお願いいたします。