アメリカのベストセラー・ランキング

1月10日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. ROGUE LAWYER    Stay

John Grisham ジョン・グリシャム

ミニバーとWi-Fiを備えた革装特別仕様の防弾車に乗り、その運転手兼用心棒兼ゴルフのキャディーでもある腹心の友を相棒に、ひとの嫌がる依頼人ばかりを弁護する異端児セバスチャン・ラッド。孤高の男を主人公に据えた、リーガル・サスペンスの名手による最新作。

2. CROSS JUSTICE    Up

James Patterson ジェイムズ・パタースン

男やもめの犯罪心理学者、アレックス・クロス・シリーズ第23作。いとこのステファンが身の毛もよだつような殺人事件の犯人として告訴されたことを受け、クロスは35年ぶりに、ノースカロライナ州スタークスヴィルに帰郷する。そこで彼を待っていたものは、すっかり様変わりしてしまった生まれ故郷と、自分の過去にまつわる真実だった。

3. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Down

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。

4. THE GIRL ON THE TRAIN    Up

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。邦訳『ガール・オン・ザ・トレイン』(池田真紀子訳)が講談社文庫より刊行されている。

5. SEE ME    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

すさんだ過去と決別して人生をやり直すため、教師を目指しながらひっそり暮らすコリン。弁護士のマリアと出会い、愛しあうようになるが、マリアにもまた深い心の傷があった……『きみに読む物語』で知られるベストセラー作家によるロマンティック・スリラー。

6. THE BAZAAR OF BAD DREAMS    Down

Stephen King スティーヴン・キング

2009年以降に雑誌等で発表された短編のほか、未発表の“Mister Yummy”、“Obits”の2編を含む全20編をおさめたキングの最新短編集。

7. GO SET A WATCHMAN    Up

Harper Lee ハーパー・リー

ピュリッツアー賞受賞作で映画にもなった『アラバマ物語』(1960年刊行、原題は“TO KILL A MOCKINGBIRD”)の著者による半世紀ぶりの新作。『アラバマ物語』の語り手の女性、スカウトのその後を描いたもので、1950年代に執筆された草稿が最近見つかり、出版の運びとなった。

8. THE GUILTY    Stay

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

ヒットマン、ウィル・ロビー・シリーズの4作目。任務をしくじった失意のロビーは、郷里で父が殺人罪に問われていることを知る。20年振りの故郷は冷淡で、父自身にも頑なに助けを拒まれながら、ロビーは定まらない標的を探し、やがてみずからの過去と対峙する。

9. THE MAGIC STRINGS OF FRANKIE PRESTO    Down

Mitch Albom ミッチ・アルボム

戦争孤児としてスペインで育ち、古いギターと大切な6本の弦を手に9歳でアメリカへ渡ったフランキー・プレスト。20世紀の音楽界を舞台に、天才ギタリストの波乱に満ちた不思議な人生を描いた小説。

10. THE NIGHTINGALE    Up

Kristin Hannah クリスティン・ハナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。

【まとめ】

2016年最初の当欄の更新ですが、年末年始は新刊の刊行が少ないこともあり、今週も目新しさに欠けるランキングとなっています。そこで、米国最大の書店チェーン〈バーンズ・アンド・ノーブル〉の2015年ベストセラー本トップ100ランキングより、ハードカバー・フィクションのベスト10をご紹介します。1位——GO SET A WATCHMAN(ハーパー・リー)、2位——THE GIRL ON THE TRAIN(ポーラ・ホーキンズ)、3位——ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE(アンソニー・ドーア)、4位——THE NIGHTINGALE(クリスティン・ハンナ)、5位——MEMORY MAN(デイヴィッド・バルダッチ)、6位——ROGUE LAWYER(ジョン・グリシャム)、7位——FINDERS KEEPERS(スティーヴン・キング)、8位——SEE ME(ニコラス・スパークス)、9位——14TH DEADLY SIN(ジェイムズ・パタースン、マクシーン・ペトロ)、10位——THE GIRL IN THE SPIDER’S WEB(ダヴィド・ラーゲルクランツ)。ちなみに、“GO SET A WATCHMAN”は総合でも1位。2015年にバーンズ・アンド・ノーブルで一番売れた本の座に輝いています。

満園真木(みつぞの まき)

東京在住の翻訳者。訳書はバリー・ライガ『殺人者たちの王』、同『さよなら、シリアルキラー』、エミリー・セントジョン・マンデル『ステーション・イレブン』など。2016年はジャスパー・デント・シリーズ3部作の完結編をはじめ、翻訳ミステリーの訳書が数作刊行される予定です。本年もどうぞよろしくお願いします。