アメリカのベストセラー・ランキング

5月29日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1.15TH AFFAIR   Stay

James Patterson & Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マクシーン・パエトロ

女性殺人捜査クラブ・シリーズ第15弾。リンジー・ボクサーは結婚して母となり、幸せな家庭生活を送っている。ところが、ダウンタウンの高級ホテルの殺人現場からCIAと関わりのあるブロンドの美女が消えたことで、生活がほころびはじめ、彼女は女性殺人捜査クラブに助けを求める。

2.THE LAST MILE   Stay

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

20年前に自分の両親を殺害して服役していた死刑囚が、べつの人物の自供によって刑の執行を免れた。超記憶症候群のため驚異的な記憶力を持つデッカー刑事は、FBIの特別チームの一員として真相究明に乗りだす。シリーズ第2作。

3. THE GIRL ON THE TRAIN    Up

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。邦訳『ガール・オン・ザ・トレイン』(池田真紀子訳)が講談社文庫より刊行されている。

4.EXTREME PREY   Stay

John Sandford ジョン・サンドフォード

ルーカス・ダヴンポートの「獲物」シリーズ第26作。前作の後、ミネソタ州特別犯罪捜査局を離れて市井の人となったルーカスは、大統領選への出馬を決めた女性知事メキーラの頼みでキャンペーンスタッフにくわわることに。新たな経験を楽しむルーカスだったが、知事を狙う暗殺者の存在が発覚し、事態は一変する。

5. THE NEST    Up

Cynthia D’Aprix Sweeney シンシア・ダプリ・スウィーニー

ニューヨークに暮らすプラム家の4人きょうだいには、末妹のメロディが40歳になったときに受け取れる多額の信託財産があった。だが長兄のレオが交通事故を起こし、その大半が失われてしまう。長年反目しあい、それぞれに問題を抱えた4人の運命は……。コピーライター、エッセイストとして活躍してきた著者の小説デビュー作。

6.THE APARTMENT   Down

Danielle Steel ダニエル・スティール

人生の転換期を迎える4人の女性が、ひょんなことから同じアパートメントで暮らすことになる。デザイナー、作家、金融業、医者……それぞれの夢を持つ彼女たちは、共同生活を送るうちにしだいに絆を深めていく。

7.EVERYBODY’S FOOL   Up

Richard Russo リチャード・ルッソ

映画化もされた『ノーバディーズ・フール』の続編。医師に余命1、2年と宣告された主人公サリーは、それをまわりの人々に知られないようにする。疎遠になっている息子や孫たち、ひと癖もふた癖もある友人たちとの交流をユーモアたっぷりに描く、ハートウォーミングな一作。

8.LAROSE   New!

Louise Erdrich ルイーズ・アードリック

シカ狩りの途中、誤って親友の息子を死なせてしまったアメリカ先住民の男は、祖先の教えにしたがい、5歳になる自分の息子を亡くなった子供の両親に差し出す。2009年ピューリッツアー賞最終候補となった“THE PLAGUE OF DOVES”、2012年全米図書賞受賞作“THE ROUND HOUSE”と3部作をなす、ノースダコタ州オジブワ族居留地と近隣の町を描いた文学作品。

9. ELIGIBLE    Up

Curtis Sittenfeld カーティス・シッテンフェルド

オハイオ州シンシナティを舞台にした現代版『高慢と偏見』。ニューヨークで雑誌のライターをしていたリズ・ベネットは、父の健康状態を案じ、ヨガ・インストラクターの姉ジェインとともに生まれ育った家へもどった。そして、町へ越してきた医師のビングリーとその友人で神経外科医のダーシーに出会う。

10. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Up

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編であり、この作品で2015年のピューリッツァー賞を獲得。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行が予定されている。

【まとめ】

1、2位が先週と変わらず、変動の少ない週でした。9位、10位に再浮上したカーティス・シッテンフェルド、アンソニー・ドーアと入れ替わりにトップテンリストからはずれたクリスティン・ハナ(11位)とクローディア・グレイ(14位)も20位以内で健闘中です。 唯一新作が8位にランクインしたルイーズ・アードリックは、詩、小説、児童文学などの幅広い文学作品で高い評価を得ているアメリカ先住民系作家。小説はこれまでに15作あり、全米批評家協会賞を受賞した小説デビュー作『ラブ・メディシン』(望月佳重子訳/筑摩書房)など4作品と、児童書では『スピリット島の少女』(宮木陽子訳/福音館書店)が邦訳刊行されています。トップテン外ではその他、18位にジョン・ハートの“REDEMPTION ROAD”、20位にジュリアン・バーンズの“THE NOISE OF TIME”が登場しています。

吉井智津(よしい ちづ)

大阪在住。訳書にベリンダ・バウアー『生と死にまつわるいくつかの現実』など。