アメリカのベストセラー・ランキング

6月12日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE CITY OF MIRRORS   New!

Justin Cronin ジャスティン・クローニン

永遠の命と超人的な能力を実現させるべく軍が作り出したのは、人間をヴァンパイア化するウイルスだった。エイミーという少女を主人公とする3部作の第3作で、“The Passage”(2010年刊行)と“The Twelve”(2012年刊行)とともに、人類が滅亡の危機に瀕した終末世界を描く。

2. THE GIRL ON THE TRAIN   Up

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。邦訳『ガール・オン・ザ・トレイン』(池田真紀子訳)が講談社文庫より刊行されている。

3. 15TH AFFAIR   Down

James Patterson & Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マクシーン・パエトロ

女性殺人捜査クラブ・シリーズ第15弾。リンジー・ボクサーは結婚して母となり、幸せな家庭生活を送っている。ところが、ダウンタウンの高級ホテルの殺人現場からCIAと関わりのあるブロンドの美女が消えたことで、生活がほころびはじめ、彼女は女性殺人捜査クラブに助けを求める。

4. THE WEEKENDERS   Down

Mary Kay Andrews メアリー・ケイ・アンドルーズ

ノースカロライナ州のベル島にある別荘で娘と夏をすごすライリーは、ある週末、夫のウェンデルの到着を待っていた。そこで離婚することを娘に告げる予定だった。ところが、ウェンデルが遺体で発見され……『愛さずにはいられない』の作者による新作ウィメンズ・フィクション。

5. THE LAST MILE   Stay

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

20年前に自分の両親を殺害して服役していた死刑囚が、べつの人物の自供によって刑の執行を免れた。超記憶症候群のため驚異的な記憶力を持つデッカー刑事は、FBIの特別チームの一員として真相究明に乗りだす。シリーズ第2作。

6. THE NEST   Stay

Cynthia D’Aprix Sweeney シンシア・ダプリ・スウィーニー

ニューヨークに暮らすプラム家の4人きょうだいには、末妹のメロディが40歳になったときに受け取れる多額の信託財産があった。だが長兄のレオが交通事故を起こし、その大半が失われてしまう。長年反目しあい、それぞれに問題を抱えた4人の運命は……。コピーライター、エッセイストとして活躍してきた著者の小説デビュー作。

7. AFTER YOU   Up

Jojo Moyes ジョジョ・モイーズ

2012年発表(邦訳は2015年)のベストセラー『ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日』の続編。前作は半年限定で介護職についたルイーザと、四肢麻痺の青年実業家ウィルとの物語で、今回はその後、主人公ルーがもがきながら自分の道を探そうとする姿を描く。

8. THE FIREMAN   Down

Joe Hill ジョー・ヒル

皮膚に龍の鱗のような斑紋があらわれたのち体内から発火して死にいたる伝染病、ドラゴンスケールが蔓延する世界。感染者狩りが激化するなか、おなかの子のために生き延びようとする感染者のハーパーは、体内の火を制御する能力を持った謎の男“ファイアマン”に助けられる。著者の長篇第4作にあたるポストアポカリプス・ホラー大作。小学館より邦訳予定。

9. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE   Up

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。

10. EVERYBODY’S FOOL   Down

Richard Russo リチャード・ルッソ

映画化もされた『ノーバディーズ・フール』の続編。医師に余命1、2年と宣告された主人公サリーは、それをまわりの人々に知られないようにする。疎遠になっている息子や孫たち、ひと癖もふた癖もある友人たちとの交流をユーモアたっぷりに描く、ハートウォーミングな一作。

【まとめ】

終末世界を描く3部作の第3作、“THE CITY OF MIRRORS”が1位を獲得しました。このトリロジーは本国アメリカで大いに人気を博しており、2010年刊行の第1作“The Passage”は、著者のジャスティン・クローニンをベストセラー作家に押しあげました。また、ジョジョ・モイーズ“AFTER YOU”(2015年10月刊行)が、トップテン外から今週7位に再浮上しています。これは、前作『ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日』がエミリア・クラークとサム・クラフリンの共演で映画化され、6月3日から全米で劇場公開されるのを受けてのことでしょう(日本での公開は未定)。14位にはステファニー・ダンラー“SWEETBITTER”が初登場。著者初の小説で、ニューヨークに出てきた22歳の女性が有名レストランで働きながら自分を見つけていく物語です。

国弘喜美代(くにひろ きみよ)

東京在住の翻訳者、南東京読書会の世話人のひとり。先日、下調べもせずにカラヴァッジョ展を見にいったところ、『悲しみのイレーヌ』にも出てくる〈法悦のマグダラのマリア〉が、世界ではじめて公開されていて、うれしい驚きでした。(なお、カラヴァッジョ展はまもなく閉幕のようですので、興味のあるかたはどうぞお早めに)。