アメリカのベストセラー・ランキング

6月19日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE EMPEROR’S REVENGE   New!

Clive Cussler and Boyd Morrison クライブ・カッスラー、ボイド・モリソン

オレゴン・ファイル・シリーズ第11作。モナコグランプリの最中に銀行が襲われ、秘密工作船オレゴン号の活動資金が奪われる。船長のファン・カブリーヨと仲間たちは犯人を追うが、やがて世界を揺るがす陰謀が明らかになる。ナポレオンのロシア侵攻の際に盗まれた文書とは。

2. BEFORE THE FALL   New!

Noah Hawley ノア・ホーリー

ある夏の夜、11人の男女を乗せたプライベートジェット機がマサチューセッツ州沖の島からニューヨークをめざして飛び立ち、16分後に墜落する。生存者は画家と男児のふたりだけだった。犠牲者の素性や境遇がわかるにつれ、事故は仕組まれたものではないかという疑惑が深まっていく。

3. ALL SUMMER LONG   New!

Dorothea Benton Frank ドロシア・ベントン・フランク

有名インテリアデザイナーのオリヴィアと大学教授のニコラス。ふたりは正反対の性格のように見えて、ニューヨークで14年間も夫婦として円満に暮らしていた。が、ニコラスが引退して田舎暮らしをはじめることを望んだために、ふたりのあいだに亀裂が生じる。

4. THE GIRL ON THE TRAIN   Down

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。邦訳『ガール・オン・ザ・トレイン』(池田真紀子訳)が講談社文庫より刊行されている。

5. AFTER YOU   Up

Jojo Moyes ジョジョ・モイーズ

2012年発表(邦訳は2015年)のベストセラー『ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日』の続編。前作は半年限定で介護職についたルイーザと、四肢麻痺の青年実業家ウィルとの物語で、今回はその後、主人公ルーがもがきながら自分の道を探そうとする姿を描く。

6. 15TH AFFAIR   Down

James Patterson & Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マクシーン・パエトロ

女性殺人捜査クラブ・シリーズ第15弾。リンジー・ボクサーは結婚して母となり、幸せな家庭生活を送っている。ところが、ダウンタウンの高級ホテルの殺人現場からCIAと関わりのあるブロンドの美女が消えたことで、生活がほころびはじめ、彼女は女性殺人捜査クラブに助けを求める。

7. A HERO OF FRANCE   New!

Alan Furst アラン・ファースト

1941年、ドイツ軍占領下のパリ。レジスタンスのマテューたちは、イギリス軍兵士を安全地帯へ脱出させるという危険な任務にあたっていた。ナチスが飛ぶ鳥を落とす勢いだったころに、おのれの信ずるものにしたがい、命がけで立ち向かった勇気ある人たちの姿を描く。

8. THE WEEKENDERS   Down

Mary Kay Andrews メアリー・ケイ・アンドルーズ

ノースカロライナ州のベル島にある別荘で娘と夏をすごすライリーは、ある週末、夫のウェンデルの到着を待っていた。そこで離婚することを娘に告げる予定だった。ところが、ウェンデルが遺体で発見され……『愛さずにはいられない』の作者による新作ウィメンズ・フィクション。

9. THE LAST MILE   Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

20年前に自分の両親を殺害して服役していた死刑囚が、べつの人物の自供によって刑の執行を免れた。超記憶症候群のため驚異的な記憶力を持つデッカー刑事は、FBIの特別チームの一員として真相究明に乗りだす。シリーズ第2作。

10. THE NEST   Down

Cynthia D’Aprix Sweeney シンシア・ダプリ・スウィーニー

ニューヨークに暮らすプラム家の4人きょうだいには、末妹のメロディが40歳になったときに受け取れる多額の信託財産があった。だが長兄のレオが交通事故を起こし、その大半が失われてしまう。長年反目しあい、それぞれに問題を抱えた4人の運命は……。コピーライター、エッセイストとして活躍してきた著者の小説デビュー作。

【まとめ】

1位から3位までを新作が独占、7位にも新作がランクインしました。1位のオレゴン・ファイル・シリーズは第10作『水中襲撃ドローン〈ピラニア〉を追え!』(伏見威蕃訳、扶桑社ミステリー)と同じくボイド・モリソンとの共著で、いかにもこのシリーズらしい冒険小説として好評を博しています。2位のノア・ホーリーは人気ドラマ《BONES(ボーンズ)—骨は語る—》の脚本家で、映画《ファーゴ》のテレビドラマ化を手がけたことでも話題になりました。3位のドロシア・ベントン・フランクは、『愛しき海辺の家』(林啓恵訳)が集英社文庫から刊行されています。7位のアラン・ファーストはスパイ・スリラーの名手で、講談社文庫から邦訳が刊行された『影の王国』(黒原敏行訳)はハメット賞を受賞しました。

青木創(あおき はじめ)

フィクション翻訳とノンフィクション翻訳の両方を手がけています。訳書に、D・ワッツ『偶然の科学』、A・フランセス『〈正常〉を救え』など。ハヤカワ文庫NVから『黄金の時間』が刊行されました。著者のトッド・モスはアメリカの元国務次官補代理。アフリカのマリを舞台にした異色のスパイ・スリラーです。