『ミステリーズ!』vol.78 AUGUST 2016

東京創元社(雑誌)/本体価格(2016/09/16 08:25時点)1200円/8月12日/ISBN:978-4-488-03078-0

【ブックエッセイ】

田内志文 私はこれが訳したい Intimacy Hanif Kureishi

【評論】

川出正樹 ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション 第二十九回

『北京から来た男』上下/Kinesen

ヘニング・マンケル(Henning Mankell)/柳沢由実子・訳

創元推理文庫/本体価格(2016/09/16 08:25時点)各1140円/8月12日/ISBN:(上)978-4-488-20918-6(下)978-4-488-20919-3

凍てつくような寒さの未明、スウェーデンの寒村に足を踏み入れた写真家は、信じられない光景を目にする。ほぼ全ての村人が惨殺されていたのだ。ほとんどが老人ばかりの村がなぜ。女性裁判官ビルギッタは、亡き母がその村の出身であったことを知り、ひとり現場に向かう。事件はビルギッタを世界の反対側へ、そして過去へと導く。北欧ミステリの帝王ヘニング・マンケルの超大作。訳者あとがき/文庫版に寄せて=柳沢由実子

『怪盗モンモランシー』/Montmorency

エレナー・アップデール(Eleanor Updale)/杉田七重・訳

創元推理文庫/本体価格(2016/09/16 08:25時点)840円/8月12日/ISBN:978-4-488-21704-4

囚人493ことモンモランシー。警察から逃げる際瀕死の重傷を負ったが、運良く若き外科医ファーセットの治療の被験者となり、一命をとりとめた男。無事刑期を終えたモンモランシーは高級ホテルに滞在しながら、昼間は紳士、夜は泥棒、ふたつの顔を使い分け、次々とお宝を頂戴していく。だがある日暴れ馬を取り押さえたことで、彼の運命は大きく変わることに。痛快シリーズ第一弾。訳者あとがき=杉田七重

『幻の屋敷 キャンピオン氏の事件簿?』/Safe as Houses and Other Stories

マージェリー・アリンガム(Margery Allingham)/猪俣美江子・訳

創元推理文庫/本体価格(2016/09/16 08:25時点)920円/8月20日/ISBN:978-4-488-21005-2

ロンドンの社交クラブで起きた絞殺事件。証言からは、犯人は“見えないドア”を使って現場に出入りしたとしか思えないのだが……。名作「見えないドア」を始めとして、留守宅にあらわれた謎の手紙が巻き起こす大騒動を描く表題作や、警察署を訪れた礼儀正しく理性的に見える老人が突拍子もない証言をはじめる「奇人横丁の怪事件」など、本邦初訳作を含む日本オリジナル短編集。解説=若林踏

【収録作品】「綴られた名前」「魔法の帽子」「幻の屋敷」「見えないドア」「極秘書類」「キャンピオン氏の幸運な一日」「面子の問題」「ママは何でも知っている」「ある朝、絞首台に」「奇人横丁の怪事件」「聖夜の言葉」/「年老いてきた探偵をどうすべきか」

『叫びの館』上下/Fragments

ジェイムズ・F・デイヴィッド(James F. David)/公手成幸・訳

創元推理文庫/本体価格(2016/09/16 08:25時点)各1100円/8月20日/ISBN:(上)978-4-488-59102-1(下)978-4-488-59103-8

アメリカの閑静な大学町に館を借りた心理学者ウェス・マーティンは、サヴァン症候群の若者たちが持つ能力の断片を集約し、大いなる“統合人格”を生み出すという研究をしていた。それぞれ豊かな個性を持つ被験者たちに翻弄されながらも、ウェスは目論みどおり統合人格フランキーを誕生させるが、時を同じくして、町では四十年前に起きた連続殺人を彷彿とさせる事件が発生する。解説=古山裕樹

『霧に橋を架ける』/At the Mouth of the River of Bees

キジ・ジョンスン(Kij Johnson)/三角和代・訳

創元SF文庫/本体価格(2016/09/16 08:25時点)1060円/8月20日/ISBN:978-4-488-76401-2

【「本の雑誌」2014年SFベスト第1位】ヒューゴー賞とネビュラ賞をダブル受賞した表題作をはじめ、現代アメリカSF界きっての名手による、鮮やかな幻想SF短編集。訳者あとがき=三角和代/解説=橋本輝幸

【収録作品】「26モンキーズ、そして時の裂け目」「スパー」「水の名前」「噛みつき猫」「シュレディンガーの娼館(キャットハウス)」「陳亭、死者の国」「蜜蜂の川の流れる先で」「ストーリー・キット」「ポニー」「霧に橋を架ける」「《変化》後のノース・パークで犬たちが進化させるトリックスターの物語」

『泉』/The Well

キャサリン・チャンター(Catherine Chanter)/玉木亨・訳

東京創元社(単行本)/本体価格(2016/09/16 08:25時点)2600円/8月31日/ISBN:978-4-488-01063-8

イギリス全土で3年にわたって異常な干魃が続いているにもかかわらず、“わたし”がいる農場〈泉〉にだけは雨が降り、草木が青々と茂っている。“わたし”はここで自宅監禁生活を送ることになった。〈無個性〉〈3〉〈ボーイ〉と名付けた男たちに常に監視され、行動を厳しく制限されながら孤独に暮らす“わたし”を、殺人事件の記憶が苦しめる。なぜ家族も友人も失うことになったのか? 自分は何をしてしまったのか? “わたし”は精神のバランスを崩すほど思い悩みながら〈泉〉での生活をふりかえり、殺人犯をつきとめようとする——。異様な状況下で傷ついた女性の、追憶と再生の物語。解説=川出正樹

『ささやく真実』/The Deadly Truth

ヘレン・マクロイ(Helen McCloy)/駒月雅子・訳

創元推理文庫/本体価格(2016/09/16 08:25時点)980円/8月31日/ISBN:978-4-488-16811-7

悪趣味ないたずらで、周囲に騒動をもたらす美女クローディア。彼女は知人の研究室から盗みだした強力な自白剤を、自宅のパーティーで飲みものに混ぜてふるまい、宴を暴露大会に変えてしまう。その代償か、夜の終わり

に彼女は何者かに殺害された……! 精神科医ウィリング博士が、意外な手がかりをもとに指摘する真犯人は? マクロイ屈指の謎解き純度を誇る、傑作本格ミステリ。解説=若林踏