アメリカのベストセラー・ランキング

10月9日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. HOME    New!

Harlan Coben ハーラン・コーベン

マイロン・ボライター・シリーズの第11作。2軒の裕福な家庭から、子供がひとりずつ誘拐される。身代金の要求はあったものの、その後犯人からの連絡は途絶える。10年の月日が流れたのち、マイロンと友人のウィンは子供のひとりを見つける。10年のあいだ、その子供はどこで何をしていたのか。もうひとりの子供はどうなったのか。

2. COMMONWEALTH    Down

Ann Patchett アン・パチェット

1960年代のロサンゼルスにはじまる、半世紀にわたる物語。バートは幼い子供3人と身重の妻がいる家に帰る気になれず、ほとんど見も知らぬ他人の娘の洗礼を祝うパーティに紛れこむ。そこでバートは娘の母親のベヴァリーにひと目で心を奪われてしまう。突然の出会いはふたつの家族を壊し、徐々に変形させてゆく。

3. THE UNDERGROUND RAILROAD    Up

Colson Whitehead コルソン・ホワイトヘッド

19世紀、奴隷制がまだ認められていた南部諸州からの黒人奴隷たちの逃亡を手助けした組織「地下鉄道」。本当に地下を走る逃亡奴隷のための鉄道が存在していたら……という設定のもとで、ジョージア州の綿花プランテーションから逃げだした十代の黒人奴隷の少女の旅を描いたスペキュレイティブ・フィクション。

4. THE WOMAN IN CABIN 10    Up

Ruth Ware ルース・ウェア

小型客船で北海をイギリスからノルウェーへ向かう途中、旅行雑誌の記者ローラは、深夜に人が海に落ちたような音を聞く。隣の10号室の女がいなくなっていたが、姿を見かけたのはローラだけで、船員も乗客も全員が10号室は空室だったと言う。自分を疑いながらも、ローラは独自に調査をはじめる。

5. RAZOR GIRL    Down

Carl Hiaasen カール・ハイアセン

詐欺師のメリーはフロリダキーズへと向かう路上で悪徳開発業者の車にわざと追突し事故を起こす……はずが、相手を間違えて芸能エージェントのクールマンのレンタカーにぶつけてしまってさあ大変。クールマンがマネジメントするリアリティテレビの人気者バック・ナンスもからんで、事態は思わぬ方向へ転がってゆくことに。

6. THRICE THE BRINDED CAT HATH MEW’D    New!

Alan Bradley アラン・ブラッドリー

少女探偵フレーヴィア・シリーズの第8作。カナダの寄宿学校を追い出され、故郷のイングランドに戻ってきたフレーヴィアは、用事があって訪ねた家で、さっそく死体を発見してしまう。上下逆さまに吊るされたその死体のそばには、一匹の猫がいた。少女は喜び勇んで捜査に乗り出す。

7. THE KEPT WOMAN    New!

Karin Slaughter カリン・スローター

ジョージア州捜査局の特別捜査官ウィル・トレントが活躍するシリーズの第8作。建設工事の跡地で元警官の死体が発見される。現場に残された足跡と血痕から、被害者はもうひとりいて、重傷を負った女性だと考えられたが、行方がわからなかった。その土地の所有者は、かつてレイプの疑いをかけられながらも罪を免れた男だった。

8. PIRATE    Down

Clive Cussler and Robin Burcell クライブ・カッスラー&ロビン・バーセル

トレジャーハンターのファーゴ夫妻シリーズ第8作。夫妻はサンフランシスコでふらりと書店に立ち寄って古書を買うが、ほどなく書店主が殺される。その本には歴史的価値のある宝の地図が隠されていた。夫妻はカリフォルニアからアリゾナ、ジャマイカ、イギリスへ飛ぶ。

9. NUTSHELL    Down

Ian McEwan イアン・マキューアン

ロンドンに住むトルーディは、夫の弟クロードと結託して、夫のジョンを殺す計画を立てている。だが、その一部始終を知っている者がいた——トルーディのおなかのなかですべてを聞いていた胎児だ。『ハムレット』の改作であり、生まれる直前の胎児が語り手をつとめる小説。

10. APPRENTICE IN DEATH    Down

J. D. Robb J・D・ロブ

にぎわうセントラルパークのスケートリンクで3人の無辜の市民が狙撃され死亡する。イヴと夫ロークの捜査の結果、狙撃犯は2人組で、師弟関係にあるらしい。やがてニューヨークの街を震撼させる第2の狙撃事件が発生し……イヴ&ローク・シリーズ第43作。

【まとめ】

1位、6位、7位に新作がランクインしました。1位のコーベンはここのところスタンドアローンの作品がつづいていましたが、これがマイロン・ボライター・シリーズの5年ぶりの新作となります。同シリーズは第7作の『ウイニング・ラン』まで邦訳が刊行されています。化学と毒物が大好きな少女が活躍する6位のフレーヴィア・シリーズは、もともと全6作の予定でしたが、好評を受けて10作まで執筆されるとのこと。邦訳は第6作の『不思議なキジのサンドウィッチ』まで刊行されています。7位のウィル・トレント・シリーズは、日本でも今年になって第1作が『三連の殺意』の邦題で刊行されました。近年邦訳が刊行されたスローターの作品は、ほかに『警官の街』や『プリティ・ガールズ』があります。

青木創(あおき はじめ)

フィクション翻訳とノンフィクション翻訳の両方を手がけています。訳書に、D・ワッツ『偶然の科学』、A・フランセス『〈正常〉を救え』、P・メイ『忘れゆく男』など。