アメリカのベストセラー・ランキング

11月6日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. ESCAPE CLAUSE    New!

John Sandford ジョン・サンドフォード

法執行機関で働くヴァージル・フラワーズを主人公にしたシリーズ9作目。ミネソタ動物園から2匹のアムール虎がいなくなった。どうやら盗み出されたらしく、ヴァージルは調査に乗り出す。時を同じくして、ガールフレンドであるフランキーの妹、スパークルが越してきて、事態はより複雑になる。彼女は移民労働者の調査をしているのだが、調査を望まない裏社会の人間がいるらしい。さらに、彼女はヴァージルに好意を抱きはじめ……

2. TWO BY TWO    Stay

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

幸せなはずだった結婚生活が破綻し、華やかなPRの職も失った32歳のラス。6歳の娘ロンドンを抱えてシングルファザーとなり、想像もつかなかった新しい生活と新しい恋に踏みだす。

3. SMALL GREAT THINGS    Down

Jodi Picoult ジョディ・ピコー

ベテラン看護師のルースは呼吸困難を起こした新生児を前に躊躇した。黒い指で絶対に子どもに触れるなと、その子の親に禁じられていたのだ。一瞬の迷いのせいで重い刑事責任を問われることになった彼女を救うため、白人弁護士は人種を武器にメディアを操る戦略を推してくるが……。ベストセラー作家ピコーが、現代の人種問題に切り込んでいく。

4. THE OBSIDIAN CHAMBER    New!

Douglas Preston and Lincoln Child ダグラス・プレストン、リンカーン・チャイルド

FBI特別捜査官ペンダーガスト・シリーズの第16作。ペンダーガスト捜査官は前作の最後で海に落ちて行方不明となり、死亡したと考えられている。その後、彼の同居人コンスタンス・グリーンがマンハッタンのアパートメントから誘拐される。長年ペンダーガストのボディガードを務めていたプロクターは、彼女を誘拐した犯人を追い、海を渡って不毛の地に足を踏み入れる。

5. VINCE FLYNN: ORDER TO KILL    Down

Kyle Mills カイル・ミルズ

テロリストの手から核兵器を守るべく奔走していたCIA諜報員ミッチ・ラップは、中東を凌駕するほどの破壊的な目論見がロシアで進行していると気づき、ISISのリクルーターを装ってモスクワに潜入する。ミッチ・ラップ・シリーズの第15作。原作者ヴィンス・フリンが他界し、14作目からカイル・ミルズが書き継いでいる。

6. THE SECRET HISTORY OF TWIN PEAKS    New!

Mark Frost マーク・フロスト

『ツイン・ピークス』の共同制作者として知られる作者が多重構造的かつ広範囲にわたって描く、架空の町ツイン・ピークスの歴史。オリジナル・シリーズのストーリーにまつわる手紙、文書、新聞記事、写真などを多数収録。

7. COMMONWEALTH    Down

Ann Patchett アン・パチェット

1960年代のロサンゼルスにはじまる、半世紀にわたる物語。バートは幼い子供3人と身重の妻がいる家に帰る気になれず、ほとんど見も知らぬ他人の娘の洗礼を祝うパーティに紛れこむ。そこでバートは娘の母親のベヴァリーにひと目で心を奪われてしまう。突然の出会いはふたつの家族を壊し、徐々に変形させてゆく

8. THE WOMAN IN CABIN 10    Up

Ruth Ware ルース・ウェア

小型客船で北海をイギリスからノルウェーへ向かう途中、旅行雑誌の記者ローラは、深夜に人が海に落ちたような音を聞く。隣の10号室の女がいなくなっていたが、姿を見かけたのはローラだけで、船員も乗客も全員が10号室は空室だったと言う。自分を疑いながらも、ローラは独自に調査をはじめる。

9. HOME    Down

Harlan Coben ハーラン・コーベン

マイロン・ボライター・シリーズの第11作。2軒の裕福な家庭から、子供がひとりずつ誘拐される。身代金の要求はあったものの、その後犯人からの連絡は途絶える。10年の月日が流れたのち、マイロンと友人のウィンは子供のひとりを見つける。10年のあいだ、その子供はどこで何をしていたのか。もうひとりの子供はどうなったのか。

10. TODAY WILL BE DIFFERENT    Down

Maria Semple マリア・センプル

駄目な自分を反省し、きょうはいつもと違う理想的な行動をしようと思い立ったエレナーに、想定外の出来事がつぎつぎと起こる。息子ティンビーは仮病で学校を抜け出し、職場にいるはずの外科医の夫ジョーは不可解な「休暇」中——2012年のベストセラーで映画化も予定されている“WHERE’D YOU GO, BERNADETTE”の著者による3作目の小説。

【まとめ】

今週は1位、4位、6位と3作の新作がランクインしました。1位のジョン・サンドフォードの作品としてはルーカス・ダヴンポート警部補シリーズの『心の獲物』『餌食』などが邦訳されていますが、ヴァージル・フラワーズ・シリーズは今のところ邦訳されていません。4位のペンダーガスト・シリーズは第3作『殺人者の陳列棚』まで邦訳が出ています。6位は小説ではありませんが、『ツイン・ピークス』の歴史にまつわる(架空の)資料をまとめたもので、2017年に放送される予定の新シリーズに備えたい方にはうってつけの一冊と言えそうです。

武藤陽生(むとう ようせい)

めっきり寒くなり、第8回翻訳ミステリー大賞の予備投票締め切りまであと1ヵ月になりました。暖かくして、読書に励みたいと思います。