アメリカのベストセラー・ランキング

12月25日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE WHISTLER    Stay

John Grisham ジョン・グリシャム

裁判官への苦情を調査する仕事について9年、フロリダの弁護士レイシーの平穏だった日々は、インディアン・カジノをめぐる組織犯罪と、それにからむ判事の不正を伝える密告者との出会いによって一変する。

2. CROSS THE LINE    Stay

James Patterson ジェイムズ・パタースン

刑事アレックス・クロス・シリーズ第24作。ワシントン市警の幹部が殺害され、クロスの妻ブリーが捜査指揮をとることに。犯罪心理学者でもあるクロスは市警のコンサルタントとして妻に協力するが、そこにドラッグの密造・密売人ばかりを狙った連続殺人が発生する。

3. TOM CLANCY: TRUE FAITH AND ALLEGIANCE    New!

Mark Greaney マーク・グリーニー

世界各地で米国軍人や諜報員が窮地に陥る事態がたて続けに発生し、大規模な情報リークに気づいた合衆国大統領ライアンは、自国の内部に潜む敵と対決する。「レッド・オクトーバーを追え!」など数々の映画も生んだ故クランシーの作品世界を『暗殺者グレイマン』の著者が書き継ぐジャック・ライアン・シリーズ第12作。

4. TWO BY TWO    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

幸せなはずだった結婚生活が破綻し、華やかなPRの職も失った32歳のラス。6歳の娘ロンドンを抱えてシングルファザーとなり、想像もつかなかった新しい生活と新しい恋に踏みだす。

5. NO MAN’S LAND    Stay

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

アメリカ陸軍犯罪捜査官ジョン・プラー・シリーズの第4作。30年前に失踪したプラーの母が、実は殺害されていた可能性が浮上する。容疑者となったのは認知症を患う父だった。家族の名誉を守るため、プラーは前作で汚名を晴らした兄の協力を得て、過去の解明に取り組む。

6. THE UNDERGROUND RAILROAD    UP

Colson Whitehead コルソン・ホワイトヘッド

19世紀、奴隷制がまだ認められていた南部諸州からの黒人奴隷たちの逃亡を手助けした組織「地下鉄道」。本当に地下を走る逃亡奴隷のための鉄道が存在していたら……という設定のもとで、ジョージア州の綿花プランテーションから逃げだした十代の黒人奴隷の少女の旅を描いたスペキュレイティブ・フィクション。

7. NIGHT SCHOOL    Down

Lee Child リー・チャイルド

ジャック・リーチャー・シリーズの第21作。今回はリーチャーが陸軍にいたころの過去の活躍を描く。イスラム教テロ組織に機密情報を売り渡そうとしているアメリカ人をとらえろ——極秘任務を与えられ、リーチャーはFBIとCIAのエージェントとともにハンブルクへ向かう。

8. TURBO TWENTY-THREE    Down

Janet Evanovich ジャネット・イヴァノビッチ

バウンティハンター、ステファニー・プラム・シリーズの第23作。アイスクリームを積んだ冷凍車のなかで、チョコレートやナッツにまみれて凍りついた死体が発見される。犯人を探るべく、ステファニーはアイスクリーム工場に潜入するが、甘いものの誘惑はいかんともしがたく……

9. SMALL GREAT THINGS    Stay

Jodi Picoult ジョディ・ピコー

ベテラン看護師のルースは呼吸困難を起こした新生児を前に躊躇した。黒い指で絶対に子どもに触れるなと、その子の親に禁じられていたのだ。一瞬の迷いのせいで重い刑事責任を問われることになった彼女を救うため、白人弁護士は人種を武器にメディアを操る戦略を推してくるが……。ベストセラー作家ピコーが、現代の人種問題に切り込んでいく。

10. THE WRONG SIDE OF GOODBYE    Down

Michael Connelly マイクル・コナリー

ロス市警退職後、私立探偵業をはじめるかたわら、小さな町の警察署の予備警察官となったボッシュ。さっそく連続婦女暴行事件の捜査に参加する一方、余命わずかな富豪から、遠い昔に別れた恋人が産んだはずの自分の子供を捜してほしいと依頼される。ハリー・ボッシュ・シリーズ第21作。

【まとめ】

今週新たにランクインしたのは3位のジャック・ライアン・シリーズ最新作のみでした。グリーニーが引き継いでから毎年この時期に新作が出るようになり、邦訳は第9作“COMMAND AUTHORITY”が『米露開戦』(全4巻)として、第10作“FULL FORCE AND EFFECT”が『米朝開戦』(全4巻)として、それぞれ刊行されています。同著者によるグレイマン・シリーズは『暗殺者の反撃』(上下巻)が7月に出ていますが、本国では来年2月に次作“GUNMETAL GRAY”が発売される予定とのことです。また、6位の“THE UNDERGROUND RAILROAD”は、先月16日に全米図書賞の栄冠に輝き、8週ぶりのランキング返り咲きとなりました。ランク外では、『ホワイト・ティース』で数々の文学賞を獲得したゼイディー・スミスの“SWING TIME”が、4週前に14位から入って今週20位と健闘中。著者と同じく黒人の父と白人の母を持つ語り手により、ダンス教室で7歳のときに出会う2人の混血の少女の友情が四半世紀にわたって描かれる作品です。

飯干京子(いいぼし きょうこ)

大阪在住。訳書にグレッグ・ルッカ『回帰者』など。

大阪の次回読書会は2月17日を予定しています。課題書はギャビン・ライアル『深夜プラス1』。年明けに募集を開始しますので、どうぞふるってご参加ください。