アメリカのベストセラー・ランキング
6月21日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. THE VANISHING HALF New!
Brit Bennett ブリット・ベネット
1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。
- 2. WHERE THE CRAWDADS SING Down
Delia Owens ディーリア・オーエンズ
ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。
- 3. THE GUEST LIST New!
Lucy Foley ルーシー・フォーリー
アイルランド沖の孤島に建つ屋敷で開かれたセレブなカップルの結婚パーティの最中、招待客のひとりが殺された。新郎新婦とその家族や友人たち、それぞれに秘密の事情や恨みをかかえて島に集った人々の中で、犯人はいったい誰なのか。
- 4. CAMINO WINDS Stay
John Grisham ジョン・グリシャム
フロリダのカミノ島がハリケーンに襲われ、多くのひとが亡くなった。犠牲者のひとりにスリラー作家のネルソン・カーもいたが、頭部に殴られた跡があったことから、彼の友人で書店を営むブルース・ケーブルは、その死に疑問を持つ。やがて彼は、カーの著作の怪しげな登場人物たちは実在するのではと思いはじめる。
- 5. THE LIES THAT BIND New!
Emily Giffin エミリー・ギフィン
2001年、ニューヨークでジャーナリストとして働くセシリーはバーで出会ったグラントと付き合いはじめるが、9.11後に連絡がとれなくなってしまう。街中で見つけたグラントの尋ね人のポスターに書かれていた番号に電話したセシリーは、彼から聞いていた身の上が嘘だったことを知る。
- 6. FAIR WARNING Down
Michael Connelly マイクル・コナリー
ハリー・ボッシュ・シリーズのスピンオフで、ジャーナリストを主人公とするジャック・マカヴォイ・シリーズ第3作。マカヴォイが一夜だけの関係を持った女性が惨殺される。マカヴォイは調査に乗り出し、ほかにも不審な殺人事件が起こっていて、犯人が遺伝情報にもとづいて犠牲者を選び出し、殺害している可能性に気づく。
- 7. HIDEAWAY Down
Nora Roberts ノーラ・ロバーツ
ハリウッドの名家に生まれ、子役として活躍していたケイトは、9歳のときに誘拐されるが、機転を利かせて自力で脱出することに成功する。逃げこんだ家の家族は事情を知ってケイトを保護し、親身になって世話をしてくれるが、ケイトの試練はこれで終わったわけではなかった。
- 8. IF IT BLEEDS Down
Stephen King スティーヴン・キング
巨匠スティーヴン・キングによるホラー中編小説集。『ミスター・メルセデス』(白石朗訳、文春文庫)にはじまるビル・ホッジズ3部作および前作“THE OUTSIDER”の登場人物ホリー・ギブニーを主人公とした表題作‘IF IT BLEEDS’ほか、全4編を収録。
- 9. BIG SUMMER Down
Jennifer Weiner ジェニファー・ウェイナー
ぽっちゃり女子のインスタグラマーとして人気を博しはじめたダフネのもとへ、昔絶交した元親友のドルーが現れ、こともあろうに花嫁付添人になってくれと言う。ダフネは屈辱の思い出を噛み締めるものの、海辺の豪邸やハンサムな独身男性という誘い文句に心が揺れ動く。
- 10. WALK THE WIRE Down
David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ
“完全記憶探偵”エイモス・デッカー・シリーズ第6作。石油ブームに沸くノースダコタの町で起きた殺人事件。被害者は若い女性で、空地に棄てられていた遺体には解剖の痕がのこされていた。デッカーとジェイミソンは調査にあたるが、事件は地域一帯で起こりつつあった不穏な出来事のほんの始まりでしかなかった。
【まとめ】
3つの作品が新たにランクインしました。初登場1位に輝いたのは、2016年に“THE MOTHERS”でデビューした若き黒人女性作家の第2作。肌の色の薄い黒人双子姉妹のそれぞれの運命を描き、ジョージ・フロイド事件に端を発する「ブラック・ライブズ・マター」運動の渦中のアメリカで大きな注目を集めています。3位に入った“THE GUEST LIST”は、イギリス人作家ルーシー・フォーリーによる孤島を舞台にしたクローズドサークル・ミステリーで、『そして誰もいなくなった』のポップな現代版と評され、本作がアメリカに先駆け2月に発売されたイギリスでは、先日発表された英国推理作家協会(CWA)賞のゴールドダガー候補に選出されました。ベストテン外では、インド出身の作家メーガ・マジュムダールのデビュー作“A BURNING”が12位に入っています。
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満園真木(みつぞの まき)
東京在住の翻訳者。先日、最新訳書『アメリカン・プリズン――潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス』(シェーン・バウアー著、東京創元社)が刊行されました。ルイジアナ州の民営刑務所で刑務官として働いたジャーナリストによる衝撃の潜入ルポです。訳書はほかにアレックス・リーヴ『ハーフムーン街の殺人』(小学館文庫)、ヴィンセント・ディ・マイオ、ロン・フランセル『死体は嘘をつかない 全米トップ検死医が語る死と真実』(東京創元社)、バリー・ライガ〈さよなら、シリアルキラー〉シリーズ(創元推理文庫)など。
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